カテゴリー別アーカイブ: 認知症疾患医療センター

16)支援をする人の負担について

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前回は、より良いかかわり(生活習慣・体調管理)についてという内容でお話ししました。
今回は、支援をする人の負担についてお話したいと思います。介護にまつわる負担には、身体・心理・経済、社会・時間の要因がかかわっています。さらに、要因の重なりが多いほど、負担は倍増していきます。

認知症を有する方への介護について、その大変さがどのようなものかといった報告があります。

1.同じことを何度もきかれる大変さ
わすれ易い・憶えられないという認知症の症状を理解していても、さんざん繰り返されると、特にこころや時間の余裕が持てないときほど、よくない事だとわかってはいてもつい、返す言葉や表情がだんだんとトゲトゲしいものに変わっていくのは無理もないことかもしれません。
2.目を離せない大変さ
道に迷ってしまう方や、ふと家を出て行かれる方など、万が一の危険性がある方の介護は、夜寝ている時でも、常に気を張り続けなければならなくなるケースが多いようです。そのような環境におかれると精神的・肉体的な疲労が蓄積し易くなることは想像に難しくありません。
3.介護者のペースでできない大変さ
介護者の方が「ちょっと待って!」と感じること、またはご本人に伝えることは非常に多いのではないでしょうか。しかしながら、この「ちょっと」という時間の間隔は、認知症では障害されやすい部分になります。周囲の人から見ると、あたかも「待てない」ように見え、介護を行う場合では自分のペースで出来ない
=振り回されるような状況につながりやすくなります。
4.ありがとうと言ってくれない大変さ
ご本人からありがとうと言ってもらえないことというよりは、介護者の周囲の人(例えば家族や親類など)から自分の大変さを理解してもらえない、感謝されない、介護してあたりまえ、という状況がより大変さを感じるかもしれません。介護者が孤立感をつのらせ、負担をひとりで背負ってしまうという悪循環につながりかねません。
次は、認知症を有する方のご家族の多くが経験する心理的ステップをご紹介します。ステップは4段階ありますが、第1から第4ステップまでの間を行きつ戻りつしながら、だんだんと認知症を有するご本人を受容していくと言われています。この各ステップの行きつ戻りつのしかたは、ご本人の症状や、ご本人・ご家族の性格、年齢、身体状況、これまで培ってきた家族関係、地域・社会的状況、経済的状況、医療・福祉スタッフとの信頼関係などの影響を受けると言われています。

各ステップでの心理的な負担感は周囲からの有効な支援を受けることで軽減されます。次の図ではその有効な支援にはどのようなものがあるのかについて説明しています。

この上の図で極めて重要なことは、支援する人が一人ですべてを背負わないということです。介護を受ける側⇔介護をする側という2者関係のつながりは非常に強いために、その関係性があたかも殻に閉じこもるような孤立した状態におちいるリスクが非常に高いと言えます。そのような状態ではお互いがお互いのストレスを増幅しあうような悪循環が起こらないとも限りません。そのような負担感をできるだけ軽減するには、みんなで支えるという視点が必要です。
 この上の図のような関係をどのようにして築くかということですが、多くの方は言うは易し、行うは難しといった印象を抱かれるのではないでしょうか。この図のような関係を築きやすくするために、極めて重要な相談・支援機関があります。それは全国の各地区に設置されている「高齢者支援センター」と呼ばれる機関です。負担の強弱にかかわらず、このような相談窓口を確保しておくことは、現在や将来の負担感・ストレスのコントロールを上手く行うために必要となってきます。「私だけで支えないようにする」「みんなで支えてそれぞれのメリットを上手に生かす」ことが、支える人だけでなく、認知症を有するご本人にとっても笑顔で生きるためのキーポイントの一つになります。
「もの忘れ」は早期発見・早期治療が重要であり、診断・治療のためには、地域のかかりつけ医師との情報共有が非常に重要です。ご家族や身近な方、またはご自身のもの忘れが気になるという方は、まずはかかりつけ医師にご相談下さい。
認知症疾患医療センター相談室 直通電話番号:086-427-3535

認知症疾患医療センター CP阿部

15)より良いかかわり(生活習慣・体調管理)について

カテゴリー: 認知症疾患医療センター | 投稿日: | 投稿者:

前回は、よりよいかかわり(心理・コミュニケーション)編という視点でお話ししました。
今回は、よりよいかかわり(生活習慣・体調管理)とはという視点でお話ししたいと思います。

上の図は認知症に合併する身体症状です。一見すると、認知症とはあまり関係のなさそうな症状が多いように思えます。しかし実は、上の症状の多くは普段の健康・体調管理、生活習慣に大きくかかわっています。このような、自身の健康・体調管理のことをセルフケアといいます。セルフケアと認知症についての話題に入るまえに、ここでもういちど認知症(アルツハイマー型認知症)の記憶障害の特徴についておさらいしましょう。

認知症(特にアルツハイマー型認知症)では特に上の図の出来事の記憶(エピソード記憶)が失われやすくなっています。この出来事の記憶が失われやすくなるという事を、より具体的に日常生活のセルフケアという側面から考えてみると下記の図の例のようになります。

私たちがセルフケアをする際には、最近の出来事をふまえる必要があります。たとえば、「今すごく暑くて食欲もわかないから、ここ最近そうめんばかり食べているけど、このままでは栄養がかたよるので、今夜は焼き肉とサラダをたべよう!」とか「最近便秘(下痢)が続いているなぁ、病院いかなきゃ」「朝ご飯のあと薬を飲み忘れた!まだ9時だから朝の薬飲もう」など、過去の出来事から判断して現在のセルフケアを調節しています。認知症では出来事の記憶が失われやすくなるので、セルフケアにおいての判断材料が通常よりも乏しくなりやすいと言えます。セルフケアに支障をきたした状態(望ましくない生活習慣)が続くと、最初の図で説明した合併症状を引き起こしやすくなることは想像に難しくないでしょう。
そして、とても重要なことは、脳も体の一部であるということです。認知症のあるなしにかかわらず、好ましくない生活習慣や、高血圧・高脂血症・糖尿病などの生活習慣病のコントロールが不良な状態は、脳にも悪影響を及ぼします。下の図では認知症の危険因子および増悪因子の一部を紹介しています。脳を守るには、適切な治療(医療)と予防的活動(生活習慣の改善)が必要です。

自分でも気をつけて取り組むことができる、もしくは誰かのサポートがあればできるような、脳を守る活動をさらにまとめたものが下の図です。


脳を守る3つの要素は「栄養」「運動」「交流」です。まず、栄養に関しては、バランスの良い、規則正しい食生活を日々の生活に取り入れることです。これに関しては、医師や栄養士に相談なさるか、持病がなければ書籍やインターネットを参考にしてみるのも良いでしょう。「運動」に関して、たとえば有酸素運動を日課とすることなどは、脳と体の健康増進に非常に良い影響を及ぼします。最後は人、社会との交流です。「家に閉じこもり、いつもの座席(ベッド)で座って(横になって)テレビを一日中」という生活は、精神的にも肉体的にも良くなさそうなのは想像に難しくないでしょう。地域の公民館での催しや、地域のグランドゴルフなどの集まりを通じて、人と交流することは生活のハリにつながります。
いずれにしても、これらの「栄養」「運動」「交流」に取り組む際にいちばん重要なことは「習慣として楽しんで行う」ということです。楽しくないことは習慣化しませんし、やればやるほどストレスをため込んでいくのは精神衛生上良くありません。楽しくない活動の、どの部分をどういうふうに変えれば楽しくできそうか?と考えるのが建設的でしょう。
今日の主題である、より良いかかわり(生活習慣・体調管理)に話を戻しましょう。認知症を有する方とのより良いかかわり方としては、この「栄養」「運動」「交流」の活動を一緒に楽しむということです。一緒に楽しむことが時間的・物理的に難しければ、福祉サービス(訪問サービス、デイケアやデイサービスなど)をうまく利用してみるのも良い方法です。福祉サービスや介護保険(その他高齢者にまつわるいろいろな相談)についての相談窓口は各地区にある高齢者支援センターがになっていますので、なにか良い方法がないか問い合わせてみるのも良い方法でしょう。
次回は支援する人のストレスについてお話したいと思います。

「もの忘れ」は早期発見・早期治療が重要であり、診断・治療のためには、地域のかかりつけ医師との情報共有が非常に重要です。ご家族や身近な方、またはご自身のもの忘れが気になるという方は、まずはかかりつけ医師にご相談下さい。
認知症疾患医療センター相談室 直通電話番号:086-427-3535

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14)より良いかかわり(心理・コミュニケーション編)とは

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前回は個人ごとの不自由さに沿った援助とはという視点でお話ししました。今回は、より一般的に、よりよいかかわり方とは?という視点でお話ししたいと思います。

よりよいかかわりについての具体的な話に入る前に、まずは下の図をご覧下さい。

これは、国際アルツハイマー病協会(ADI)が、認知症を患っても幸せに生きるために必要な権利に関して述べたものです。さらに、これを実現させるのは、家族、介護者、友人、医療・福祉専門職、地域社会、行政、つまり「認知症と共に生きる私」自身と、「認知症とともに生きる私」を取り巻くすべての人々である、としています。
ここで重要なのは「認知症とともに生きる私」が主役であるということです。
これは他の疾患であればごく当たり前のことのようにも思えますが、認知症という疾患のケアにおいては「認知症とともに生きる私」の主体性、権利擁護という観点に議論が及んだのは20世紀末になってからのことでした。
イギリスの心理学者であるトム・キットウッドは、それまでの認知症ケアの視点に大きな変革をもたらしました。彼が提唱した認知症ケアの視点は、パーソンセンタード・ケアと呼ばれ、文字通り「認知症とともに生きる私」が主体となるケアを意味しています。ここではその一部を説明する事とします(詳細は彼の著書を是非ご覧下さい)。

認知症の人が求める心理的な欲求にはいくつかの要素があり、これらを十分に発揮した状態であれば、認知症の人が主体的に楽しく幸せに生きることができる、としています。これらの要素の単語を反対語(例:心地よさ・安定性→不快さ・不安定)にして具体的に想像してみると、上の図をより理解しやすくなると思います。
話しがだんだんと難しくなってきたので、より具体的なよいかかわり方についてお話ししましょう。下の図をご覧下さい。

認知症のあるなしにかかわらず、他者からこのように接してもらえると、とてもうれしい気分になったり、安心した気分になれますよね。上の図を下の図でより具体的に説明します。

この中にはすぐに実践できそうなこともあれば、実践する人の練習や心理的なゆとりが必要とされるものもあります。すぐに100%達成を目指そうとすると大変ですので、ゆっくりだんだんと70パーセント程度を目指すつもりで臨んでみるのも良いでしょう。
下の図は脳の機能(記憶)の特徴から、より良いかかわりについて説明したものです。

裏を返すと・・・。

今回は、よりよいかかわり方(心理・コミュニケーション編)とは?というお話しをしました。それと同じくらい重要なよりよいかかわり方として、体調管理という視点からもお話を次回はしたいと思います。

「もの忘れ」は早期発見・早期治療が重要であり、診断・治療のためには、地域のかかりつけ医師との情報共有が非常に重要です。ご家族や身近な方、またはご自身のもの忘れが気になるという方は、まずはかかりつけ医師にご相談下さい。

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13)認知症の症状を理解する②

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前回は記憶以外の面から、認知症を有する人が、どのような不自由さを感じやすいか、ということについてお話しをしました。
今回はこの不自由さに対して、周囲の人がどのように対応したらよいか、ということについてお話したいと思います。
まず重要な点をおさらいしましょう。以前ブログで下の図を紹介しました。


認知症において、それぞれの認知機能(見る、聞く、話す、わかる、判断する、按配する)の障害のされかたのパターンや強弱は、人それぞれによって異なります。つまり、人によって不自由さが異なるということは、その不自由さを補う援助の方法もそれぞれ異なります(さらに、これまでの生活歴や人格も関係してきます)。「書籍やインターネットなどで紹介されている対処法を試してみたが、どうもうまくいかなかった」という声をよく聞きますが(もちろんうまくいくケースもあります)やはり個人差という大きな変数が関わっているのです。

不自由さを補うための重要な視点として・・・
どのようなことが、どのような状況で出来にくくなっているのか。同様に、どのようなことが、どのような状況であればできるのか。
周りの人が、(本人には)出来る・出来ないととらえていることが本当に正しく本人の不自由さをとらえているとは限りません。さらに、認知症は進行性疾患ですので、数年前と現在のご本人の不自由さが同じであるとも限りません。今、ここ、でのご本人の不自由さを観察して、その情報を元に、ご本人の不自由さを補うなにか良い方法がないかどうかを医師や看護師、ケアマネージャー、または各地域の高齢者支援センターや県、市の相談機関(電話相談など)にどんどん相談してみることはとても重要なことです。
すぐには解決へのヒントは得られないかもしれません。しかし、「一緒になって粘り強く支えてくれる、考えてくれるという人がたくさんいる」という実感は、ご本人を支え続ける人(援助者)やご本人にとって、安心感につながるものではないでしょうか。
個人ごとの不自由さに沿った援助法という視点とはまた別に、一般性を含む、よりよいかかわり方という視点からのお話も、次回に向けて少ししましょう。
認知症の人と接するときのこころがまえとして・・・。

次回は、よりよいかかわりとは、という視点でより詳しくお話をしたいと思います。

「もの忘れ」は早期発見・早期治療が重要であり、診断・治療のためには、地域のかかりつけ医師との情報共有が非常に重要です。ご家族や身近な方、またはご自身のもの忘れが気になるという方は、まずはかかりつけ医師にご相談下さい。
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12)認知症の症状を理解する①

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前回は、エピソード(出来事の記憶)記憶障害と、それに伴う心理状態の変化が、周囲の人とのかかわりにどのように影響を与えるか、ということについてお話しました。
今回は、記憶以外の面から、認知症を有する人がどのような不自由さを感じやすいか、ということについてお話したいと思います。
まず、時間や場所の認識のことを専門用語で「見当識」といいます。認知症では見当識に支障が生じやすいとされています。
  上の図は見当識に支障が生じた結果、どのような不自由さを感じる事が多いかを示しています。
次に、意図したことを実際の行動に按配して実行するといった機能を専門用語で「実行機能」といいます。では実行機能に支障が生じた場合、どのような不自由さを感じる事が多いかというと、

次に、言葉を話したり、理解したりする機能のことを専門用語で「言語機能」といいます。これらの機能が障害された状態を専門用語で失語といいます。「それ」が何か、どういったものなのかということを認識することが障害された状態を、専門用語で失認といいます。では、こういった機能が障害された場合に、どのような不自由さを感じやすいかというと、

上記の障害は、他者とのコミュニケ―ションに不自由さを生じさせます。

認知症において、これまで説明したさまざまな機能の障害のされかたの強弱は人それぞれによって異なります。つまり、人によって不自由さが異なるということは、その不自由さを補う周囲の人の援助の方法も人それぞれ異なってきます。
今回は、記憶以外の面から、認知症を有する人がどのような不自由さを感じやすいか、ということについてお話ししました。次回は、この不自由さに対して、周囲の人がどのように対応したらよいか、ということについてお話したいと思います。

「もの忘れ」は早期発見・早期治療が重要であり、診断・治療のためには地域のかかりつけの医師との情報共有が非常に重要です。ご家族や身近な方、またはご自身のもの忘れが気になるという方は、まずはかかりつけの医師にご相談下さい。
認知症疾患医療センター相談室 直通電話番号:086-427-3535

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11)認知症とは?⑥

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前回は、アルツハイマー型認知症の人の、エピソード記憶障害(出来事の記憶)と心理状態の結びつきについてお話しました。
今回は、エピソード記憶障害と、それに伴う心理状態の変化が、周囲の人とのかかわりにどのように影響を与えるか、ということについてお話したいと思います。

この図と下の図は、ご本人に身近な人が体験することが多い「何度も何度もしつこく同じことを繰り返し尋ねる、言う、する」現象に対して、身近にいる人の対応次第でご本人がどのように反応することが多いかを示しています。身近にいる人から見れば、何度も同じことを繰り返しているのですが、エピソード記憶障害をもつ、ご本人の実感としては毎回が「今、初めて言った(した)こと」と認識されやすくなります。エピソード記憶は忘却されやすいのですが、相手の感情を読み取る、雰囲気を感じ取ることには大きな支障がないため、身近な人の「さっきも言った(した)でしょ!!」といった言動は、ご本人にとっては、いわれなく突然に相手から負の感情をぶつけられたといった、唐突で思いがけない出来事として認識されます。その結果、不安や混乱(本人は「怒られてばっかり」と感じる)をきたし、怒りの感情を生じる(身近な人から見て「(本人が)怒りっぽくなった」と感じる)ことにつながりやすくなります。

上の図では、エピソード記憶障害がきっかけで、ご本人と身近な人との関係性が、お互いが矛を突き合わせているかのように(結果的に)なりやすい、ということを示しています。こういったネガティブな関係性になることを避けるためには、記憶障害を含めた、認知症の症状の特徴を理解する事がまずはとても大切だと言われています。これまでのブログで数回に分けて認知症とは?という話題で、主にアルツハイマー型認知症における記憶障害の特徴についてお話してきました。次回は認知症の症状を理解するには、というお話をしたいと思います。
「もの忘れ」は早期発見・早期治療が重要であり、診断・治療のためには地域のかかりつけの医師との情報共有が非常に重要です。ご家族や身近な方、またはご自身のもの忘れが気になるという方は、まずはかかりつけの医師にご相談下さい。

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10)認知症とは?⑤

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前回は、アルツハイマー型認知症の人の記憶の成り立ちの特徴と、一般的な記憶の成り立ちの特徴の違いについてお話ししました
今回は、アルツハイマー型認知症の人の記憶の成り立ちの特徴と感情の結びつきによって、どのような心理状態を引き起こしやすいか、ということについてお話したいと思います。まずは前回の認知症の人の記憶の成り立ちについておさらいをしましょう。

アルツハイマー型認知症の人では、最近の出来事の記憶(エピソード記憶)が忘却されやすくなります。それによって、現在の出来事を理解・判断・記憶するために、かなり以前の出来事の記憶や個人の常識・知恵・知識のみによって関連づけをせざるを得なくなります。そうなると、現在の出来事の記憶は通常よりも、周囲の人から見れば勘違いや取り違いと判断されるようなアンバランスを生じるようになります。さらに、本人にとってみれば、現在の出来事は突然に起こった思いがけない出来事として体験されやすくなります。急に起こった思いがけない出来事には、人は誰でもギョッとなったり冷汗をかいたり、迷ったり、といったこころの動きを生じるものではないでしょうか。

よく、認知症の人には自覚が無い(病覚が無い)、という言葉を耳にします。はたして本当にそうなのでしょうか。現状の思いがけない出来事に直面し、「何かおかしい。(周りの人?環境?まさか自分自身?に今までとは違う変化が起きている)こんなはずじゃない・・」といった感覚を体験(自覚)した際のこころの動きとして、我々としても十分に理解でき得るものではないでしょうか。事実、周囲の人が「(本人が)怒りっぽくなった」と感じているケースも多くあります。
今回は、アルツハイマー型認知症の人の、エピソード記憶障害と心理状態の結びつきについてお話しました。次回は、エピソード記憶障害とそれに伴う心理状態の変化が、周囲の人とのかかわりにどのように影響を与えるか、ということについてお話したいと思います。

もの忘れ」は早期発見・早期治療が重要であり、診断・治療のためには地域のかかりつけの医師との情報共有が非常に重要です。ご家族や身近な方、またはご自身のもの忘れが気になるという方は、まずはかかりつけの医師にご相談下さい。

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執筆者 CP阿部

9)認知症とは?④

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前回、アルツハイマー型認知症では、できごとや体験自体の記憶が忘却されやすくなるという (エピソード記憶障害)お話をしました。
今回は、こういったアルツハイマー型認知症で特徴的な記憶の障害が、日常場面でどのように影響するのかということについてお話ししたいと思います。
まず、一般的な記憶の性質について説明します。

もともと、人の記憶というのは上記の特徴があり、いろいろなことに影響され、内容がたやすく変化していきます。これは、ヒトがあらゆる環境変化に適応して、生存する確率を上げるための進化の一貫である、と考える学者もいます。いずれにしても、「個人の記憶」と「事実」は完全なイコールではありません。さて、この記憶内容の個人差を説明するために、一般的な記憶の成り立ちについてみてみましょう。

一般的に記憶には、かなり以前の記憶(遠隔記憶)、最近の記憶(近似記憶)、現在の記憶(即時記憶)、常識・知識・知恵(結晶性知能)に分類する事ができます。これらはお互いに密接に関連し、現在の出来事の認識・把握・記憶につながっていきます。ですので、個人の記憶は、内容の個人差と、ある程度、個人内の時間的な一貫性を持って成り立っています。つまり「昔は○○で、さっきは□□だった。一般的には◎◎であり、今△△な状況だ」というようになります。
それでは出来事・体験の記憶(エピソード記憶)に支障をきたす認知症(特にアルツハイマー型認知症)では、記憶の成り立ちがどのように変化するのか見てみましょう。

前回のブログでお話しした通り、アルツハイマー型認知症では、ついさっきの記憶(したこと・あったこと)が薄れやすくなります。「さっき□□だった」ので「今、△△である」という繋がりが保てなくなるのです。ですので、現在の出来事の記憶には、かなり以前の出来事の記憶や個人の常識・知恵・知識のみによって関連づけざるを得なくなります。そうなると、現在の出来事の記憶は通常よりも、周囲の人から見れば勘違いや取り違いと判断されかねないようなアンバランスを生じるようになります。さらに、現在の出来事の記憶は時間の経過とともに、最近の出来事の記憶になっていきます。最近の出来事の記憶は、認知症では最も忘却されやすい記憶であり、よく見られる認知症の人に特徴的な言動として
・繰り返し同じことを尋ねる・話す(毎回初めて尋ねる・話すかのように)
・何度も探したり、物を出したり入れたり(毎回初めてした事のように)
・「そんなこと聞いてない!してない!」(何度も伝えたのに、したのに)
まるで初めての事かのように(←周囲の人から見れば)認知症の有る本人が言ったこと、聞いたこと、したことは、本人からすれば、まぎれもなく初めての事と認識されやすく、さらに、認知症の人にとって、現在の出来事は、突発的に起こった思いもかけない出来事と認識されることが多くなります。
次回は認知症の人が現在の出来事を認識する際に、どのような心理状態になりやすく、どのような反応をとりやすいか、についてお話したいと思います。

「もの忘れ」は早期発見・早期治療が重要であり、診断・治療のためには地域のかかりつけの医師との情報共有が非常に重要です。ご家族や身近な方、またはご自身のもの忘れが気になるという方は、まずはかかりつけの医師にご相談下さい。
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8)認知症とは?③

前回は、脳の機能を通して、認知症とは一体どのような疾患なのか?といった話題について述べました。
今回は、認知症のなかでも特に、アルツハイマー型認知症の特徴についてお話したいと思います。アルツハイマー型認知症でみられる代表的な症状の一つに記憶障害があります。この記憶障害では、直近の体験や出来事自体の忘却(エピソード記憶の障害)がみられます。

左側黄色枠内ではアルツハイマー型認知症でよく見られる症状を示しています。このような言動には記憶障害が関わっています。わかりやすくするために同じ内容の事柄で、表現を変えたものが右緑枠内です。置き忘れ→置いたことを忘れる しまい忘れ→しまったことを忘れる 同じことを何度も尋ねる→尋ねたことを忘れる など、「こと」という言葉を付け加えると、アルツハイマー型認知症で見られる記憶障害(エピソード記憶障害)の特徴がわかりやすくなります。つまり、出来事や体験自体の記憶が忘却されやすくなるということなのです。
次に示す図は、通常私たちも経験するもの忘れと、アルツハイマー型認知症で見られるもの忘れを比較したものです。
通常のもの忘れでは、記憶が虫食い穴のように落ち、何らかの手がかりがあれば空いた穴をある程度正確に埋め戻すことができます。しかしアルツハイマー型認知症の記憶障害では、ところどころですっぽりと抜け落ちたように記憶が失われます。この記憶の抜け落ちは、手がかりを使って正確に埋め戻すことが出来ません。さらに、時間的に現在に近い過去(数秒~数年前)の記憶ほど抜け落ちやすく、遠い過去(数十年前)の記憶はそれと比較すると抜け落ちにくいという特徴があります。
次回は、こういったアルツハイマー型認知症で特徴的な記憶の障害が、日常場面において行動、発言や物事のとらえかたなどに、どのように影響するのかということについてお話ししたいと思います。
「もの忘れ」は早期発見・早期治療が重要であり、診断・治療のためには地域のかかりつけの医師との情報共有が非常に重要です。ご家族や身近な方、またはご自身のもの忘れが気になるという方は、まずはかかりつけの医師にご相談下さい。

認知症疾患医療センター相談室 直通電話番号:086-427-3535

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第7回わくわくカフェ開催のご報告

11月18日、認知症疾患医療センター主催の第7回「わくわくカフェ」が開催されました。
これまで当カフェは「もの忘れ予防カフェ」との名称でしたが、参加者の方に名称の募集をしたところ、わくわく♪と涌谷先生、をかけた「わくわくカフェ」との素敵な応募があり、採用させていただきました。今回は22家族42名のご参加がありました。

涌谷先生からは「脳を守る」ために、日常生活で気をつけていくことについて、分かりやすく楽しいお話をいただきました。この度初導入の「わくわく福笑い」というゲームタイムでは参加者同士が協力して涌谷先生の顔を作り上げ、明るい笑い声があちこちで響いていました。
「元気にわくわく体操」では、通所リハビリ木村言語聴覚士・福井作業療法士より、認知症予防のため家庭でも取り組める楽しい体操を伝授していただきました。

後半は「ベビーカステラ作り」「お年玉のポチ袋作り」「脳トレ」などのブースに自由に回っていただきました。家族間交流のための「交流コーナー」では、困っている症状対応の意見交換だけでなく、家族の方ならではの様々な思いを語り合われました。この場での交流は、家族の方々が主体で運営されている「平成のオアシス」会への橋渡しとなっており、地域の皆さんのつながりを深める一つのきっかけになることが期待されました。


認知症について、地域の人々がわくわくと楽しみながら向き合える機会を、今後もお手伝い出来たら幸いです。

臨床心理士 M

(許可を得て写真を掲載しています)