「やせるためにはゆっくり食べろって言うけど、食事のペースってそんなに大事なの?それなら、まずい食事を嫌々食べたら自然とゆっくりになるから、まずいもの食べたらいいかもだよね。」
患者さんに聞かれたので調べてみました。
食事を摂ると体内に吸収された栄養素が分解され、その一部が体熱となって消費されます。このため食事をした後は、安静にしていても消化などのために内臓が活発に活動しエネルギーを消費して代謝量が増えます。この代謝の増加を食事誘発性熱産生(DIT: Diet Induced Thermogenesis)または特異動的作用(SDA: Specific Dynamic Action)といいます。
人が消費するエネルギーは、大きく分けて3つ。
「基礎代謝」「生活活動代謝」「食事誘導性熱産生」です。
基礎代謝:寝ていても消費する、呼吸や内臓などをはじめとした生命維持のためのエネルギー。
生活活動代謝:歩いたり仕事をしたり、スポーツなどで活動して消費するエネルギー。
食事誘導性熱産生:食事をするときに消費するエネルギー。
やせるために消費エネルギーを増やそうとすると、一番効果的なのは、運動により筋肉をつけて基礎代謝を上げることです。筋肉をつけると、同じ運動量でも消費カロリーが上がります。でも、運動はちょっと・・・という方は多いと思います。実は食事誘導性熱産生(DIT)を高めることでも、消費エネルギーを増やすことは可能です。
食事誘導性熱産生(DIT)を高めるポイント
・朝食を食べる・・・エネルギー消費量は朝が最高で深夜が最低になります
・硬いものをよく噛んで食べる・・・噛むことで交感神経を刺激しエネルギー消費を高める
・たんぱく質を多めに食べる・・・消化の際に消費されるエネルギーが多い
・温かいもの、香辛料のきいたもの・・・血行が良くなり消費エネルギーが増える
・緑茶やコーヒーを飲む・・・カフェインもDITを高める
・軽い運動と併用・・・軽い運動習慣のある人の方が食べるときのDITも高まる
ひとつ注意点として、カロリーが低いからといって、まずいのに無理して食べているとDIT反応が低くなり、食事を通じたエネルギー消費がされにくくなってしまうそうです。DITはおいしい料理に強く反応します。美味しいものを食べると満足感も伴うので、間食防止にもつながるでしょう。また、食事量を減らしすぎるのもいけません。一定のエネルギーを消費しないとDIT反応が弱くなってしまうのです。
食事の度にDIT反応は起きますから、少し意識して、「美味しいものをゆっくりよく噛んで」食べてみてはいかがでしょうか。
栄養科 管理栄養士 A子