カテゴリー別アーカイブ: 認知症疾患医療センター

認知症介護 5つの心得と7つの原則

カテゴリー: 認知症疾患医療センター | 投稿日: | 投稿者:

みなさまお元気で新年をお迎えの事と存じます。

今回は、ハッピーな認知症介護のための7つの原則についてお話したいと思います。

はじめに、私がこの題材を選んだきっかけは、母がもの忘れ外来に通院しはじめたことです。コロナがきっかけで買い物に行かなくなり、洗濯も裏口に段があるため転倒の恐れがあり、させなくなったことが原因で、昨年のお正月に認知症が進んでしまいました。
そして、認知症のせいだと分かっていてもつい感情的になってしまう、そんな自分が情けなく疲れ果ててしまったのは決して不思議なことではありません。そんな認知症の方のご家族がその介護のストレスを少しでも軽くするためのヒントや工夫を挙げていきます。

認知症介護 5つの心得と7つの原則

5つの心得

1.頑張りすぎない
過度な頑張りの裏には元気なままのご家族であってほしいという愛情とそれが叶わないかもしれない悲しみが横たわっていることもあるかもしれません。その気持ちを見つめ、あるがままを受け入れ、頑張りすぎなくていいんだと、まずは患者ご本人よりも自分に優しくすることが第一です。

2.抱え込まない
認知症が進むにつれて、患者さんご本人もご家族も周囲とのつながりが薄れていく傾向もあります。初期のころから同じ悩みをもつ仲間や家族会などと繋がりを持ち、抱え込まない意識を持ち続けましょう。

3.弱音を吐く
弱音や愚痴を少しずつ、でも「きちんとこぼす」ことも実は認知所う介護にはとても大切なのです。

4.比べない
介護に正解はありません。介護者ご本人が、自分らしくいられる介護がもっとも素敵な介護だといえます。

5.終わりを考える
目の前の苦しみがいつ終わるのか、本当に終わるのか、分からない辛さは確かにありますが、「いつか終わるもの」と気を長く持ち、その終わりを迎える時に患者さんご本人もご家族も笑っていられるように今を過ごしましょう。

7つの原則

1.ゆったり、ゆっくりを心がける
介護者が会話も動作もゆったりゆっくりを心がけましょう。

2.五感をいかしてコミュニケーションする
声に感情や表情をつけ、質・大きさを工夫しましょう。顔をしっかり合わせ豊かな表情で対応しましょう。身振り手振りを交えたり、接触時は優しく触れましょう。

3.共感し感情を合わせる
表情や感情の共有を意識すると、安心感を与え、介護がスムーズになります。

4.認識や心の世界を理解する努力を
介護者が心の世界を尊重し、理解しようとする態度は信頼や安心を生み出します。

5.分かりやすく調整する
分かりやすい言葉で声をかけ、集中できる環境を整え、慣れ親しんだものは変えないようにしましょう。

6.かけがえのない、有能な存在であることを感じてもらう
役割や仕事などを通して自分も役に立つ存在であること、他人のために何か力になれる存在と感じることはとても大切です。

7.外部との繋がりをもつ
自宅でリラックスするのとは別に、よそ行きの顔も大切。外出し、よそ行きの顔を使うことは患者ご本人の社会性を保つ大切な機会です。

おわりに
患者ご本人だけでなく、介護者であるご家族ご自身が様々な支援をうけて、頑張りすぎない。無理をしない。それが認知症介護の一番の秘訣なのです。

看護師 Y.A

心理士が行う外来の検査について

カテゴリー: 認知症疾患医療センター | 投稿日: | 投稿者:

12月に入り、寒さが一段と増してきました。テレビや街のイルミネーションを見ていると、クリスマスやお正月の季節が来たなぁと感じます。
今回は私たち心理師が外来で行う検査について、少しお話をしようと思います。

認知症疾患医療センターでは、様々な検査を行っています。
私たち心理師も、日々感染対策を行いながら検査を行っています。緊急事態宣言下の当時は簡易版の検査をしていましたが、10月より通常通りに実施しています。検査の前には手指消毒のご協力をお願いしています。いつもご協力くださいまして、ありがとうございます。

さて、心理師の行う外来検査では、患者さんご本人とご家族様それぞれから情報収集を行っています。患者さんご本人には“質問の検査(覚えてもらったり、図を見て答えていただくものなどがあります)”を通して、ご家族様には普段の様子を伺うことで、どういうところにつまづきがありそうか、日々の困り感がどういうところに由来していそうかなどの把握に努めています。

点数や、各質問への対応から大まかな傾向(例:ヒントやきっかけがあれば思い出しやすいかな?など)を推測していきますが、検査を通してみることができるのは、その人のほんの一部分です。限られた時間の中でお話しするという特性もあり、その場では拾いきれない側面もあります。「何点だから○○」と、必ずしも一対一で結びつくとは限らないのです。
医師の診察では他の情報(血液検査や画像など)も合わせて、その人がどんな状態なのかを考えていきます。心理検査の結果も、判断のためのヒントの一つになっています。

病院という、普段行き慣れた場所とは違うこともあり、緊張しながら来院される方もいらっしゃるかと思います。特に心理師の検査は患者さんご自身に頑張って答えていただくことで、検査として成立しています。落ち着いた気持ちで受検できるよう、我々もお力になれたらと思っています。
簡単ではありますが、外来の検査についてふれてみました。認知症疾患医療センターや私たち心理師のことをもっと知っていただく機会になればと思っています。どうぞ、よろしくお願い致します。

認知症疾患センター 公認心理士 M

第18回 市民公開講座 もの忘れフォーラム YouTube動画で開催

11月20日(土)より、第18回 市民公開講座 もの忘れフォーラムの動画を公開いたしました。

市民公開講座 もの忘れフォーラムは、毎年市民の方を中心に家族会や支援者などが参加され、病院・福祉・行政が連携して企画し講演とシンポジウムの2部構成で開催しています。
今回は、新型コロナウイルス感染対策として動画で講演を2題公開することとなりました。

【第18回 市民公開講座 もの忘れフォーラム】
講演①「共生社会の実現のために ~本人を中心とした大牟田市のチャレンジ~」
講師:医療法人静光園白川学園 医療連携室 猿渡 進平 先生
講演②「認知症を予防するための生活習慣」
講師:大分大学 医学部 神経内科学講座准教授 木村 成志 先生

講演1では、猿渡先生が市民と共に、10年以上前から認知症をキーワードとして街づくりを進められている福岡県大牟田市の活動をお話しいただいております。
講演2では、認知症予防の分野で日本の第一線で活躍されている木村先生に、エビデンスに基づいた認知症予防のための生活習慣についてお話しいただいております。

どちらも生活に役立つ内容となっております。ぜひご視聴ください。

認知症疾患医療センター

 

第18回もの忘れフォーラムについて

カテゴリー: 認知症疾患医療センター | 投稿日: | 投稿者:

前回、令和2年3月7日(土)に開催を予定しておりました「第18回市民公開講座もの忘れフォーラム」は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、参加者の皆様の安全と感染拡大防止を考え、やむを得ず開催中止となりましたが、今年はWEB配信にて開催をさせていただくことになりました。

一度は開催中止となりましたが、再び、2人の先生を講師にお迎えし、認知症施策推進大網の両輪としても掲げられている「共生」と「予防」について学んでいきましょう。

開催方法としては、YouTubeにて令和3年11月20日(土)AM10時~令和3年12月31日(金)午後PM5時までの期間限定配信といたします。配信期間内であれば、何度でも視聴可能ですが、配信期間を過ぎてしまうと視聴はできませんのでご了承ください。

参加方法は
①インターネットにて『https://youtu.be/PxCo5RukXV8』へアクセス
②スマートフォン等でQRコードで読み取る
③倉敷平成病院のホームページから『http://www.heisei.or.jp/』のアクセス
となります。
事前の申込も不要となり、どなたでも視聴いただけます。

是非、多くの方々がご視聴され、学びを深めていただければと思います。

認知症疾患センター 精神保健福祉士 K

ある日の診察室から

カテゴリー: 認知症疾患医療センター | 投稿日: | 投稿者:

ちょっとなんだかいつもと様子が違う....

Oさん:(マジメな感じで)先生こんにちは

W:こんにちは! 今日はなんだか違うねえ...

Oさん:...

W:どうしたの

Oさん:....

ご家族:今日は朝から変なんですよ

W:あらまあ,どうしたんかなあ

Oさん:私は,もおええと思ってるんじゃ

W:もおええって,なんじゃろ?

Oさん:この世

W:この世?

Oさん:(マスクを外そうとしながら)先生

ご家族:もう,マスクとっちゃダメでしょう!

Oさん:...(マスクを外すのをやめる.表情は冴えない.)

W:そういえば,今日は眉毛も描いてないし,チラッと見えたけどいつもの口紅がないねえ.

Oさん:もおええんじゃ

W:あらまあ

ご家族:最近すぐカッとなって怒りっぽいんですよ

Oさん:叱られてばっかりじゃ.通いに行ってもなんもできん.

W:通いって,デイサービスのことかな?

Oさん:.....

W:あ〜〜,確かに大好きなカラオケできんかもねえ.

Oさん:.....

W:う〜〜ん,コロナ のせいかなあ.

Oさん:コロナ ってなんじゃ

W:あのテレビでもやってる流行り病のこと

Oさん:ああ,あれな

W:もうちょっとの辛抱かもなあ...

Oさん:私の人生,辛抱ばっかりじゃ.この年になって,また辛抱.

W:この年って,お幾つになったんじゃっけ.

Oさん:83じゃ

ご家族:お母さん,86歳よ!

Oさん:もおええが!

W:あらあら,ごめんよ.女性に年齢尋ねるなんて失礼じゃったねえ.

Oさん:先生が謝らんでええよ

W:おうちでもなんか楽しみがあるといいんだけどなあ

Oさん:なんもない

W:お家でも歌を歌ったり

Oさん:家なんかで歌えるもんか

W:演歌が好きなの?

Oさん:演歌も好きだよ

W:へー,そんじゃここで一曲歌ってよ〜

Oさん:また,先生が変なこと言う.ここは病院じゃが

W:マスクをしたままで小さめの声なら大丈夫だよ〜(しばらく手拍子の真似をする)

Oさん:(考え込んで)また〜〜,(ちょっとだけ笑顔で)ほんなら一節だけな

W:お〜〜〜(看護師さんと一緒に拍手をする)

Oさん:♫♫♩♫♩🎶(小さめの声で歌う)

W:お〜〜〜(看護師さんと一緒に拍手をする),上手じゃが!

Oさん:先生も上手言うなあ

W:歌うと,気分もいいし,悩みも吹っ飛ぶねえ

Oさん:今はもう,「歌を忘れたカナリア」じゃ

W:あっ,それももう一曲歌っとこおうか

Oさん:また,先生が〜〜

W:マイクがなくても,マスクをしとっても,小さな声でも,歌を口ずさむのはいいよ!家でもできるはずなんじゃけどなあ

Oさん:そうするかなあ...叱られたりせんかなあ

W:大丈夫,大丈夫(ご家族にも視線を向ける).実は僕は時々雨戸を閉めて大きな声で歌うよ!

Oさん:うちに雨戸はねえ

W:そんじゃやっぱり,小さめの声で口ずさもうよ

Oさん:そうするかな

W:「もおええんじゃっ」ていってたけど,歌があれば大丈夫だね

Oさん:でも,未練も何にもないよ.いつ逝ってもいいよ

W:それでもその時まで「歌を忘れぬ」カナリアでいきましょうよ

Oさん:そうじゃな.先生ありがとうな

W:こちらこそありがとうね.ついでにこちらさんにも(ご家族の方に目線を送りながら)「ありがとう」なんじゃけどなあ

Oさん:それがなかなか言えんのよ

W:「ありがとう」はこの世でしか言えないらしいよ

Oさん:そうじゃなあ

W:「ぷんぷんババア」より「ありがとババア」の方が100万倍いいよ〜

Oさん:先生,ババアはひどいなあ.でも,そうならんとな

W:そうしましょう

Oさん:長い時間,ごめんな.先生,また来るわ

W:是非是非

 

コロナで楽しみや生活の潤いが少なくなるのは,老若男女辛いものです.
認知症の発症や進行予防に重要な,運動・栄養・交流のうち,「交流」が減っています.
3密(密閉,密集,密接)は,避けなければなりませんが,なんとかいい意味での「密」である「親密」は保ちたいものですね.

脳神経内科部長・認知症疾患医療センター長 涌谷陽介

2021世界アルツハイマーデー

カテゴリー: 認知症疾患医療センター | 投稿日: | 投稿者:

9月は、世界アルツハイマー月間です。毎年9月21日は「世界アルツハイマーデー」です。
この日を中心として9月を「世界アルツハイマー月間」と定め、様々な取り組みが行われています。“認知機能が低下しても豊かに暮らせる社会”を目指し、今後も当院認知症疾患医療センターでは、一つ一つの課題に向き合い、積極的な活動を続けていこうと思います。

国際アルツハイマー病協会(ADI)が制定した、世界アルツハイマーデーにより、世界各国で認知症についての理解が得られ、認知症は暮らしの要素の一部として、認知症とともにかけがいのない暮らしが作られていく事を強く望みます。

9月21日―22日には、ブランチ岡山北長瀬 屋外グリーンステージ周辺で、照明がオレンジにライトアップされるようです。
コロナ禍で、今年は行事が縮小されていますが、ソーシャルディスタンス、感染予防を図り、遠くからライトアップを眺めることはできそうです。

世界アルツハイマーデー

RUN伴全国版 (runtomo-zenkoku.org)

 

※世界アルツハイマー月間2021サイトはこちら

倉敷平成病院 認知症疾患医療センター 医療秘書課 S.U

高齢者の運転

カテゴリー: 認知症疾患医療センター | 投稿日: | 投稿者:

「いつまでも安全に運転を楽しみたい」と多くの方が願っていますよね。
今回は高齢者の運転について少しお話したいと思います。

当院の認知症疾患医療センターを受診された方の中には、自分自身の運転に不安を感じていたりご家族の方が心配に思われている状況も多くあります。ニュースなどでもよく聞く高齢者の事故。加害者になってしまうことも心配。でも車がない不便な生活を考えると、免許返納もなかなか決心できない。そこで、ご自身がこれからも安全運転を続けていくための情報や、免許返納について、返納後の生活について紹介したいと思います。

高齢者ドライバーによる交通事故の代表例としてよく取り上げられるのがアクセルとブレーキの”踏み間違い”です。
しかし、事故の原因は踏み間違いだけではありません。高齢になることで認知・判断・操作のそれぞれの能力が低下していくことが様々な事故を引き起こすリスクにつながります。

高齢化による運動能力の変化
「思い込み」と「操作能力の低下」に注意!
高齢者ドライバーは実際に確認をせず、「思い込み」で運転する傾向が強い。
(例)・ 信号や標識を確認せず、見えているクルマの動きだけで運転
・ギアがパーキング(P)に入ったと勘違いし、ブレーキペダルから足を外してクルマが動き出す。
このような運転傾向になる原因としては、認知・判断・操作の能力が低下、また認知や判断ができたとしても、思ったように身体が動かないために操作の誤りや遅れが発生することなどが挙げられます。同じように車庫入れや駐車時に、「何度も切り返し」「脱輪」「ブレーキやアクセルの操作遅れ」などが起きるのも、”頭の中のイメージに身体がついてきていない”ことが理由です。
高齢ドライバーほど「運転に自信がある」と思う傾向が強いそうです。しかし、どんなに運転に自信があっても、加齢とともに運転技能は確実に変化します。それを踏まえ、「トレーニング」や「運転方法の改善」「安全装備の使用」などをおこなっていくことが大切です。

運転免許の返納
・有効期限内に自主的に免許を返納すれば「運転経歴証明書」を申請することができます。
「運転経歴証明書」は運転免許証の代わりに身分証明書の代わりになります。
・「おかやま愛カード」は免許を自主返納または失効した方で、希望される方に渡されます。
このカードで、路線バス運賃半額、タクシー割引など、県内の協賛店で色々なサービスを受けることができます。

この機会に運転について、免許の返納時期について、1度考えてみてください。

認知症疾患センター 外来看護師 F

「わくわくカフェ」と「家族教室の紹介」

カテゴリー: 認知症疾患医療センター | 投稿日: | 投稿者:

海や山の恋しい季節となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
新型コロナウイルスによる日常の様々な変化に戸惑い、我慢を重ね、この新しい生活様式も一年以上が経過しました。人との交流や外出する機会が減少し、気分転換の方法も変化を余儀なくされた方が多いのではないでしょうか。ワクチン接種が始まったことで、早期の収束を期待したいところですね。
当院の認知症疾患医療センターでは、毎年“わくわくカフェ”や“家族教室”を開催してきましたが、昨年はいずれも開催中止となりました。
“わくわくカフェ”とは、認知症の方の普段は見られない様子をみることができることや、ご家族同士が知り合える「きっかけ」の場の提供を目指して開催しています。内容は、医師による講演や参加者みなさんで楽しめるゲームタイム、料理や創作、脳トレ、通所リハビリスタッフによる体操など様々なコーナーを設け、楽しく過ごしていただけるように他職種で案を出し合って企画しています。
“家族教室”とは、当院の認知症疾患医療センターを受診している患者さんの家族を対象に、認知症の知識や対応を学ぶ機会を提供することを目的としています。内容は、各専門職(医師、看護師、栄養士、リハビリスタッフ、精神保健福祉士、公認心理師)からの講義や、講義の内容を踏まえて参加者の皆さんと一緒に考えるグループワークを行っています。また、教室には公認心理師や精神保健福祉士がいるため、気軽に相談していただけるのも特徴の一つです。
今年もまだ開催ができていない“わくわくカフェ”と“家族教室”ですが、このような状況下でも安心安全に開催できるよう、方法を検討している最中です。これら行事を通して、また皆さんにお目にかかれる日を心待ちにしています。

認知症疾患医療センター 公認心理師 S

 

はじめまして

カテゴリー: 認知症疾患医療センター | 投稿日: | 投稿者:

R3年3月より、認知症疾患医療センターの新しい一員として、異動して参りました、精神保健福祉士(PSW)のKと申します。
簡単ではありますが、自己紹介をさせていただきます。

このたび異動してきたとお伝えしましたが、元々は同グループである介護保険施設にて、社会福祉士として相談員を務めておりました。
介護保険サービスの一つとして、ご利用の方に安心し、信頼してご利用いただけるように、ご家族様やケアマネージャー、施設職員の方々と、密に連携を図りサービス提供をさせていただきました。

当センターの精神保健福祉士の役割の一つとして、もの忘れ外来の初診の患者さんに対して、ご連絡にて事前問診をさせていただいております。診察当日、検査から先生の診察終了まで、約3時間のお時間を要します。その為、診察がスムーズに進行するように、事前に困っていることやご本人様の最近の様子などお伺いをさせていただいております。

実際に事前問診をさせていただく中で、様々な症状でお困りなケースを伺います。
出来る限り事細かく、患者さんについて伺うことで、その方の人間像を把握し、今抱えている問題に寄り添い対応していきたいと私自身思っております。
お話の聞き取り方や伺い方に不慣れで至らぬこともあるかと思いますが、お答えいただければ幸いです。

今回異動し、改めて入職してきた当時の初々しい気持ちを思い出しました。
その気持ちを忘れず、身を引き締め今後とも日々の業務に務めていきたいと思います。

ほんの些細なお困り事でも、お気軽に認知症疾患センターまでご連絡いただければと思います。
よろしくお願いいたします。

認知症疾患センター 精神保健福祉士 K

ある日の診察室から

カテゴリー: 認知症疾患医療センター | 投稿日: | 投稿者:

Cさん:(診察室に入ると,Wの顔を見て立ち止まり丁寧にお辞儀)
W:(その姿を見て,キーボードにおいた手を離して,正面をむいてお辞儀)
Cさん:(杖をついてゆっくり慎重に歩いて)お世話になります.この丸い椅子に座らせていただいてよろしいでしょうか.
W:はいどうぞ.ご丁寧にありがとうございます.

Cさん:Cと申します.
W:Cさん,この病院は初めていらっしゃいましたか?
Cさん:はい,そのように存じ上げます.

W:(名札を見せながら)それでは私も自己紹介です.
Cさん:Wですか.珍しいお名前ですね.
W:悪い事はできません.
Cさん:いえいえ,先生はそのような方ではありません.ボケたとはいえそれぐらいはわかります.
W:それわそれは.お眼鏡にかなうよう頑張ります.ところで今日はどうしてこの病院にいらっしゃったんですか?
Cさん:実はこの二人から,ボケたボケたと言われます.
W:この二人と言いますと?
Cさん:妻と娘です.

W:ボケにも色々ありますが,どんなボケですか?
Cさん:恐らくボケたんだと思います.しょっちゅう忘れます.

W:なるほど.それはご心配です.ちなみにそれは小ボケですか,大ボケですか?
Cさん:私は小ボケだと思っておりますが,この二人はどうか...
Cさん妻:その間だと思いますよ.

W:それはそれは.だとしたらそれはいいボケですか,わるいボケですか?
Cさん:そう言われても私にはわかりません.

W:例えばニコニコボケですか,プンプンボケですか?
Cさん:どうですかなあ.
Cさん妻:心配ボケです(と合いの手).
W:あらあらそうですか
Cさん妻:自分で「ボケたボケた」と言って何もせずジーーっとしているんです.それに,急にぼーっとすることもあります.
Cさん:そんな事はございませんよ(眉間にシワが寄る)

W:それはそうと,お年にしては目も耳もいいですね.
Cさん:いえいえ,目は両方白内障の手術をしましたし,耳も遠くなってきました.テレビの音が大きいと叱られます.
W:でも,私の声は聞こえますよね.
Cさん:先生のお声は何とか耳を澄ませて聞いております.この年になるといけません.

W:この年と言われますと,お幾つでしたっけ.
Cさん:82歳です.

W:もう数ヶ月で83歳ですね.持病もなしですか?
Cさん:血圧のことと腰が悪くて歩きがいけません.
W:わかりました.それでは,簡単に診察させていただきますね.

W:体の方も,神経の方も,腰の悪さから来る症状以外,はっきりした異常はありませんね.血液検査も.びっくりするぐらいいいですねえ.栄養のバランスもバッチリです.奥様に感謝ですねえ.ごちそうさまは言われますか?
Cさん:それぐらいは言います.

W:ついでに「ありがとう」もつけますか?
Cさん妻:それはほとんどないです(と合いの手)

W:なるほど,ちなみに記憶の検査は一応合格点でした.何でもかんでも
忘れるわけではなさそうですよ.頭のMRIでは,何といわゆる「隠れ脳出血」が数カ所見つかりました.幸い手足の動きや感覚には影響のないところでしたが,この大きさだとふらつきがあったり視野が狭くなった感じがしたかもしれません.何か急な変化に気づいた事はありませんでしたか.
Cさん:ありません.
Cさん妻:ありませんよ.でも,ぼーっとするのは最近増えました.

W:その時はどんな感じですか?
Cさん妻:下を向いて何か考え込むような感じになって,左手をゴソゴソ動かすこともあります.数十秒くらいですが.
Cさん:自分ではわからんのです.
W:そうですか.
Cさん妻:その話をすると,わからんわからんばっかり言うんです.

W:娘さんはその様子を見たことがありますか?
Cさん娘:別居なので見た事はありません.母からは何度か電話がかかってきました.先生,これって認知症じゃなくて,「てんかん」じゃないんですか?
Cさん:いえいえ娘はそう言いますが,決してそんな大それた病気ではないんです.
W:ウ〜〜ム....
Cさん娘:私がそれを言うと最後には喧嘩になるんです.

W:Cさん「老いたら」,何と言いますか?
Cさん:「子に従え」ですなあ.
W:最近では「老いたら子と仲良く」って言うらしいですよ!
Cさん:なるほどなあ.

W:Cさん,今回の事は娘さんにしっかり感謝しないといけないですねえ.今日お聞きしたお話や検査所見からは,「てんかん」の一種である可能性が高いと思います.
Cさん:「てんかん」は子どもの病気で治らないと思っていました.

W:ところが歳を取るとまた増えてくるんです.Cさんのように,「隠れ脳出血」がある人にまれに起こることがあります.
Cさん:血圧には気をつけていたんですが.

W:気をつけてなかったらもっと大きな脳出血になっていたと思いますよ.なのでそれは素晴らしいことです.
Cさん:治らないんですよね.

W:「隠れ脳出血」は,残念ながらもう傷痕なので治ると言う事はありません.でも,お薬がうまく合えば「てんかん」の発作が無くなったりかなり頻度が減ったりします.
Cさん:それを聞いて少し安心しました.これからどうしたらいいですか?
W:早めに詳細な脳波検査をして,その後お薬を始めていきましょう.
Cさん:わかりました.

W:Cさん「老いたら」?
Cさん:「子と仲良く」ですね.

W:「ごちそうさま」のあとは?
Cさん:たまにはありがとうも言います(笑顔)

W:その2つを覚えているならボケてるとは言えないし,たとえボケても大丈夫です!奥さんもあまりご本人に言いすぎると「思いやり」が「重い槍」(ジェスチャー付き)になりますよ(注:Wが好きな表現).
Cさん妻:わかりました

W:それではCさん今日はお疲れ様でした.大変でしたね.今日はお昼ご飯をお二人にご馳走してあげてくださいね.
Cさん:あいにく慌てて出てきたので持ち合わせがあまりありません.

W:それではお気持ちだけでも! また,お会いしましょう.
Cさん:ありがとうございました.

W:それにしても娘さんお詳しいですねえ.
Cさん娘:あ,私,看護師をしています.

W:あっ,え〜〜と,ありゃ事前問診にも書いてありますね.私の方がボケてますね.
Cさん娘:先生のはいいボケだと思いますよ(笑)

W:ニコニコボケで行きたいと思います.
Cさん娘:ありがとうございました.

Cさんは,奥様の観察と娘さんの知識のおかげであっという間に正しい診断に至りました.
脳波では,やはりてんかんと診断できる所見がありました.幸いお薬の効果もあり,ぼんやり発作もほとんどなくなりました.

 

認知症疾患医療センター 医師 W