低血糖

カテゴリー: 糖尿病療養指導士 | 投稿日: | 投稿者:

糖尿病の治療の基本は食事療法・運動療法ですが、2~3ヵ月しても血糖値のコントロールが不十分な場合、薬物療法が開始されます。

糖尿病の薬物療法中に、最も高頻度でみられる急性合併症が低血糖です。
一般に、血糖値が70mg/dL未満になると、人のからだはグルカゴンやコルチゾールといったホルモンの分泌を増やすことで血糖値を上げようとします。また、血糖値が50mg/dL未満になると、脳などの中枢神経がエネルギー(糖)不足の状態になります。その時にでる特有の症状を低血糖症状と言います。

普段の血糖値がかなり高い人では、血糖値が70mg/dLより高くても低血糖症状がでることがあります。逆に、普段から低血糖気味の人では、血糖値が50mg/dLより低くても低血糖症状がでないことがあります(無自覚性低血糖)。
血糖値が30mg/dL以下(重症低血糖)になると、痙攣発作・低血糖昏睡に至り、命に危険が及ぶことがあるため、低血糖になったときは、できるだけ早い段階ですみやかに対応しなければなりません。

意識がある場合はブドウ糖10g(砂糖の場合20g)やブドウ糖を含む飲料水(ジュースなど)を摂るようにしますが、意識がなくなるような重症低血糖の場合、無理にブドウ糖やジュースを飲ませることで誤嚥や窒息を起こす可能性があるため、医療機関に到着するまでの緊急処置として、家族がグルカゴンという注射を行う場合もあります。
しかし、注射をする前に、溶解液で薬剤を溶解させたり、溶解させた液を注射器で吸引したりするなど、投与を完了するまでに数分程度かかる可能性があります。
そこで昨年発売されたのがバクスミー点鼻粉末剤です。

バクスミー点鼻粉末剤は、重症低血糖の救急処置に用いるグルカゴン製剤です。ケースから点鼻容器を取り出した後、点鼻容器を手に持ち、先端を鼻に入れ、注入ボタンを押すという非常に簡単なステップで投与が可能です(20~30秒あれば投与を完了できます)。一方で、効果は注射剤と同等、効き目の早さはほとんど同じです。また、感冒症状(鼻水・鼻づまり)があっても問題なく使用できます。

今回はバクスミー点鼻粉末剤という低血糖の救急処置薬について紹介しましたが、最も大切なことは低血糖にならないということです。薬は医師の指示通り内服し、規則正しい食生活を心がける、空腹時の運動は避けるなど、低血糖を起こさないような生活をこころがけましょう。

糖尿病療養指導士 薬剤師 H.N