足底筋膜炎の陰と陽

カテゴリー: ヘイセイ鍼灸治療院 | 投稿日: | 投稿者:

ブログ最近、60代の女性の患者さんは足底部の痛みで鍼灸治療に来られました。症状は半年前から、当時には右の踵を中心に痛みと腫れがありましたが、今は局部の腫れがなくなり、痛みの範囲も縮小しましたが、右踵の痛みは依然残っています。特に朝起床後初めて床に踏むときに痛みが感じやすく、その他にダンスやゴルフなどの運動時と運動後に痛みが現れやすい。今まで、鍼灸、整体、電気治療などを受けていましたが、なかなか改善されませんでした。
訴えられた症状から、痛みの原因は足底筋膜炎によるものだと考えました。今まで当鍼灸治療院では数人このような患者さんを治療したことがあり、いずれも良い効果が得られました。その経験を踏まえて、この患者さんに対しても、主に太陽膀胱経のツボである項部の天柱、腰部の腎兪に刺鍼し、右の踵の周りの太陽膀胱経のツボに灸頭鍼(ツボに刺している鍼の柄にモグサを巻き付けて燃焼させる方法)を実施しました。
今までの患者さんには、この方法で治療後にすぐ効果が得られましたが、この患者さんには2回同じ方法で治療した後にも、全く効果が現れませんでした。そこで反省してもう一度体質状況を確認したところ、舌に苔があまりなく、乾燥しており、左手の関部と尺部の肝腎脈は虚弱であることが分かり、体質は肝腎陰虚だと判断しました。この体質に合わせて、少陰腎経のツボである足首内側の燃谷、太谿、復溜、築賓と胸部の兪府、太陰肺経のツボである肘内側の尺沢と手首内側の経渠などに刺鍼しました。この方法で治療した後、すぐ効果が得られました。さらに数回治療しているうちに、症状はほとんど改善されました。
踵の外側には太陽膀胱経が通っており、内側には少陰腎経が通っています。この二つの経絡の流れの異常はすべて足底筋膜炎の症状を起こすことができます。太陽膀胱経の場合、冷えによる循環障害が原因になっているので、局部に灸頭鍼を実施すれば、効果が得られやすいが、少陰腎経の場合、陰虚による筋膜の乾燥が原因になっているから、同じように灸頭鍼を行っても、効果が得られないばかりか、逆効果になる場合もあります。
この症例から、鍼灸治療には体質判断の重要さをもう一度実感させられました。足底筋膜炎にも陰と陽の体質の違いがあり、その体質を正しく判断したうえで、治療を施して、はじめて良い効果が得られます。

ヘイセイ鍼灸治療院 甄 立学