梅毒とは?
「梅毒」は梅毒トレポネーマという病原体による感染症で、全身に様々な症状を引き起こします。
梅毒トレポネーマは、口や性器などの粘膜や皮膚から感染するため、性的な接触が主な感染経路となっています。また、梅毒に感染している母親から妊娠・出産時に子供に感染すること(先天梅毒)もあります。
日本では1960年代後半に10,000例を超える大規模な流行がみられた後、何回かの小さな流行はあったものの、おおむね減少傾向にありました。しかし、2010年頃以降、増加傾向となり、2019~2020年に一旦減少したものの、2021年以降再度増加に転じており、1999年に今の方法で統計を取り始めてから最多となるペースで増加しています。
梅毒は病期によって、症状の出現する場所や内容が異なります。治療を行わなかった場合の典型的な経過は次のとおりです。
Ⅰ期顕症梅毒: 感染後数週間
梅毒トレポネーマが侵入した部位(主に口の中、肛門、性器等)にしこりや潰瘍ができることがあります。また、鼠径部のリンパ節が腫れることもあります。これらの症状は痛みを伴わないことが多いです。治療をしなくても症状は自然に軽快しますが、ひそかに病気が進行する場合があります。
Ⅱ期顕症梅毒: 感染後数か月
感染から3ヶ月程度経過すると、梅毒トレポネーマが血液によって全身に運ばれます。この時期に、「バラ疹」とよばれる淡い赤い色の発疹が、手のひら、足の裏、体幹部などに出ることがあります。その他にも肝臓、腎臓など全身の臓器に様々な症状を呈することがあります。
発疹などの症状は、数週間以内に自然に軽快しますが、梅毒が治ったわけではありません。また、一旦消えた症状が再度みられることもあります。
晩期顕性梅毒: 感染後数年
感染後数年程度経過すると、ゴム腫と呼ばれるゴムのような腫瘤が皮膚や筋肉、骨などに出現し、周囲の組織を破壊してしまうことがあります。また大動脈瘤などが生じる心血管梅毒や、精神症状や認知機能の低下などを伴う進行麻痺、歩行障害などを伴う脊髄癆がみられることもあります。
感染が脳や脊髄に及んだ場合を神経梅毒と呼び、どの病期でも起こりうるとされています。
梅毒の検査は、一般的には医師による診察と、血液検査(抗体検査)で感染しているかを判断します。他にも全身状態の把握や、神経梅毒が疑われる場合には髄液検査、画像検査を行うこともあります。
梅毒の感染を防ぐためには、不特定多数の人との性交渉はしないことや、コンドームを使用することなどが大切です。
梅毒が疑われる症状や感染の心当たりがあれば、病期にかかわらず早めに医療機関を受診するようにしましょう。感染の可能性のある周囲の方(パートナー等)も検査を受け、必要に応じて治療を受けることが重要です。
厚生労働省「梅毒に関するQ&A」参照
イラスト:いらすとや
臨床検査部 TaMa