背部兪穴で手指関節痛を治す

カテゴリー: ヘイセイ鍼灸治療院 | 投稿日: | 投稿者:

60代の男性が頚椎症により頚腕部での神経痛で鍼灸治療を受けていました。頚椎症の症状が次第に改善された後、手指関節痛が現れました。特に両手の人差し指と薬指の第一関節と第二関節に痛みを感じやすいとの事でした。
鍼灸の経絡理論から見れば、人差し指は手の陽明大腸経の支配領域であり、薬指は手の三焦経の支配範囲ですから、治療は主にこの二つの経絡に鍼灸を実施しましたが、あまり効果が得られませんでした。
古人の文献を調べると、手指関節痛に相関臓腑の背部兪穴で治療すると効果が得られるという記載がありました。この経験を踏まえて、背中のツボを使って治療してみました。
使ったツボは主に大腸兪(第4と第5腰椎の間、中心から外側に1.5寸のところ)、三焦兪(第1と第2腰椎の間、中心から外側に1.5寸のところ)でした。これらのツボに刺鍼した後、人差し指と薬指の第2関節の痛みがほとんど消えました。ただ右手の薬指の第2関節にまた少し痛みが残っていました。背部の兪穴がよく効いたので、この度、腹部にある募穴を試してみました。薬指に関係する三焦経の募穴は石門です。このツボはへその下の2寸のところにあります。このツボを刺鍼した後、右手の薬指の第2関節の痛みも完全に消えました。
鍼灸治療の取穴法には、背中にある臓腑の兪穴と腹部にある臓腑の募穴を組み合わせる取穴法があり、この患者さんの治療にこの方法を取り入れて実施した結果、非常に良い効果が得られました。
「手指関節痛なのに、なぜ背中やお腹のあまり関係がないところに鍼をして効果が得られるだろうか」と不思議に思われる方もおられるかもしれません。これは漢方医学の臓腑理論や経絡理論がなければ、確かに理解しがたいです。しかし、こんなことがあるから、鍼灸治療の素晴らしさと面白さを度々感じさせられます。

ヘイセイ鍼灸治療院 甄 立学