血糖値が高い状態を長期間放置していると、糖尿病特有の合併症が発症します。
特に三大合併症といわれる細小血管の障害には、「糖尿病性神経障害」、「糖尿病網膜症」、「糖尿病性腎症」があります。今回は、このうちの「糖尿病性腎症」についてお話しします。
糖尿病性腎症の有病率は糖尿病の罹病期間とともに増加し、透析の新規導入者における原疾患の第1位となっています。この糖尿病性腎症は、臨床徴候によって病期が分類されますが、病期を決める要素として尿中アルブミン量が大きく関係します。
健康な腎臓ではアルブミンのような大きなタンパク質は尿中に漏れ出てきません。糖尿病性腎症では腎臓の糸球体という器官にある血管壁の透過性が亢進し、血液中のアルブミンが尿中に漏れ出てきます。また、高血圧により血液中のアルブミンが漏れ出てしまうという考えもあります。
尿中のアルブミンが30~299(mg/gクレアチニン)の状態を早期腎症期と呼びます。糖尿病性腎症では、早期腎症を早期発見し、早期に治療開始できるかによって予後が大きく左右されます。早期腎症では自覚症状はあまりありませんが、進行すると血液中の水分が血管外に漏れて浮腫(むくみ)が出てきます。浮腫が進行して胸水がたまると心臓に負担がかかり、体動時の息苦しさや胸苦しさが出てきます。
糖尿病性腎症の発症進行予防には、血糖と血圧のコントロールが重要です。
一般的な成人ではHbA1cが 7.0未満、血圧130/80mmHg未満が目標値ですが、高齢者など、患者背景によって目標設定が異なる場合があるので主治医によく確認してください。
最近になって、糖尿病に伴う腎症の進行を抑制する薬も登場しています。糖尿病治療に使用されるSGLT2阻害剤にも、慢性腎臓病の進行を遅らせる効果が認められているものがあります。
また、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬にも腎保護効果が認められているものがあります。高血圧のある患者さんは、食塩を摂りすぎないようにしましょう。早期治療で腎臓の悪化進行を予防して透析導入を遅らせ、健康な腎臓を長持ちさせるように一緒に取り組んでいきましょう。
薬剤師/糖尿病療養指導士 いっちー
画像:イラストac