日別アーカイブ: 2021年9月4日(土曜日)

医療に貢献する「生きている化石」

カテゴリー: 臨床検査部 | 投稿日: | 投稿者:

突然ですが 生き物の血液の色は何色だと思いますか? 

少し考えてみてください。

話は変わり、笠岡市にカブトガニ博物館がありますね。カブトガニは名前とイメージから甲殻類かと思われがちですが、実はクモやサソリなどと同じ鋏角類に分類されます。鋏角類からさらにカブトガニ科に属しています。地質時代から存在し、現在も生存しているため「生きている化石」とも呼ばれています。

そんなカブトガニですが実はカブトガニの血液が臨床の場に貢献しています。内毒素(エンドトキシン)というものをご存じでしょうか。内毒素は細菌(グラム陰性)の細胞壁を構成するリポ多糖体(LPS)であり、リポ多糖体が菌の死滅後に菌体外に出て毒素活性を示します。
人間にも特に腸内細菌科によって敗血症や発熱など影響を及ぼし、最悪の場合、致死的な病態も引き起こしてしまいます。そんな内毒素を検知するためにカブトガニの血液が役に立っているのです。内毒素はカブトガニの血液から得られる抽出成分と反応してゲル状に固まります。その特性を利用し、臨床での試薬に使われています。他にも真菌感染症の診断に有用なβ-D-グルカンの検出にも役に立っています。

人間の血液は誰しもが赤色だとわかると思います。これは血球成分の「ヘモグロビン」によるものです。ヘモグロビンが酸素を全身へ運ぶ役割を担っており、ヘモグロビンの色は赤色です。
もう少し詳しい話になると酸素を多く含むオキシヘモグロビンは鮮赤色で、酸素が少ないデオキシヘモグロビンは暗赤色になります。採血に携わる時、患者さんに「血が黒っぽいけど大丈夫なんかね?」とよく言われます。しかし、これはごく普通のことで血液が黒っぽく見えるのは酸素を全身組織へ運んだ後の血液を多く含む静脈から採血するためです。

血液はさらに液体成分(血漿)と血球成分に分けることができ、血漿はおおよそ黄色を呈します。一方、カブトガニやイカ・タコなど節足動物や軟体動物ではヘモグロビンがありません。ではなにが酸素を運ぶ役割を担っているのかというと、「ヘモシアニン」が担っています。つまりヘモグロビンではないので赤色の血液ではありません。ヘモシアニンは本来、無色透明で核には銅が含まれています。この銅が着色に関係しており、酸素と結びつくと青色を呈します。
 ちなみにカブトガニでは体内を流れている時は透明がかった乳白色をしています。なので、カブトガニから採血した場合、採取時は乳白色をしていて、時間が経過すると青色へと変化していきます。

最初の「生き物の血液の色は何色かどうか」ですが、実は複数の答えが正解です。

今回はカブトガニの血液でしたが今後、別の生き物の血液が医療の貢献につながる発見がまだまだあるかもしれません。楽しみです。

 

参考
臨床検査学講座 微生物学/臨床微生物学・免疫検査学
笠岡市ホームページ 笠岡市立カブトガニ博物館

臨床検査部 Y.M