高齢者の耳鳴りと難聴の鍼灸治験

カテゴリー: ヘイセイ鍼灸治療院 | 投稿日: | 投稿者:

72歳の女性方で、半年前から両側の耳鳴り、難聴が同時に発生し、耳鼻科にかかりましたが、「特に治療法はない」と言われたため、当鍼灸院に相談に来られました。

この患者さんの体質状況はかなり複雑でした。以前に甲状腺ガンで手術を受けておられ、現在は慢性甲状腺炎があり、甲状腺のホルモン剤を服用しています。さらに緑内障、蕁麻疹、胃の不調などの慢性疾患もあります。

所見では、舌体はやや大きく、縁に歯痕があり、舌質は淡紅、苔は薄白潤、脈は緊、胃脘部に抵抗が強いことがわかりました。
患者は高齢であると同時に、複数の慢性疾患があり、体質は非常に複雑です。舌と脈から「中焦痰飲」の証が見られ、かつ中焦(脾胃)は気血生化の源であり、後天の元ですから、まず中焦の機能を改善することを目指しました。

これに対して、中脘、天枢、陰交、曲池、下廉、内関、合谷、足三里、陰陵泉、三陰交、瞳子髎、聴宮のなどのツボを取って鍼灸の施術を実施しました。
初診から週1回のペースで治療し始めてから3か月後に、耳鳴りの音がかなり小さくなり、聴力も改善されました。「運転中にウインカーの音が聞きとれなかったが、今は聞こえるようになった」とのことでした。

高齢者の耳鳴りと難聴は難治性のパタン―が多く、現代医学では主に神経系の問題として考えられていますが、漢方(鍼灸)医学では、主に臓腑陰陽の虚実と経絡気血の通滞、内外邪気の有無から体質状況(証)を判断し、治療します。

耳は五臓の腎に属しますが、経絡循行では手足の少陽経とのつながりが密接であります。故に耳鳴りと難聴などの症状を一般的に「腎経と少陽経の問題」として治療します。

一方、「頭痛耳鳴、九竅不利、腸胃之所生也」という古典の記載があります。これは「耳鳴りは胃腸(陽明経)の問題により起こるものもある」ということです。
以上の理論を踏まえて、この患者さんは、「中焦痰飲」の証を呈していますから、手足陽明経のツボを中心にして治療を行いました。

もちろん、患者さんは高齢なので、「肝腎不足」の問題もありますが、まず気血生化の源の「脾胃」の問題を改善してから、肝腎の問題を治療しようとしていましたが、幸い、中焦(脾胃)の問題を治療しているうちに、症状は改善されたので、あえて肝腎のツボをあまり取りませんでした。

ヘイセイ鍼灸治療院 甄 立学

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