栄養科通信114~野菜ジュースの栄養って・・・?~

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image001栄養指導をしていると、野菜不足の人が多いことに気がつきます。朝はパンとコーヒー、昼はうどん、夕はご飯と唐揚げと野菜サラダ、なんてよくある1日の食事内容ですよね。夕食にサラダを食べているので自分では野菜を食べたつもりになっていますが、よく考えると朝食にまったく野菜が含まれておらず、昼食も申し訳程度のねぎがうどんに乗っているだけ。と言うことになり野菜不足と言えます。そこで話に登場するのが野菜ジュース。「1本で○g分の野菜が摂れる」、「1日分の野菜がこれ1本でOK」などといったキャッチコピーで多くの種類が販売されていますが、果たして野菜ジュースを飲めば野菜を食べるのと同じ効果があるのでしょうか?
まず、“野菜ジュース”と名乗れるのは野菜汁が100%のものだけです。(食塩の添加はOK)

野菜汁100%・・・野菜ジュース
果汁50%+野菜汁50%のもの・・・ミックスジュース
野菜汁(果汁)が10%〜100%未満のもの・・・○○%○○果汁入り飲料
野菜汁(果汁)が0〜10%未満のもの・・・清涼飲料水や炭酸飲料

市販の野菜ジュースの多くは、「濃縮還元」という製法によって作られています。「濃縮還元」とは、搾った野菜汁に加熱などの方法で水分を飛ばして4~6倍程度まで濃縮後冷凍し、使用時に水を加えて元の濃度に戻すという製法です。保存がきき、かさが減るため運搬費が安く済むというメリットがあり、広く用いられています。なので、野菜汁100%といっても完全に野菜だけでできているわけではなく、水が加えられています。このような濃縮をせずに、野菜汁だけでできている商品は「ストレートジュース」と表示されています。味や風味は断然こちらのほうが上ですが、商品ですから殺菌のためには加熱処理をしなくてはなりません。
このように野菜ジュースができるまでには、濃縮や殺菌のために加熱されています。すると熱に弱い酵素は失活し、ビタミンCは激減してしまいます。つまり、野菜ジュースや果汁のジュースでは酵素とビタミンCは期待できません。ただし、ビタミンC入りと書かれているものはビタミンCを添加しているものもありますので、もしジュースからビタミンCを取りたい場合は表示をよく見て選んでください。生野菜や生の果物で作られたジューススタンドのフレッシュジュースや、自宅でミキサーで作ったスムージーなどは加熱処理していないのでビタミンCは残ります。反対に熱に強いリコピンやβカロテンは野菜ジュースにしてもしっかり残っているようです。
そしてもう一つ、本物の野菜とは決定的に異なるのが食物繊維です。食物繊維には「不溶性」と「水溶性」の2種がありますが、野菜を絞ってジュースになる段階で、飲みやすくするために搾りかすである「不溶性食物繊維」を取り除いてしまします。一方、水に溶ける性質を持つ「水溶性食物繊維」は、野菜の水分にも溶けているため、ジュースになってもある程度は残っていると思われます。しかしながら、国民生活センターの調べによると、「1本で1日分の野菜を使用」などと表示された野菜ジュース類の多くは、厚生労働省が推奨する1日の野菜摂取量350gを下回る量の栄養素しか含んでいないことが成分分析でわかっています。これは、野菜350gを「原料」としているだけであって、栄養素もそのままという訳ではないのです。

このように野菜ジュースは野菜そのものとは違いますから、あくまでも補助的なものと位置づけましょう。野菜ジュースを飲んだからと安心せずに、例えば野菜ジュースは野菜のおかずの小鉢 1 皿程度と考えるなどして、食事に上手にとり入れていくのが賢い利用方法です。そしてジュースを飲むのと本物の野菜を食べるのとでは、咀嚼の面でも当然まったく違います。野菜をよく噛んで食べることにより消化・吸収が良くなりますし、食欲を抑えたり、満腹感が得られる効果もあります。よく噛むほどダイエット効果も高まります。上手に野菜ジュースを利用しましょう。

管理栄養士  A子