みなさん、こんにちは。今回は血液検査と食事についてお話したいと思います。
血液検査(採血)は空腹時が望ましいということはご存知の方が多いと思います。それは、主に食事による血液への影響を避けるためです。食事の影響で、上昇する項目として血糖、インスリン、中性脂肪、低下する項目として無機リンなどがあります。これらは、食事の内容や食後の時間、また個人差もあり、影響を受ける度合いは一律ではありませんが、少なくとも食後2~4時間経過後の採血が望ましいと言われています。
ですが、特に空腹時で採血するようにとの指示がない場合、検査に携わる者として一つ注意していただきたいことがあります。それは、偏った食事内容です。突然ですが、メディアで「○○に効く!」などのうたい文句で、とある食べ物がクローズアップされているのを見たことはありませんか?そういう風に取り上げられていると、「明日から買って食べてみようかな??」という気持ちになる方もいらっしゃると思います。
例えば、「高血圧に効く!」としてトマトやアボカド、バナナなどの野菜や果物が取り上げられていたとします。たしかに、それらに豊富に含まれるカリウムによって、血圧を下げる効果があります。では、それらをたくさん摂取して、あまり時間をあけずに、血液検査でカリウムを検査したらどうなるでしょう?個人差はありますが、食事で大量に摂取したことにより、血液中のカリウムが一時的に上昇し、異常値になってしまう可能性があるのです。一例では、朝食に野菜ジュースやバナナ、アボカドなどカリウムを2000mg(おおよそ一日量カリウム)摂取した後、採血を行い、血清カリウム値が6.0mmol/L(基準値3.6~4.8 mmol/L)の異常高値となった例が報告されています。
この症例では、約2時間後に再採血を行うと、4.8 mmol/Lで正常範囲となり、食事による一過性の高カリウム血症が最も考えられたとのことでした。カリウムは、細胞の機能や神経、筋肉の興奮性、特に心筋に大きな役割を果たしており、高カリウム血症は不整脈を起こす可能性がある危険な状態です。
つまり、「体にいいから」とそればかり食べるような偏った食事によって、思わぬところで血液検査のデータ異常を引き起こし、誤った治療が行われかねません。もちろん、私たちは日々患者さんの血液データを見るときに「これは病態による異常値か」「検体に問題はないか」「機械に問題はないか」など色々なことを考えながら結果をお返ししています。
ですが、患者さんが「何を食べてきたか」までは聞き取りを行わない限り把握できません。そのため、ご自身でも受診(採血)の予定がある直前は、食事内容も少し注意していただけると、より正確な検査結果が得られると思います。
とはいえ、血液検査(採血)の基本は空腹時です。また、食べ物に含まれる成分には1日摂取目安量がもうけられているので、それらを参考にほどほどに摂るよう心がけましょう。
臨床検査部 K・A
(引用)
看護roo 現場で使える看護知識HPより
日本臨床検査技師会誌 医学検査 第70巻 第4号
公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院リバーサイド臨床検査室
中川ら「食事による影響が推測された一過性の血中カリウム値上昇についての検討」より