倉敷平成病院では、毎秋「神経セミナー」と題して、認知症・パーキンソン病・リハビリテーションなど、「神経疾患のより深い理解に立った医療・福祉の提供」を目的として講演会を開催しています。
今年は、救急棟4階を会場に、10月5日(土)に第37回神経セミナー「目からウロコ!進歩し続ける神経疾患のリハビリテーション」が開催され155名の方がご参加くださいました。
講師には川崎医科大学神経内科学教授 三原 雅史先生をお迎えし「神経疾患における姿勢歩行障害の病態解明と新規治療薬の開発」という演題でご講演頂きました。三原先生は、神経リハビリテーション、脳機能画像研究、神経変性疾患臨床をご専門分野とされておられます。
歩行は中枢神経、末梢神経、体感、関節等多くが関係していること、日常動作の歩行についても中枢神経系による精緻な運動制御機構であること、特に人間の二足歩行については複雑な関節の動きでなりたっていることの説明がなされました。
NIRS(ニルス:近赤外分光法)で脳の機能を測定する方法や、脳卒中片麻痺患者の非麻痺側肢をミットやスリングなどで動かないように抑制し、その結果麻痺側肢の運動を誘導する運動療法であるCIMTについて等、事例を交えてご紹介下さりました。
また、最先端の治療法、脳波等の脳の信号によってコンピュータや機器を操作する技術であるBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)についても可能性をお話くださいました。
イメージをしながらリハビリを行うことで、リハビリの効果が向上すること、また脳は使えば使うほど機能が向上する分、使わなければその機能は不要と判断して出来なくなるというトピックスが印象に残りました。
講演後は医師、理学療法士、患者さん等から活発に質疑応答がなされました。
例えば、「良い食べ物とかおススメのリハビリなどがありますか」という質問に対しては「特定のものを食べてどうにかするというのは無く、バランスよく、またご高齢であればたんぱく質をしっかりとってください」ということでした。
また、「パーキンソン病の方は運動をすれば機能が向上するということが言われていますが、どれくらい運動したらよいのか」という質問については、「基本回復期リハビリテーション病棟と同じくらい、一日3時間程度の運動をすることをお勧めします。全身の筋肉を使う有酸素運動がよいとされています。まずは早歩きで歩く時間を増やすことをお勧めします」とのことでした。
「疾患がありバランスが良くなった方は、脳の様々な領域の活動が改善しているということを示されましたが、それを促すような運動や介入の強度はどれくらいが適切でしょうか」という質問に対しては、「ギリギリできないくらい、ちょっと難しいくらいの難易度にすることがよい」とのことでした。
また、パーキンソン病の患者さんが取り入れるとよい運動法について、ステップが決まっているダンスや太極拳をおすすめされていました。
最後にパーキンソン病の患者さんに向けて「認知症の薬がそうであるように、パーキンソン病の薬も少しずつ良くなってきています。パーキンソン病についても進行自体を抑える薬がでてくると思います。それはそう遠くない将来だと思いますが、まずは運動を日常生活に取り入れて、ご自身の努力で進行をゆっくりさせることができる病気だと思っています。頑張って維持していただければと思います」とやさしく語ってくださいました。
脳の機能や最新の治療法について幅広くお話くださりよい学びの機会になりました。ありがとうございました。
秘書広報部
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