栄養科通信vol.167「早食いと肥満」

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昔から「早食いは肥満のもと」といわれています。早食いをすると肥満になりやすいのは脳の満腹中枢が関係しています。満腹中枢とは脳の視床下部にある器官のひとつで、摂食行動を調整しています。食べ物を食べると消化・吸収され、血液中のブドウ糖が増加します。満腹中枢はこれを感知し、「お腹が一杯になった」と体に伝えます。しかし、ブドウ糖が上昇したことを満腹中枢が感知するまで約20分かかるとされ、早食いの人は満腹感を感じる前に食べ過ぎてしまい、結果として肥満になりやすくなります。また、早食いは食後の血糖値が上昇しやすくなるため、糖尿病のリスクも高めます。そのため、ゆっくり食べることが大切です。

ゆっくり食べるコツの1つは「よく噛む」ことです。よく噛むことで満腹中枢がより早く刺激され、少量でも満腹感が得られやすいのです。またよく噛むことは脳の活性化や、唾液の分泌を増やして消化を助ける、虫歯や歯周病を予防するなどの効果があります。その他にも日頃からよく噛んで歯や顎を鍛えておくと、しっかり歯を食いしばることができるので力を出しやすくなり、全身の筋力や体力の向上につながります。

また、よく噛むこととエネルギー消費には関係があると言われています。人が消費するエネルギーには呼吸など生きていくために最低限必要な生命活動で消費される「基礎代謝」、運動や家事などの活動で消費される「身体活動量」、食べ物の消化や吸収で消費される「食事誘発性熱産生」があります。よく噛むことで消化活動が活発になって食事誘発性熱産生が高まり、エネルギー消費量を増やすことができます。

東京工業大学大学院では、食事(パスタ、ヨーグルト、オレンジジュース)を食べる時間の差での食事誘発性熱産生の違いについて調査しており、早く食べた時のエネルギー消費量は15kcalでしたが、ゆっくりよく噛んで食べた場合は30kcalで、咀嚼回数を増やすとエネルギー消費量に2倍の差が出ることが明らかになったそうです。

食事はゆっくりよく噛んで味わって食べましょう。

☆ゆっくり食べるコツ
 ・噛みごたえのある食材を選ぶ
  ごぼうやれんこん、きのこなど、食物繊維の多い食品を取り入れましょう。
 ・食材を大きめに切る
  大きめに切ることで、飲み込むまでの噛む回数が自然と増えます。
 ・口に入れる量を減らす
  一口量を少なくしましょう。
 ・箸を置く
  一口食べるごとに箸を置き、食事を味わいましょう。

参照:東京工業大学ホームページ

https://www.titech.ac.jp/news/2015/031199

管理栄養士 Y.M