日別アーカイブ: 2019年10月22日(火曜日)

脳深部刺激療法(DBS)におけるCT検査の役割 開発編

カテゴリー: 放射線部 | 投稿日: | 投稿者:

当院、倉敷ニューロモデュレーションセンターで上利医師が行っている脳深部刺激療法(以下、DBS)は、パーキンソン病、本態性振戦、ジストニアなどの運動障害を対象に治療を行っています。

このDBSシステムから脳内の特定の標的部位に微弱な電気パルスを送り、運動制御に関与する組織を刺激し症状を緩和します。その電気パルスは脳内にDBSリードから送出されます。

当院ではディレクショナルDBSリードと呼ばれる電極から送出される電流に指向性を持たせることが可能なリードを使用しています。

このリードは脳内の特定の部位だけに効果的に刺激を与えることにより副作用が生じるおそれのある部位には刺激を与えることなく効果的に患者の症状を緩和することができます。

放射線部での役割としては、手術前に高精細な頭部MRIを撮影することにより刺激部位の位置の把握をする事、手術後には頭部CTでリード周辺の脳内の状態を観察します。

そのCT撮影時に、電極がどの方向に向いているかを特定します。

この電極は1本のリードに3つ存在し、さらにその1つずつは3方向に分割されていています。この方向を特定するため指標としてディレクショナルマーカーと呼ばれるものがセットで存在します。

このディレクショナルマーカーは径が1.3mm、長さが3mmほどのとても小さなものです。

レントゲンで撮影しさらに拡大して見れば、電極の真横は「コ」の形に観察され真正面では「I」の形に観察されます。この真横から見た「コ」の字の2画目にあたる縦の線が正面となります。しかし真正面から見ると前後が分かりません。さらに脳内で具体的にどの方向に向いているのかも分かりにくいです。

 

その、3分割の電極が脳内でどの方向に向いているかを特定するのがCT検査の役割の一つになります。

先に述べたようにとても小さな電極ですので大変な作業と時間を要しました。

当院の80列マルチスライスCTの性能をフルに発揮し、ワークステーションと呼ばれる解析装置を駆使して可能となりました。

当院ではディレクショナルDBSリードを2種類扱っています。このディレクショナルマーカーのCT画像から方向を特定していくのですが、この2種はレントゲンで見るとよく似ているのですが、CT画像ではマーカーの方向の指標となる特長が全く違っていたので別々の方法で解析を行いました。

さらに一方は方向を特定するための特長が分かりにくく、さらに細かく撮影し特定方法も変えないと分かりませんでした。

もっと分かりやすくするためには線量を多くすれば良いのですが、電極留置後は定期的に何度も撮影するので被ばくに関しても留意しないといけません。そのため特定できる最低限の線量を探る事で被ばく低減にも努めました。

また、精度維持・作業時間短縮・技師間のバラツキを無くすため、作業のマニュアル化・解析効率を高めるアシスト機能の作成・撮影技師の教育をすることにより現在では撮影から解析まで正確で迅速に結果のバラツキ無く行えるようになりました。

では、実際の電極のCT画像と行きたいのですが、今回は熱くなりすぎたので次回お見せしたいと思います。

放射線部 とんかつ