日別アーカイブ: 2016年11月18日(金曜日)

インフルエンザ予防について

カテゴリー: 薬剤部 | 投稿日: | 投稿者:

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インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原とする気道感染症ですが、一般のかぜ症候群に比べて重症化しやすいのが特徴です。国内では一般的に11月下旬頃から発生し、1~3月頃に患者数が増加して4月頃に終息します。インフルエンザが大流行する年は、インフルエンザ死亡者数と肺炎死亡者数が増加し、さらに循環器疾患などの慢性基礎疾患による死亡者数も増加することが明らかになっています。特に高齢者は影響を受けやすいので、肺炎による死亡リスクを減少させるために、インフルエンザワクチンだけでなく、肺炎球菌ワクチンも接種しておくことが推奨されています。

過去に、A型インフルエンザは数年~数十年ごとに世界的大流行をしてきました。新しい亜型ウイルスの出現によるもので、1918年の「スペインかぜ(H1N1)」、1957年の「アジアかぜ(H2N2)」、1968年の「香港型(H3N2)」、1977年の「ソ連型(H1N1)」などが知られています。インフルエンザは空気感染するような感染力の強いウイルスではなく、飛沫による接触感染対策を徹底すれば感染の拡大を防ぐことができます。インフルエンザ流行時期には人込みを避け、やむを得ない場合にはマスクを着用すること、外出後のうがいや手洗いを励行することなども予防対策になります。適度な湿度を維持することでウイルスが増殖しやすい環境を避け、感染者が触れてウイルスが付着した可能性のある設備や家具などに触れた後は、口や鼻、食べ物に触れる前に手洗いしてウイルスを除去し、ウイルスを体内に取り込まないことが重要です。インフルエンザウイルスの除菌には通常の消毒用アルコールで充分です。

最大の予防策とされるインフルエンザワクチン接種は、感染や発症そのものを完全には防御できませんが、重症化や合併症の発生を予防する効果が証明されています。高齢者にワクチン接種すると、接種しなかった場合に比べて死亡リスクを5分の1に減らし、入院するリスクを2~3分の1に減少させると期待されます。昨年度からは、A型2種類、B型2種類の亜型ウイルスに対する4価ワクチンに改良されました。ワクチン接種による抗体価の上昇には3週間程度かかります。また、過去にインフルエンザと接触した機会の少ない小児では2回接種することにより抗体価がさらに上昇します。インフルエンザが流行してからワクチン接種しても、充分な抗体価が獲得できていなければ充分な効果が得られません。ワクチン接種を考えている方は、年内にワクチン接種されるのが良いと思います。

また、2004年に「タミフル」の内服予防投与が適応承認されました。インフルエンザ発症者との接触から48時間以内に「タミフル」を服用することで、薬を服用している期間中はインフルエンザウイルスによる感染リスクを減少できますが、「タミフル」による予防効果は薬剤を服用している一時的な期間に限られるので、やはりワクチン接種が推奨されています。また、吸入型インフルエンザ治療薬の「イナビル」も予防適応があり、今年から小児への予防適応が追加されました。また、「イナビル」による予防投与では、インフルエンザ罹患者との接触から48時間以内に、治療と同じ1日吸入(成人では1日に2キットを吸入)でも一定期間の予防効果が得られます。

薬剤師 いっちー