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熊野三山詣で

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 4月末に一家4人で熊野古道と熊野三山詣での旅行に行きました。宿の予約は無理でしたので車中泊をしました。我が家の柴犬(ジュテ6歳雄)も一緒なので正確には5人での車中泊です。白浜から中辺路に沿って進み熊野古道館のある瀧尻王子で熊野古道の石段を(ほんの僅か)歩き、川湯温泉の公衆浴場(入浴料250円)で入浴し、熊野本宮大社近くのバス停横の駐車場で一夜を明かしました。(正直ややきつい一泊でした) 朝になって見ると熊野本宮大社旧社地「大斎原」の大鳥居が眼の前で感動しました。歩いて熊野本宮大社を訪れ八咫烏(日本サッカー協会のシンボルになっている)のお守りを求めました。その後、熊野川に沿って下流の熊野速玉大社、熊野那智大社を巡り熊野三山詣でを終えました。(おまけは、太子町での鯨スタミナ丼と橋杭岩、潮岬です)

どの大社も犬連れOKであり家族の一員のジュテと一緒にお参りできたので心が満たされた旅でした。

麻生大学獣医学部動物応用学科の研究によると、飼い主と犬が目を合わせると双方で尿中オキシトシン濃度が上昇するとのことです。オキシトシンは、9個のアミノ酸からなるペプチド(他の下垂体後葉ホルモンのバゾプレッシンとはアミノ酸2個が異なる)で、視床下部の室傍核と視索上核の神経分泌細胞で合成され、下垂体後葉に到達してそこから末梢血管に放出されます。分娩時の子宮収縮や乳腺平滑筋収縮による乳汁分泌促進などの生殖機能への作用がありますが、 オキシトシンの根本的な生理的役割は、脳内に放出されて、個体認識能力、絆形成へのモチベーションを高めるための報酬系の増強、絆を形成して個体安寧生存のための社会的緩衝作用などの、「絆形成の様々な過程に関与するホルモン」です。(麻布大学 獣医学部動物応用学科 茂木一孝 The Japanese Journal of Animal Psychology,63,1,47~63、2013 )

愛犬が居ることで信頼関係の形成に必要なオキシトシンが増える生活ができるのは幸せなことだと「ジュテ」に感謝しています。目を合わせ見つめることは人同士でも信頼関係の第一歩なのだと思います。

 平成南町クリニック  玉田

IGRAの「3つのワナ」

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蕾が何時しか満開となり今は葉桜の新緑が目に鮮やかな季節です。
蕾と言えば、梢の芽吹きの形(tree-in-bud appearance)と名付けられた胸部CT画像所見があります。結核症や非結核性抗酸菌症にほぼ特有の所見です。(Im JG らの提唱 1995年) 肺結核と言うと「空洞」のイメージを持たれている方が多いかもしれませんが、空洞陰影だけでは結核と診断するのは困難であり、気管支や細葉の小さな病変を表現するtree-in-bud appearanceがあると結核(あるいは非結核性抗酸菌症)の可能性が高いと言えます。確定診断は、結核菌ないし非結核性抗酸菌の証明です。結核患者さんと診断した医師は直ちに保健所に届け出なければなりません。

保健所は登録のあった結核患者さんが感染源になりうると判断した場合、その患者さんから感染を受けた人がいないかどうかを見つけ出すために「接触者健診」を行います。患者さんと接触した(そばに居た)人全員を対象にするのではなく、感染源の人の病状・接触の程度・接触した人の(感染を受けやすいかどうかの)状況を区分して対象の人が決まります。

接触者健診では結核に感染しているかどうかを「インターフェロンγ遊離試験(IGRA:アイグラと発音)で判定します。以前はツベルクリン反応を行っていましたが、現在は原則としてIGRAのみ行います。結核菌が持つESAT-6とCFP10という2種類の蛋白抗原に対して、その人の血液中のT-リンパ球がどの程度のインターフェロンγを作り出すかを測定して結核感染の免疫的な記憶があるかどうかを評価します。(「QuantiFERON TBゴールドプラス」と「T-SPOT」という2種類の検査法があります。)

陽性でも過去の感染か最近の感染かの区別はできない、結核感染既往のある人が全て陽性になる訳ではない(結核感染があっても陰性の場合がある)、また結核感染の無い人でも陽性になることがあるなどの制約があります。「その呼吸器診療、本当に必要ですか?あるのかないのかエビデンス(倉原 優 著)」の第14章によれば、
☑高齢者におけるIGRAの解釈には注意が必要である。アテにならない場合もある。
☑IGRAの「3つのワナ」を知っておく。と総括してあります。
3つのワナとは、高齢者・低栄養・免疫不全のワナ、陽性的中率のワナ、測定誤差のワナです。

陽性者に対しては結核の発病がないかどうかを検査(画像検査と喀痰検査)して、発病があれば活動性結核として治療を開始します。発病していなければ「潜在性結核感染症」としての治療(旧来の化学予防)を開始しますが、結核感染の機会の多い時代を過ごして来た高齢者の方では過去の感染との区別が困難ですので一律に治療対象にはなりません。また、陰性であっても全く放置してよい訳ではありません。状況に応じて経過観察が必要です。

当院は接触者健診の委託医療機関には指定されていませんが、「潜在性結核感染症」としての治療は行っています。

平成南町クリニック 玉田

睡眠薬の見直し

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3月12日に倉敷中央病院看護研修センターで、同院の精神科の土田先生による「不安障害の診断と治療」、同じく精神科の小高先生による「不眠症について」の研修講演がありました。
当院を受診されて不眠を訴えられる方は多くおられ、睡眠薬を処方することが多いです。睡眠薬への依存は30年以上前から指摘されていますが、最近特に注意が喚起されています。小高先生の講演内容を中心に睡眠薬の功罪についてまとめてみます。

睡眠薬の開発
1950年代には、バルビツール酸系薬 非バルビツール酸系薬が使用されました。1960年代にはベンゾジアゼピン系薬が、1980年代には非ベンゾジアゼピン系薬が使われ始めバルビツール酸系薬のような危険性がない安全な睡眠剤として今も多く使われています。これらは何れも GABA 受容体作動薬です。(GABA=ガンマアミノ酪酸 という神経伝達物質の働きを促し、脳の活動を抑えて眠りを誘います。)
その後、GABA 作動薬以外の睡眠薬が開発され、2010年代にメラトニン受容体作動薬が、2014年にオレキシン受容体拮抗薬が使用できるようになりました。

ベンゾジアゼピン系薬物の依存性
ベンゾジアゼピン系薬 や非ベンゾジアゼピン系薬 はいずれもGABA―A受容体複合体にあるベンゾジアゼピン結合部位に結合して薬理作用を発揮するので、これらを合わせて「ベンゾジアゼピン系薬物」と呼びます。
長期(おおよそ6ヶ月以上)に使用していると依存性が生じ、中止できなくなる事が多いとされます。長期使用により以下のような問題が生じます。転倒しやすくなる、呼吸抑制を生じる、せん妄を生じる、認知機能を低下させる(かもしれない)、ストレスなどの問題に対して薬以外の対処が困難になる。また、中止した時に離脱症状が現れます。強い不眠、不安、恐怖、感覚過敏、目の眩しさ、耳鳴、頭痛、筋けいれん などが生じます。
一般的には薬剤依存は過度の使用を続けて生じるのですが、ベンゾジアゼピン系薬物は日々の使用では安全・効果的な常用量でも長期間使用で依存を来すので厄介です。効果が強く、作用時間が短いものほど依存性が高いとされます。

ベンゾジアゼピン系薬物からの脱却
そもそも不眠症とは、夜間不眠の訴えがあり かつ 睡眠不足に関連して日中の精神・身体機能の影響がある状態であり、下記は「不眠症」の症状ではないとされます。  睡眠の質の低下、朝の爽快感がない、熟眠障害。これらを改善するために薬剤を使用する必要はないとされます。
日中の精神・身体機能の影響がある場合には何らかの介入が必要ですが、なるべくベンゾジアゼピン系薬物ではなく、依存性が強くはないとされるメラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬の使用が勧められています。これら以外で眠りを誘う薬としては、漢方薬の抑肝散や鎮静作用のある抗うつ薬が選択できます。
既にベンゾジアゼピン系薬物に依存を生じている場合には、少量ずつ減らして行く、隔日投与などにする、他の睡眠剤を上乗せしてから減薬していく、不眠の概念を正しく理解して薬に頼らない不眠対策を考える、などの方法があります。
実際には依存から脱却するのは困難ですが、長期使用による危険性を考え脱却していく努力が必要です。考え方を変えるのに遅きはありません。言ってきた事と違うことを言うことを恐れてはいけないと思います。

平成南町クリニック  玉田

「はしか」のおさらい

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2月10日に家族3人で京都観光をしました 京都には大学卒業後2年間までの8年間住んでいたのですが、鹿苑寺金閣、二条城へは行ったことがなく今回初めて訪れました。金閣の屋根に雪がうっすら積もって風情がありましたが、やはり慈照寺銀閣の落ち着きの方が好みです。銀閣にも行き、50年前の学生時代に行っていた大銀食堂(当時とは改築されていましたが)で昼食を摂りました。50年前も働いていたと言われる方がおられ懐かしく感じました。(当時は作り置きのおかずがガラスケースに入れてありましたが、今はサンプルのみ置いてありました。)
帰りの新幹線は早めに午後4時27分京都発に乗り帰ってきましたが、後日のニュースで同日午後8時過ぎの下りの新幹線に麻疹に罹った方が乗っていたと報じていました。
今年は麻疹の患者数が2009年を上回るペースで増加しており2月6日 国立感染研究所データでは、近畿圏を中心に計148人(昨年同時期0人、2009年同時期76人)の感染者数です。岡山県ではまだ0人ですがいつ発症者があらわれるか予測困難です。「はしか」はヒトだけが罹る空気感染するウイルス性疾患です。全身状態が非常に悪い免疫患者にはビバビリンという抗ウイルス薬を使用して有効だったとする報告があるのですが、認可されておらず一般的には対症療法のみです。
マスコミでは「はしか」を思わせる症状の方は予め医療機関に電話してから受診するように注意を促していますが、どのような時にそうすれば良いでしょうか。はしかの経過は以下のようになります。
麻疹ウイルスに曝露されてから10~12日後に風邪症状が始まります。
その後口蓋にKoplick斑と呼ばれる、紅斑の中心に白色や灰色の砂粒様斑点のある粘膜疹が出現します。
風邪様症状出現から4日後に再発熱と共に、顔面(前額部、耳介後部・頚部)から始まる、圧迫で消える盛り上がりのない小さい鮮紅色の皮疹が次第に体全体に拡大して行きます。
その後3~4日後に熱が下がり皮疹が次第に消退して行きます。(茶褐色の色素沈着が起こることもあります)
「はしか」かもしれないと考えるのは、次の(1)、(2)、(3)のいずれかの時となります。
(1)麻疹に罹ったと分かっている人と同席、同室になってから10~12日後に風邪様症状が出現した時
(2)風邪様症状出現後、Koplick斑が出現した時
(3) (1)や(2)の後に、顔を中心に発赤疹が出てきた時
他の人へうつしてしまうのは最初の風邪様症状が出る1日前からとされていますので、(1)、(2)、(3)のいずれの時も他の人へ感染させうる状況です。
言い換えると、「はしか」かもしれないと思われる時には空気感染を阻止できる区域のある医療機関を受診するか、その区域のない医療機関の場合は車で行き診察室に入らずに車中に留まっていただく必要があります。そうでなければ、その医療機関内で感染拡大を起こしてしまいます。(当院に空気感染対策区域はありません)
受診された方の「はしか」の診断方法は下記のとおりです。
臨床的診断 上記の(2)、(3) で診断  (1)の時点では他の疾患かもしれません
確定診断(血液検査) 麻疹IgG抗体の上昇 臨床的診断時と皮疹出現後2~4週間後のIgGの差を確認
麻疹IgM抗体の確認(皮疹出現後3~30日後に上昇してくる)
確実な治療方法のない「はしか」を診断する意義はどこにあるのでしょうか?
はしかが除外できれば、その疾患の治療を行う、はしかと診断してその後の感染拡大を防ぐ、はしかの合併症を早めに確認する と考えられます。
麻疹ワクチン接種を受けていても十分な感染防御抗体価がない場合もあるので注意が必要です。

平成南町クリニック  玉田

屠蘇を楽しむ

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新しい年になりました。新年を迎えるにあたって皆様は屠蘇を楽しまれたでしょうか。我が家では毎年少しだけ屠蘇を味わっています。屠蘇は屠蘇散を浸した酒や味醂であり、1100年以上前に中国の蘇明が和唐使として日本に来た時に伝えたとのことです。江戸時代には医者が薬代の返礼に屠蘇散を配る事があったようです。

屠蘇散は数種類の生薬を混ぜたもので、以下の組み合わせが多いです。

防風 セリ科ボウフウの根   発汗・解熱・抗炎症作用

山椒 サンショウの実      健胃作用・抗菌作用

肉桂 肉桂の樹皮(シナモン) 健胃作用 発汗・解熱作用 鎮痙作用

桔梗 キキョウの根       咳・痰を鎮める、鎮痛作用

白朮 キク科オケラ または オオバオケラの根 利尿・健胃・鎮静作用

陳皮 みかんの皮       吐き気止め

健康のための妙薬と言えますが、摂る量は少ないので薬効を期待するのは難しそうです※。

さて生薬と言えばこれらの組み合わせが漢方薬であり、健康に益することが多いのですが時に副作用を起こすことがあります。医薬品であれば薬害被害の救済対象になります。一方、医薬品でないサプリメントや健康食品はそのような救済制度はありません。これらを摂り続けることによる肝障害などを認めた患者さんを時に経験します。

一人は糖尿病の方です。肝障害を認めることはありませんでしたが、ある日の検査で初めて肝障害があり尋ねてみると、血糖値が下がるとの触れ込みで○酵○茶の摂取を開始されていました。中止して間をおいて再検査すると改善していました。知らずに続けていると肝障害が悪化していたと思われます。

もう一人は、スポーツジムで血圧上昇を指摘され来院された初診の方です。初診時の検査で軽度の肝障害がありました。血圧はその後、薬剤なしで安定しましたが、2ヶ月後の再検査で肝障害が悪化していました。尋ねるとサプリメントを2種類開始されていたようです。肝炎ウイルスは陰性であり肝臓専門医を受診して頂きましたが、画像的にも問題なくサプリメントが肝障害の原因だろうということでした。

肝障害以外にも、日本での医薬品漢方薬での低カリウム血症、間質性肺炎・肺線維症や中国製のアリストロキア酸を含む伝統的製剤(関木通・細辛・防已・木香などウマノスズクサ科の植物を原料とする)による腎障害(急性尿細管壊死)などがあります。

自覚症状のない時点でも異常所見が出ていることがあるので、医薬品でない漢方薬・伝統的製剤・サプリメント・健康食品を継続的に摂る場合には注意が必要です。私たち医療者側も患者さんの薬剤歴のみでなくサプリメントなどの摂取歴を忘れずに確認しなければなりません。

平成南町クリニック  玉田

※屠蘇は少量を1~2日しか飲みませんでしょうから、薬害はまず起こらないと思います。

原発性免疫不全症について

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蜂窩織炎(ほうかしきえん)を繰り返す患者さんがおられました。
倉敷平成病院の外来で免疫グロブリンの検査が行われ、選択的IgA欠損症と判明しました。IgAは粘膜表面(喉、気管支、腸)に存在して病原菌やウイルスの侵入を防ぐ役割があります。
原因の多くは遺伝性ですが薬剤の影響もあります。選択的IgA欠損症は、300以上の疾患がある原発性免疫不全症の内の1つです。

以下の10の徴候の1つ以上が当てはまる時は、原発性免疫不全症を疑う必要があります。(難病情報センター資料)
1. 乳児で呼吸器・消化器感染症を繰り返し、体重増加不良や発育不全が見られる。
2. 1年に2回以上肺炎にかかる。
3. 気管支拡張症を発症する。
4. 2回以上、髄膜炎、骨髄炎、敗血症や、皮膚膿瘍、臓器内膿瘍などの深部感染症にかかる。
5. 抗菌薬を服用しても2ヶ月以上感染症が治癒しない。
6. 重症副鼻腔炎を繰り返す。
7. 1年に4回以上、中耳炎にかかる。
8. 1歳以降に、持続性の鵞口瘡(がこうそう)、皮膚真菌症、重度・広範な疣贅(イボ)が見られる。
9. BCGによる重症副反応(骨髄炎など)、単純ヘルペスウイルスによる脳炎、髄膜炎菌による髄膜炎、EBウイルスによる重症血球貪食症候群に罹患したことがある。
10. 家族が乳幼児期に感染症で死亡するなど、原発性免疫不全症候群を疑う家族歴がある。

また、原発性免疫不全症では下記の感染症状が様々な組み合わせで見られます。(難病情報センター資料)
1.主に抗体産生不全によるもの
反復性気道感染症(中耳炎、副鼻腔炎を含む)、 重症細菌感染症(肺炎、髄膜炎、敗血症など)、気管支拡張症、膿皮症、化膿性リンパ節炎、遷延性下痢
2.主に細胞性免疫不全によるもの
遷延性下痢、難治性口腔カンジダ症、ニューモシスチス肺炎、ウイルス感染の遷延・重症化(ことに水痘)

免疫グロブリンにはIgAの他にIgG、IgM、IgD、IgEがありそれぞれに欠損・過剰時の疾患があります。
選択的IgGサブクラス欠損症ではIgG1、2、3、4の1つないし複数のサブクラスが欠損・低下します。
IgG2が低下すると莢膜を持つ細菌(肺炎球菌・肺炎桿菌・インフルエンザ菌・髄膜炎菌)の感染(中耳炎など)を繰り返しやすくなります。
選択的IgM欠損症では自己免疫疾患を合併しやすいと言われています。
IgD、IgEでは多すぎる時に発症する疾患があります。

感染症を繰り返す時には、後天性免疫症候群(AIDS)や薬剤、悪性腫瘍、脾臓機能低下、糖尿病、肝硬変などの続発性の免疫不全以外にも上記の原発性免疫不全症を考えておく必要があります。
意外と多いのかもしれませんが、鑑別診断は容易ではありません。疑いを持った時は、感染症科や血液内科の専門の先生にお願いすることになります。

平成南町クリニック 玉田

お知らせ
来年1月から平成南町クリニックの外来診療を一部変更いたします。
詳しくは倉敷平成病院HP案内欄の関連施設「平成南町クリニック」をご参照ください。

尿の泡立ちは病気のサイン?

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気温が下がって来ると、年のせいもありトイレに行く回数がやや増えて来ます。普段は気にならなくても、時々妙に泡立つので心配になることもあります。おそらくどなたでも同じような経験がおありだと思います。
尿はなぜ泡立つのでしょうか? 泡立つ尿は何かの病気のサインでしょうか。
結論から言うと病気のサインであればそうでない事もあるとなります。
界面活性物質(石鹸も界面活性物質です)が含まれると、出来た泡が壊れにくくなり泡立ちます。尿に正常に微量含まれるウロビリノーゲンは界面活性物質です。濃縮尿だとウロビリノーゲン濃度が高くなり泡立ちやすくなります。また尿が酸性に傾いても尿の表面張力が低下し泡立ちやすくなります。また尿に含まれる蛋白質も界面活性作用があり尿蛋白が多いと泡立ちます。特別な疾患がなくてもこのようになることはあるので、一時的な尿の泡立ちは左程気にすることはありません。
しかし、いつまでも続く時やきめ細かいクリーミーな泡であるなら病気を疑っての検査が必要になります。1回の尿検査だけでは異常を見落とすかもしれないので、時刻や日にちを変えて複数回検査をして確かめるのが良いと思います。
通常は出現しないビリルビン(水溶性の間接ビリルビン)が尿に含まれると尿は褐色調が強く泡立ちます。(ビリルビンも界面活性物質です) ビリルビンが多くなる疾患を考える必要があります。
尿蛋白が多く出る疾患には糸球体腎炎、糖尿病腎症、膠原病腎障害、ネフローゼ症候群などがあります。
血糖値が高く尿糖が出現すると尿の粘稠度が高くなり泡立ちやすくなります。食後の尿だけ泡立つ時には食後高血糖が疑われます。
尿の泡立ちが気になる方は尿検査を受けみられてはどうでしょうか。

平成南町クリニック  玉田

下記の書物やネット情報を参考にしました。
異常値の読み方が身につく本(村上純子著 じほう株式会社)
徳島県医師会 健康相談 2016/12/21 鴨島川島クリニック 川原和彦先生
医師水野のアメブロ 2016/8/27
東邦大学医療センター 大橋病院 腎臓内科 尿に関するQ&A

「血液検査だけでは診断できない」不明熱  

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帝京大学ちば総合医療センター第三内科(血液・リウマチ)講師の萩野 昇先生の教育講演が10月3日にありました。演題名は「不明熱・不明炎症へのアプローチ~リウマチ科医の視点から~」です。

不明熱とは、大雑把に言うと原因がなかなか判らない発熱と言うことです(最終的には原因が明らかになる場合が殆どなのですが)。以下の内容が記憶に残りました。

「血液検査だけでは診断できない」不明熱には次のような疾患があるとのことです。
血管炎(結節性多発動脈炎、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎)、リウマチ性多発筋痛症、成人Still病、再発性多発軟骨炎、ベーチェット病、炎症性腸疾患、サルコイドーシス、周期性発熱症候群、IgG4関連疾患。

また発熱患者さんの炎症反応は陽性であることが多いのですが、「炎症反応陰性」の不明熱もあり、(先生の)個人的リストは以下のとおりです。
未確認の自己炎症症候群、ベーチェット病(の一部)、Q熱、ライム病、ある種の結合織病(エーレス-ダンロス症候群の一部)。

さらに不明熱の原因疾患に、リンパ腫と気付けないリンパ腫があることを知りました。
そのリンパ腫の特徴は、
・リンパ節腫脹がない
・リンパ節の検査をしても腫瘍細胞が認められない
・リンパ節腫脹が自然経過や治療修飾で退縮してしまう
であり、肝臓や脾臓の組織検査で初めて診断がつくそうです。

発熱患者さんの発熱の原因を毎回「正しく」診断できているかと言うと、自信がありません。症状の経過 身体所見 血液・尿検査 画像検査などで原因を絞り込んでいくのですが、上記のような疾患を想起できなければ真の原因を見逃す可能性があります。たとえ抗生物質を使って熱が下がったとしても、抗生物質が効果のある細菌性感染症だとは言い切れません。

講演会で挙げられた不明熱の原因疾患は経験することが稀な疾患が多いので、疾患の全体像を常に繰り返し学習しておく必要があります。

平成南町クリニック  玉田


一般外来で気付くためのヒント
(参考 萩野 昇著 ロジックで進めるリウマチ・膠原病診療、岩田健太郎編集 診断のゲシュタルトとデギュスタシオン1、2  など)
○結節性多発動脈炎=発熱+中型血管の虚血症状(四肢末端疼痛・睾丸痛・筋肉痛・間欠的で激しい腹痛)
○高安動脈炎=若い女性で持続する微熱・倦怠感+頚部・鎖骨下血管雑音、
○巨細胞性動脈炎=高齢者初発頭痛(頭皮痛・側頭動脈圧痛)+顎跛行・一過性黒内障
○リウマチ性多発筋痛症=60歳以降の急性~亜急性の全身の痛み(筋肉痛ではなく滑液包炎の痛み)
○成人Still病=若い女性でかなりの高熱でも割合元気 有熱時のサーモンピンクの痒くない皮疹
○再発多発軟骨炎=軟骨(鼻・耳介・喉頭・気管など)の変化に伴う所見や症状がある
○ベーチェット病=再発する口腔アフタ性潰瘍・外陰部潰瘍・膿胞性丘疹(針反応)・眼の症状
○炎症性腸疾患=クローン病:下痢・腹痛+肛門潰瘍・周囲膿瘍、潰瘍性大腸炎:下痢血便+アフタ性口内炎
○サルコイドーシス=眼のかすみ眩しさ・皮膚紅斑・不整脈・神経系異常など(診断きっかけは胸部写真異常)
○周期性発熱症候群=半日~数週間続く発熱が6~12ヶ月の間に3回以上繰り返し、無熱時に無症状
○IgG4関連疾患=唾液腺、肺、膵臓などに病変がある
○自己炎症症候群=周期的な発熱を繰り返す 他の疾患では説明できない症状・所見
○Q熱=1ヶ月以内に動物と接触歴のある人が肺炎・肝炎を発症
○ライム病=マダニに咬まれた、咬まれるような環境の人が全身の症状を来す
○ある種の結合織病(エーラス-ダンロス症候群の一部)=過伸展できる脆弱な皮膚で血腫生じ易い

脈拍・心拍

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当院新患の高齢者の方で、動悸は自覚しないのに脈が130の人がおられました。脈拍は整で心電図ではP波が不明で狭いQRS波でしたが、心拍数130でした。RR間隔は一定であり、心房粗動の2対1伝導を考えました。頻拍を改善させる薬剤の注射をして経過をみるべきなのですが、当院の医療体制では実施困難ですので病院の循環器科の先生に御紹介しました。頻拍抑制薬の注射で頻拍は改善し、心電図では心房細動が出現し抗凝固薬が開始されました。心房細動は左房内の血栓を生じ易く脳梗塞の原因になりますので、危険性を評価して有益性があれば抗凝固薬を開始することが多いです。以前に、軽度の動悸を訴えて受診された中年男性で不整な頻脈があり心電図で心房細動が確定できた方がおられました。カテーテルアブレーション治療の適応があるので専門医に紹介しましたところ、精査にて冠動脈疾患が判明しました。

一方、脈の少ない徐脈も心配な不整脈です。右胸痛で受診された若い方で脈が40の人がおられました。胸痛の原因は右自然気胸でしたが、胸痛の鑑別診断のために記録した心電図でP波とQRS波が全く連動していない波形があり房室ブロックの可能性がありました。しかし房室ブロックを思わせる症状がないので何回か心電図をとり直したところ、徐脈ですが正常な洞調律の波形も見られました。日常的に激しいスポーツをしている方で、いわゆるスポーツ心臓と思われました。QRSは狭いので房室整合部性調律であり、その成因は普段の徐脈にあると考えられました。脈が40のままであれば激しい運動には耐えられませんので、運動時には脈拍は増えていると思われます。
脈拍異常の有無は触診をすれば普通はすぐ判りますが、その異常が何であるかはやはり心電図ということになります。しかし、診察だけでもある程度推定することは可能です。規則性のない不整脈は殆どが心房細動です。また、規則性があり脈拍欠損を生じている時には、心音を聴診しながら脈をみると1拍欠けている時に心音がやや小さく早めに聴こえれば大抵は上室性期外収縮です。心室性期外収縮の時は早めの心音がかなり小さく聴こえます。頻脈の時は脈の間隔の変化が感じにくくなるので診察だけでは原因追究が困難です。

頻脈でないけれども心音で心拍数を数えると頻拍という時もあります。脈拍の異常を診察で判断するには、脈の触診と心音聴診の両方を同時に行うことが有用です。
診察時には努めて脈拍と心音を同時に診るようにしています。

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レムナント様リポ蛋白コレステロール RLP―C ( Remnant-like particle cholesterol )

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葡萄、西瓜、桃、梨、無花果、もう少しすると柿などおいしい果物が出回ります。果物には果糖、ブドウ糖、ショ糖などの糖質が含まれます、(果糖>ブドウ糖>ショ糖) 果糖そのものは血糖値を殆ど上昇させませんが下記の性質があるので、より甘く品種改良された果物や果糖・ブドウ糖液を使用した飲み物などは摂り過ぎると動脈硬化の元凶となり得ます。
果糖は、蛋白質と糖が結びついて作りだされる終末糖化産物を極めて生じ易く、肝臓での脂肪合成を誘導しやすい糖質であり、多く摂ると血中の中性脂肪濃度が上昇し肥満の原因となります。おいしくて食べると幸せ感のある果物ですが、肥満・動脈硬化・高脂血症・糖尿病・高血圧の方は食べる量に注意しましょう。
さて、本年5月から脂質代謝異常の評価項目としてRLP-Cが倉敷平成病院検査室で測定できるようになりました。コレステロールが動脈硬化に関連することは以前から知られていますが、種々のコレステロールの中で真の原因物質が何であるかはまだ確定されていません。LDLコレステロールのなかで小粒子のLDLコレステロールは酸化しやすく、酸化LDLコレステロール値が動脈硬化と密接に関連するとされてきました。しかし原因ではなくて動脈硬化の結果という見方もあります。
近年、リポ蛋白(カイロミクロンや種々のコレステロールの総称)の中でカイロミクロンとVLDLコレステロールがリポ蛋白リパーゼという酵素で分解されて残った代謝産物の「レムナントリポ蛋白」が動脈硬化の原因と考えられるという研究結果が発表されています。但しこの代謝産物は速やかに血中から消失するので測定が困難であり、その代わりに「レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)」を測定して評価します。
血液中の脂質は食後の時間と共に変化するものと変化しにくいものがありますが、このレムナント様リポ蛋白コレステロールは健常者では食後増加は少ないが、虚血性心疾患患者や糖尿病患者では食後増加しなかなか低下しないようです。(食後血糖値に似ています)
基準値は空腹時で7.5mg/dL以下です。糖尿病や冠動脈疾患の既往患者では5.2mg/dL以上は高リスクとされています。内臓脂肪蓄積群やメタボリック症候群ではLDLコレステロール値が基準内であってもRLP-Cが高値になっていたとの発表があります。「高レムナント血症」という概念も提唱されています。
レナント様リポ蛋白コレステロール値はカイロミクロンやVLDLコレステロールの代謝産物なので、これらを減らすことによって低下すると思われますが、これらは中性脂肪を多く含んでいるリポ蛋白です。利用されなかったブドウ糖がインスリン作用により肝臓に取り込まれ、また果糖はそのまま肝臓内で中性脂肪に変えられて脂肪組織に蓄積されていきます。従って過多の糖質を摂らないようにすれば、中性脂肪は減ってムナント様リポ蛋白コレステロール値が低下すると考えられます。

平成南町クリニック  玉田 電話086-434-1122