第35回神経セミナー「やさしく学ぶパーキンソン病」開催報告

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倉敷平成病院で毎年秋に開催されている「神経セミナー」ですが、今年も昨年に引き続き感染対策に留意し、11月5日(土)に参加者約50名で開催されました。

またこれを YouTubed動画配信(11月末公開予定)いたします。

講師に藤田医科大学脳神経内科教授 渡辺 宏久先生をお迎えし、「パーキンソン病の診断と治療」をご講演いただきました。渡辺先生は、藤田医科大学パーキンソン病センターのセンター長も兼任されており、パーキンソン病診療ガイドライン2018や認知症疾患診療ガイドライン2017の委員を歴任されておられます。

講演は「パーキンソン病の診断」「運動症状の治療」「非運動症状の治療」「Emotional well-beingの重要性」の4つの視点からお話下さいました。

世界初のパーキンソン病患者さんのビデオ等、貴重な動画資料がいくつも紹介されました。また、パーキンソン病発症の機序とされる、神経細胞の脱落の状態等をMRI画像DATスキャン画像を示されながらご説明下さいました。現時点では、保険未適応ではありますが、嗅覚検査がパーキンソン病の鑑別診断に有用であり、研究を進めておられるなどのお話も大変興味深く拝聴しました。

パーキンソン病の内服治療について、日進月歩で新しい薬剤が開発されており、薬が効かなくなるウェアリングオフ現象やジスキネジアの発現を遅らせるような工夫などについてもご講演下さいました。薬の服薬時間や服薬の仕方によって効果が異なることもご説明下さり、大学での研究だけでなく臨床の現場も大切にされている姿勢を感じ取りました。

「Emotional well-beingの重要性」の項目では、パーキンソン病の患者さんは、仕事の役割や家族との関係、友人との関係等で悩まれる傾向にあること、また就労期間が短くなる傾向にあることなどが説明されました。これは地域連携やチーム医療で、問題点に早く気付くことや適切な合併症の管理を行うこと、非薬物療法や生活の工夫といった教育・情報提供が大切とのご説明でした。

 最後の質疑応答の時間で、渡辺先生は、「パーキンソン病治療での運動・栄養・内科的治療・外科的治療を車の四輪のように重要と考えている」とお話下さいました。しかし、その四輪車を動かすのに、最も重要なのは「患者さん本人の気持ち」ということでした。ドーパミンが一番よく出るのは患者さんが笑顔の時、「やるぞ」という気持ちの時とのことです。
そして、病気のことを説明した初回よりも、その不安を抱えて対面する2回目の診察を大切にされており、患者さんの訴えをしっかり聞く時間を持つようにされているとのことでした。

 「今の精一杯の治療に比べ、近い将来の精一杯の治療は間違いなく大きく前に進んでいます」という言葉を紹介され、研究と臨床の第一線で活躍されておられる先生の、前向きな姿勢に大変感銘を受けました。

講演の2時間を大変短く感じる内容の濃い神経セミナーでした。近日中に講演内容の動画を公開いたします。是非ご視聴下さい。

秘書広報課

※YouTubeに動画がアップされましたら改めてご案内いたします。