急激な高齢化に伴って変形性膝関節症で悩む患者さんの数は増えています。痛みを抑えるために歩くのをあきらめ、引きこもってしまう人も少なくないといいます。
膝の痛みの原因は?
膝の痛みの主な疾患としては関節リウマチ、痛風、破傷風、また骨折や靱帯損傷、半月板損傷といった外傷が原因となるものなどがありますが、一番多いのは変形性膝関節症です。
変形性膝関節症とは、アライメント(正しく配置された骨の位置)の異常や関節の変性、加齢、使い過ぎなどにより、関節の中の軟骨が徐々にすりへると共に骨が変形し、歩行時など、様々な日常生活動作において痛みを引き起こす疾患です。
症状が進行して変形が強くなると、O脚やX脚(日本人の場合は多くがO脚)といった形態的な特徴が強くなり、左右の脚長差や強い痛みなどで歩行が困難になるケースもあります。
手術が適応になるのはどんな状態ですか?
保存両方では効果が得られない、もしくは一時的に痛みが治まっても再発を繰り返してしまうという方は、手術を検討してみてもいいかもしれません。
以前は、診断上「まだ手術適応ではない」と思われていたケースでも、現在では、保存療法で改善しない方の多くは手術適応であるということが分かってきました。
もちろん、手術をする、しないは患者さん自身が決めることです。手術でしか改善が見込めない場合でも、ご本人が望まなければ無理におすすめすることはありません。
しかし、「自分の脚で痛みを感じずに歩きたい」「行動範囲を広げて生活を楽しみたい」という希望をお持ちの方には、人工関節をお勧めしています。
人工膝関節置換術とはどんな手術?
人工膝関節置換術とは、変形して傷んだ関節の表面を取り除き、金属やポリエチレンでできた人工関節と置き換えることで、痛みを取り除く手術です。
症状に応じて、膝関節全体を置き換える人工膝関節部分置換術か、傷んでいる片側だけを置き換える人工膝関節部分置換術が行われます。
全置換術は基本的に十字靱帯を切除しますが、部分置換術は十字靱帯を温存する上、傷口も約6センチと小さく、骨を削る量も少ないので、術後の痛みが少なく、より早期の回復が望めます。
手術時間は全置換術で約1時間半、部分置換術では1時間程度です。
人工膝関節の耐用年数はどれくらい?
部分置換術用の人工関節では、術後20年で90%以上の人が問題なく使っているというデータもあり、全置換術用の人工膝関節と同様に30年後、40年後のデータも期待されています。
また、近年は人工膝関節自体が更に進化し、軟骨の役目を果たすポリエチレンが摩耗しにくくなったことなども、耐用年数の長期化につながっているといえるでしょう。
耐用年数が長期化したことで手術の適応年齢の幅も広がっています。
基本的には、50代で膝関節の片側だけが悪いケースには、骨切り術をお勧めしているのですが、耐用年数の長期化が望める現在では、50代であっても軟骨の摩耗が激しい患者さんには、社会復帰が速く長期成績の良い人工膝関節部分置換術を適応してもよいと考えています。
三好先生から一言
手術に対する不安をお持ちなのは当然です。
手術の話が出たとたん「痛くなくなりました」とおっしゃる方が少なくありません。
よく話を聞いてみると、行きたいところにも行かず、家の中に引きこもることで痛みを抑えているというのです。しかし、動かないことによって、循環器系の疾患を引き起こすこと等も考えられますし、75歳時点での歩行能力がその後10年間の健康寿命を左右するという報告もあります。
健康な状態で長生きするためには、ご自身の脚で歩くということが非常に重要なのです。
退院された患者さんは「こんなに良くなるんだったら、もと早く手術すればよかった」とよく言われます。「旅行に行ってきた」「趣味のスポーツに復帰できた」「歩きぶりが良くなったと褒められた」といった喜びの声も多く寄せられています。
勇気をもって一歩踏み出してみることも一つの選択肢だと思います。信頼のおける膝の専門医にご相談ください。
整形外科 三好信也(みよし しんや)先生






