失語症とは、脳卒中などの大脳疾患により、聴く・話す・読む・書く・計算の言語機能に支障を来し、日常生活上のコミュニケーション活動に問題が生じる障害です。
障害の程度やタイプはそれぞれ異なりますが、失語症者は生活における様々な場面で制限を余儀なくされ、コミュニケーションの問題が活動の制限や参加の制約に繋がると言われています。実際に失語症者が生活場面において困る事として、下記の事柄などがあります。
・携帯電話やパソコンの使用が困難となり、情報交換が制限される
・初めての場所に1人で行くことが難しい
(道を尋ねられない、メニューを読み取ることができず食事の注文ができない)
・医療機関で医師や薬剤師の説明が分からない時に質問ができない
・お釣りの計算に自信がなく、五千円や一万円札を出してしまう
これらの要因により、失語症のある人は自宅に閉じこもりがちになり社会への関心が乏しくなる、焦燥感や挫折感などにより心理的に落ち込むなど、心理的側面でも様々な問題を抱えることがあります。
このような状況である事を我々言語聴覚士は理解をしていますが、例えば、“難聴の方には手話通訳者”のように、失語症者のためのコミュニケーションを援助する社会保障制度がありませんでした。
そのため一般の方々にもほとんど失語症についての理解が浸透していませんでした。そこで日本言語聴覚士協会は、障害者総合支援法の見直しを契機に国の委託を受け、失語症のある人のための意思疎通支援者の養成を始めました。
そして現在、全47都道府県で失語症者向け意思疎通支援者養成講座が開催されています。今後、この失語症者向け意思疎通支援事業が失語症のある人の活動や参加を促進していくきっかけになり得る重要な事業であるため、皆様にも周知して頂きたいと思います
次回は失語症者向け意思疎通支援者・派遣事業について説明していきます。
言語聴覚士 尾高