お薬を減らしましょう ~「ポリファーマシー」の対策を~

カテゴリー: 薬剤部 | 投稿日: | 投稿者:

最近、よく耳にする「ポリファーマシー」、これは、「poly(複数)」+「pharmacy(調剤)」からなる言葉で、「多剤服用」や「多剤併用」を意味する言葉です。若い頃は薬なんてそう飲むことはなかったのに、加齢とともに少しずつ増える内服薬、例えば、アレルギー、高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、めまい、不眠、関節痛、、、、気が付くと、毎日飲む薬が6種類とか、7種類とか増えていませんか。

厚生労働省のデータでも、高齢になるほど複数の慢性疾患を抱える方が多く、薬の種類は高齢になるほど増えるというデータがあります。ただし、高齢化が進むことで認知機能が低下し、薬が多くて把握できない、種類が多くてきちんと飲めない、きちんと飲んでいるはずなのに全部飲み終わったときに薬が残っている、など、様々な問題が起こることも考えられます。また、加齢とともに、認知機能だけでなく、身体の生理機能が低下することも忘れてはなりません。若い頃からずっと飲んでいる薬だからと過信して同じ量を飲み続けているうちに年を取り、年とともに生理機能が低下したことで、普段飲んでいる薬が過量投与になって体調を崩すという危険もあります。特に加齢とともに腎臓や肝臓の機能は低下することが多く、量を減らさないまま飲み続けることが危険な薬も少なくありません。ポリファーマシーでは、薬同士による相互作用も勿論ですが、身体がたくさんの薬を代謝・分解・排泄しないといけなくなるので、薬が多いほど薬が体内に残って効きすぎたり、副作用が起きたり、という問題にもなります。薬の数が多いほど、薬による有害事象が増えるというデータもあります。また、ポリファーマシーは、廃棄される「残薬(飲み残した薬)」の金額にも反映されていて、飲まなくて廃棄される薬剤が貴重な社会保障費の無駄につながっていることも認識しなくてはなりません。

薬は病気を治すために開発されたもので、薬によって人の寿命が延びたことは間違いありません。過去では失命するような病気でも、薬が開発されたことで治療できるようになった、その恩恵も十分に理解できます。ただ、多くの薬が開発されたことで、薬があれば病気は治せると頼りすぎている部分もあるのではないでしょうか。日常の生活習慣を見直すことなく、薬の恩恵で長生きしようとする考え方を改める時期なのかもしれません。眠れなければ睡眠薬を飲む、少し太ってきたのでコレステロールの薬を飲む、血圧が高くなれば降圧剤を飲めば治る。薬剤師は「ポリファーマシー」の対策に取り組んでいますが、何よりも、一人ひとりが薬に頼りすぎない健康づくり、病気になりにくい生活習慣、を意識しなければ、「ポリファーマシー」の問題は改善されません。今、自分が飲んでいる薬は、何種類ですか?その薬は、今の自分にとって、本当に必要な薬ですか?ただし、自己判断で治療を中断してはいけません。自分が飲んでいる薬が何の薬なのかわからないものがあれば、必ず主治医の先生に聞いてください。薬で気になることがあれば、自分の信頼する薬剤師さんに相談してください。自分の健康と将来のため、また、社会保障費を節約して子供たちの未来に貢献するため、今一度、皆さんが、「薬」の飲みすぎについて考えるきっかけになれば幸いです。

薬剤師 いっちー