大声出さなくても判ります

聴力低下のある患者さんの診察時にはどうしても大声で話すことになります。しかし大きな声を出そうとすると、ついつい強い口調になってしまいがちです。悪くすると怒った感じになってしまいます。そうなるのを避けるために聞こえが良い側の耳元で話かけますが、やはり大きな声になり、また目線が合わせられませんので顔の表情が読み取れず、理解できているかどうかがわかりません。補聴器をつけておられても聞こえていない場合があります。

患者さんはよく聞こえていないので生返事をしてしまうことが多く、 また同伴の家族がおられる時には、「聞いといてや」と無関心な場面が多くみられます。今の状況下ではマスクをしていますが、いずれにしても唾液を飛ばす危険もあり、大声を出したり耳元で話しかけることは躊躇われます。
 そこで、連休明けから「拡声器」を使用しています。(写真左下にある黒い器具がそうです。ネット注文送料込みで3980円) ハンズフリーで普通の大きさ・普通の口調で話しても「聞こえています。」と言っていただけます。
それでも聴こえにくい時には装置を手に持って耳元に近づけます。こうすると目線をそらさずに、内容を伝えることができ、患者さんは会話に無関心でなくなり、聞こえにくかった時に比べ顔の表情が良いのを実感します。当方にとりましても大声出さなくてもよいので穏やかに話せますし、疲れません。
SARS-Cov-2感染症(新型コロナウイルス感染症)への対応がまだ必要ですが、その一環としての「拡声器」により思わぬ効果を得ることができました。

平成南町クリニック 玉田

新型コロナウイルス感染症への、私の「感染予防の考え方」

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、発症2~3日前から発症直後が感染力のピークであるとされています。(ブログ 感染症診療の原則 青木 眞 2020年4月16日)症状がないままの感染者もおられます。
症状の無い段階の人からウイルスを受け取るかもしれないと言うことは、私たちは全ての人からウイルスを受け取る可能性があり、また自らが知らぬ間に他の人にウイルスを渡してしまっているかもしれない訳です。
今は、「自分を含めて全ての人が感染しているかもしれない」と想定して行動する必要があります。感染予防にできることをまとめてみました。
(1) 他の人へウイルスを渡さない
咳エチケットを守る(自分から他の人への直接飛沫を減らす為に)
マスクを着用する(自分から他の人への直接飛沫を減らす為に)
受付カウンターの透明仕切り設置(当院では4月20日から開始します)
咳・発熱がある場合は受診前に連絡し、車で来院して待機
待合では他の人と距離を置いて坐っておく
エアゾルを発生させる処置(鼻咽頭などからの検体採取やネブライザー噴霧や鼻をかむなど)は行わない
聴診器や体温計は毎回アルコール消毒する
診察前に手洗いをする(洗剤洗浄を原則とする 間に合わない時はアルコール消毒)
(2)環境へウイルスを広げない
建物に入る直前に手洗いをする(手洗いできなければアルコール消毒をする)
自分の眼・鼻・口を手で触ったら、その手で周囲の物を触らない(非常に困難なので「触らない」努力を)
床に直に持ち物を置かず物置籠に置く(物置籠に紙シーツを置き取り替える)
エアゾルを発生させる処置(鼻咽頭などからの検体採取やネブライザー噴霧や鼻をかむなど)は行わない
どうしても必要で鼻をかんだ時は、ティッシュペーパーをすぐに決められたゴミ箱へ入れる
定期的に診察室・待合室の換気を行う
(3)他の人からウイルスを受け取らない
眼鏡(伊達眼鏡やゴーグル)をかけておく
マスクを着用する(吸入するウイルス量を少しでも減らす為に)
受付カウンターの透明仕切り設置(少しでも直接飛沫吸入を減らす為に)
待合では他の人と距離を置いて坐っておく
口腔内診察時にはフェイスシールドマスクを装着する
エアゾルを発生させる処置(鼻咽頭などからの検体採取やネブライザー噴霧など)を行わない
(4)環境からウイルスを受け取らない
床に落ちた持ち物は表面を拭き取るかポリフィルムなどの耐水袋に入れる
自分の眼・鼻・口を触らない。触る時には直前に手洗い※をする
※「手洗い」についての私の考え方
目的は、手(特に指)についたウイルス量を減らすことです。付着ウイルス量を0にする必要はなく100分の1に減らせば自分への感染防御になり、そのためには水洗いのみや濡れタオルで拭うだけでも良いとされています。(京大ウイルス・再生研 宮沢孝幸 氏) 皮膚の傷からもウイルスを受け取る事があると考えると、アルコール消毒や洗剤での手指洗浄を頻回に行って皮膚の荒れ(即ち小さな傷)を作るよりは、こまめに水洗いをすることの方が目的に適っていると考えます。

※※初診(最終受診後3ヶ月以上経過を含む)の方以外では電話再診による処方ができる場合があります。電話でお問い合わせ下さい。当院から連絡先へ電話して確認させて頂きます。

平成南町クリニック 玉田

その皮膚移植は本当に必須ですか?

本年3月11日のブログ「新しい創傷治療」 (なついキズとやけどのクリニック院長 夏井 睦 主宰)に、手背の全層皮膚欠損の症例が紹介されています。
患者は2歳1ヶ月女児。小児科での○年1月5日に左手背からの点滴が漏れて壊死を生じ、1月6日に同院の形成外科を紹介された。石鹸でよく洗いゲーベンクリーム塗布となった。その後、手背全層皮膚欠損となり1月24日に皮膚移植をしないと治らないと説明を受けた。
女児は○年1月25日に「なついキズとやけどのクリニック」を受診。白色壊死を伴う手背全層皮膚欠損あり健常皮膚との境界部に浮腫状肥厚を認めていた。夏井医師は、湿潤療法※を開始し、受診から35日後に上皮化が終了し、平坦な健常皮膚が再生した。予想を上回る速さで治癒しています。

当院でも、5年前に他院小児科での点滴漏れによる右手背の全層皮膚欠損の9ヶ月女児の経験があります。同院形成外科で、点滴漏れの壊死に対しフィブラストスプレーとアズノール軟膏の塗布、ガーゼ交換の治療が行われていました。しかし壊死は進行し手背の半分弱の大きさの全層皮膚欠損となり皮膚移植が必要と言われています。点滴漏れから11日後の1月5日に当院を受診されました。湿潤療法※で経過をみましたが壊死組織は自己融解し肉芽の増生が得られ、その後欠損創の周辺から健常皮膚が再生し始め、当院初診68日後にはほぼ上皮化しました。(腸疾患のため静脈栄養のみで経過していた生後7ヶ月の女児です。)
前記の「なついキズとやけどのクリニック」での足底全層皮膚欠損の患者さんの経過紹介もあります。

62歳女性で他院にて悪性黒色腫疑いとなり、左足底の踵部分の皮膚・皮下脂肪拡大切除を行うも、悪性所見なしだった方です。全層欠損皮膚部へ、石鹸洗浄とゲンタシン軟膏塗布、ガーゼ被覆を行い、左踵への荷重を禁止されていました。改善しないため15日後に皮膚移植(右足土踏まず全層皮膚→左踵欠損部位へ全層植皮、右大腿部分層皮膚→右土踏まずの皮膚切除部へ植皮)を受けるよう説明されています。
その4日後に「なついキズとやけどのクリニック」を受診されています。左踵部の5.5cm×4.5cmの全層皮膚欠損を認めていました。湿潤療法※が開始されています。同部への荷重は禁止せず痛みがなければ歩行を許可しています。欠損創の周辺から健常皮膚が延びてきて、70日後にはごく一部を残してほぼ上皮化しています。荷重に耐え普通に歩行して職場復帰されています。
夏井医師は、皮膚移植を行っていたら成功しても移植された皮膚は「土踏まず部の皮膚のまま」なのでグニャグニャして荷重に耐えられず知覚もなく、荷重すると皮膚潰瘍になる運命を辿ったであろうと述べています。
(以下は夏井医師の解説です) 湿潤療法で再生すると皮膚支帯も再生するので荷重に耐えられる。
足底や手掌の皮膚には、皮膚支帯という手掌・足底の真皮層から脂肪組織を貫いて深部に垂直方向へ走る多数の線維索があり荷重に耐えられるようになっている。この皮膚支帯が発達するには機械的受容器(パチニ小体やルフィニ小体)からの圧情報が必要である。全層皮膚欠損部にはパチニ小体やルフィニ小体がなく、移植皮膚には(機能する)パチニ小体やルフィニ小体がないので、生着した移植皮膚には皮膚支帯が形成されず、荷重に耐えらず日常生活に支障をきたす。
指尖部も同様です。同上のブログには、全層皮膚欠損部の指尖へ移植された鼠径部皮膚は生着してもブヨブヨで知覚もなく指先としての機能がなく日常生活に支障をきたしていた男性症例の紹介もあります。その症例では植皮された皮膚を切除して再度皮膚欠損創とし、その創を湿潤療法で皮膚再生させて知覚のある正常に近い指先皮膚を得ています。
皮膚全層欠損創は、3度熱傷、外傷・手術切除後、壊死などの原因で生じます。時間はかかりますが、湿潤療法を行うと健常な皮膚の再生が得られることが殆どです。もし「皮膚移植が必要」という説明を受けても、そのまま鵜呑みにしないようにしましょう。

平成南町クリニック  玉田

 

新型コロナウイルス感染症の入院患者対応について ブログ「楽園はこちら側」より

神戸大学感染症内科 岩田健太郎教授が、新型コロナウイルス感染症に対峙するための有益な「私見」をブログ「楽園はこちら側」で述べておられるので、全文を掲載します。

平成南町クリニック 玉田

 

新型コロナウイルス感染症の入院患者対応について  (2020年3月18日) 岩田健太郎

各地で新型コロナウイルス感染症の入院患者が増えてきて、いろいろな問い合わせを受けています。よくある質問についてここで私見を述べます。

まず、いちばん大事なことから。新型コロナ診療でいちばん大事なのは、「医療機関のスタッフが感染しない」ことです。ここは鉄則です。もちろん、病気にならないという倫理的、社会正義的な意味もありますが、それ以上にスタッフに感染者が出ると、周辺の「濃厚接触者」は全員健康監視対象者となり、マンパワーが激減するのです。つまり、戦略的に医療者の感染は巨大なダメージなのです。だから、院内感染対策は万全を期し、院内での感染の広がりは「戦略的に」許容してはいけません。クルーズ船の失敗を繰り返してはいけないのです。大事なのは頑張ることではありません。結果を出すことです。我々はプロなのですから。

1.ゾーニングについて

患者が一人であれば個室管理で「いわゆる」ゾーニングは不要です。が、患者が増えて「個室」が枯渇するようになると院内ゾーニングが必要になります。  ゾーニングは感染管理のプロでも実は案外やったことがない、という方も多いのではないでしょうか。先に述べたように、結核にしても麻疹にしても病院では陰圧個室管理でやるので、「ゾーン」を作る必要がないからです。  むしろ、病院の外での感染対策の知識と経験が必要になります。途上国医療やエボラなどの進行再興感染症対策、災害後の避難所の感染対策、リハビリ病院や透析施設、保育園、療養施設、在宅などの様々な感染対策のセッティングで感染対策をしていると、ゾーニングのなんたるかは体得できるでしょう。  ゾーニングに必要なのはリソースではありません。大事なのは概念理解です。そしてゾーニングができないセッティングはありません。テントでも、野外でも、クルーズ船でも(笑)、ゾーニングはちゃんとできます。できないのは、概念理解をせずに形式だけでゾーンを作ろうとしたときです。  簡単に言えば、ゾーニングは レッドゾーンはPPEを着けるべき場所 グリーンゾーンはPPEを着けてはいけない場所  です。これだけです。そして両者の間に境界線を引きます。両者以外の「グレーゾーン」はPPEを脱ぐ場所「だけ」です。  例えば、無症状、軽症患者がどんどん集まってくると、個室管理が難しくなります。その場合、病棟の一角すべてを「レッドゾーン」に指定できます。グリーンのナースステーションとの境界は廊下の角に斜めに線を引いてもいいでしょう。その向こうに行くときは必ずPPEを着ける。手前では絶対にPPEは着ない。患者搬送時の一時的な問題は生じる可能性はありますが、飛沫感染のコロナではそれも工夫すれば大した問題にはなりません。

2.医療とPPEについて(一般病棟)

現在は危機時で、日常診療の「常識」はまず捨てる必要があります。  そもそも、新型コロナの入院患者のほとんどは、軽症患者で、よって本来は「外来」患者であり、入院は必要ありません。つまり、入院モードで診療・看護を行う必然性がないということです。  よって、通常ならば行う定期的なバイタルチェックや回診はすべて廃してもかまいません。検温は患者自身にお願いし、熱が高い、息が苦しいなどあればナースコールか携帯で呼んでもらいます。ホテルのように、「呼ばれたときだけ対応する」でいいのです。患者は外来モードの患者なのだから。  PPEの着脱云々以前に「PPEを着けなくても良い」つまりレッドゾーンに入らないのが一番堅牢な感染対策です。医療者に感染者を絶対に出さない、が大事なので。健康監視者で定期的に血圧を測る必要がある人はほぼ皆無でしょう。数週間、血圧コントロールが完璧でなくても構わないし、そもそも多くの外来患者は完璧ではないでしょう。採血も不要、画像も不要です。本来なら退院時のPCRだってやらないほうがよいのですが、、、医療者の感染リスクを軽く考えすぎですよね、国は。  PPEをどうしても着けなければいけない場合は、レッドゾーンに入る回数を減らし、入った一回で必要な仕事を全部やってしまいましょう。「通常モード」ですと、PPEは着脱を繰り返します。耐性菌対策などで。しかし、現在は非常時で、そもそもガウンなどが枯渇してきています。そして、PPEのリスクは実は脱ぐときにあるのです。PPEについているウイルスを触ってしまうからです。だから、PPEを脱ぐ回数が増えると感染リスクが増すのです。  レッドの中の患者はすべてコロナ感染者なので、Aという患者を見てから同じPPEでBという患者を見ても構いません。PPEの着脱回数を最小限にするのが大事なので。そうしてレッドでやるべきことをすべてやり、グリーンに戻るときにPPEを脱ぎます。このプロセスは最小限にすべきです。電話でできる対応はすべて電話でやりましょう。「現場に行く必要」はありません。  聴診器を使うのは止めましょう。聴診器を使わなくても、胸の動きや呼吸数、SpO2でだいたいのことは分かります。すべてのPPEには弱点があり、弱点を理解するのが大事です。多くのコロナ用PPEの弱点は首とか耳周りです。ここを汚染する最大のリスクは聴診器です。ここでも「日常診療の常識」を捨てるのが大事です。ちなみに、エボラ患者を診察するときは絶対に聴診器は使いませんでした。死亡率50%の超重症患者でもそういうことはできるのです。  レッドゾーンを広くすれば、その中を自由に患者に動いてもらっていいのです。トイレに行って、シャワーを浴びて、ストレスができるだけ少なくなるよう配慮してさしあげましょう。「入院」というよりは「健康監視」なのですから。

3.ICU患者

上と同じ理由で聴診器を使うのはやめましょう。挿管時もカプノメーターや画像でチェックできますから。お腹の音が聞こえないとか、色々あるとは思いますが、ICU患者は聴診器なしでもそれなりに管理できますし、特に「呼吸不全」が前面にでる特殊なコロナ感染者ではそうでしょう。繰り返しますが、PPEの弱点理解は大事で、それは首と耳周りです。  患者が増えたらゾーニングをどうするかよく考えます。個室でなくても「すべてコロナ」という体制にすればゾーニングで対応できます。が、エアロゾルが発生しやすいICUではゾーニングだけでは不十分です。よって、一般病棟と異なり、オープンな向かいのナースステーションをグリーンにするのは困難かもしれません。そういう場合は別室のカンファルームとかをナースステーション化するなど「非日常」体制にする必要も生じます。  上と同じ理由で異なる複数の患者をケアするときにPPEの着脱は不要です。いや、しないほうがベターです。コロナ感染者の多くは呼吸不全こそ著明ですが、他のICU患者と異なり、繰り返すデブリや血圧管理などは不要な患者が多いです。看護の省力化、治療の省力化は大事で、普段のICU患者に比べればベッドサイドに行かなくてよい場合も増えるでしょう。○対○看護体制とかもそういう視点で見直し、マンパワーの効率化も図りましょう。

4.サステイナビリティ(医療の維持)

この問題は長期化します、おそらく。よって、短距離ダッシュではなく、長距離走で走り抜く姿勢が大事です。  マンパワーの維持は難しいです。特に今は「風邪を引いたら絶対に休む」ことが医療者に求められているからです。子供も学校行けなかったりするし。よって、少ない人数でも維持できる医療ケア体制が必要です。マンパワーの充足も全国的問題であるコロナでは困難で、足し算ではなく引き算の発想が必要です。  普段の医療で省略できることはすべて省略しましょう。今あるべきは「体制の維持」であり、完全な医療の提供ではないのですから。完全にやって、途中で倒れてしまう、が最悪のシナリオです。70点、60点程度で良いので、ずっと続けられることをやりましょう。  疲れると判断ミスが起きます。ミスをすると、そのリカバリーのために膨大な業務が増えます。負の連鎖です。これを回避するため、睡眠、栄養、休養、運動はしっかりと。  カンファレンス、勉強会、会議(特に「連絡」会議)は感染リスクなのでできるだけなくしましょう。なくしても実は困らない会議のなんと多いことか。ここが最大の時間の作り場所です。会議をするときは窓を開けて、椅子と椅子の間を開けて、できるだけ短時間でやりましょう。議論がグダグダになりそうなときは議長が上手に棚上げして、もう一度頭を冷やしてメールか何かで議論継続しましょう。   他にご質問などあれば、ぜひどうぞ。

平成南町クリニック 玉田 二郎

平成南町クリニックでのインフルエンザ迅速検査中止のお知らせ

インフルエンザ迅速検査行う際において、新型コロナウイルス感染症の可能性もある現時点では二次感染のリスクがあるため、当院では当面の間インフルエンザ迅速検査を中止し、臨床診断にて必要時の治療薬処方をいたします。
これは、3月11日の日本医師会からの通達による対応となります。

患者の皆様には ご理解いただけますようお願い致します。

☎086-434-1122

平成南町クリニック

平成南町クリニックでの新型コロナウイルスの対応について

新型コロナウイルスの検査について
新型コロナウイルス感染の有無を調べる検査が保険適応になりましたが、
当院は検査体制の整った感染症指定医療機関では無いため、検査は実施していません。
検査を希望される方は帰国者・接触者相談センター(倉敷市保健所 086-434-9810)にご相談下さい。

平成南町クリニックへの受診をお考えの方へ
息切れ・咳や痰などの呼吸器症状、発熱・全身のだるさのある方で、以下に該当される方は、まず帰国者・接触者相談センターに相談されますようお願い致します。

○発症の14日前から受診時までに、多数の人が集まる換気不充分な場所※に行ったことがある方
※パーティー・宴会など、ライブコンサート・展示会・セミナー・スポーツジム・カラオケルーム・パチンコなど、
※新型コロナウイルス感染の事例が報告された列車やバス・飛行機などの交通機関の利用
○発症の14日前から受診時までに、ご自分と同じような症状のある人が周りにいた方

上記の場合の方では、当院に来院されましても帰国者・接触者外来のある医療機関を受診し直して頂くことがありますのでご了承ください。

咳や痰などの呼吸器症状、発熱・全身のだるさのある方が当院を受診される時には、駐車場の車内でお待ち頂き、到着を電話(平成南町クリニック  ☎086-434-1122)でお知らせ下さい。

肺炎疑いの時は、帰国者・接触者外来のある医療機関にご紹介することがありますことをご了承ください。

上記対応は、新型コロナ感染症の流行が終息するか、指定感染症から解除されるまで行います。

平成南町クリニック

もはや市中感染レベル?  個人で身を守ろう

新型コロナウイルス感染に関わる報道や医師会からの対応情報は数日以内に変わっていきます。
この文章を書いている2月18日の段階では、2月17日に厚生労働省が公表した「相談・受診の目安」の意味する所を考えれば、新型コロナウイルスの蔓延は市中感染レベルになってきている、即ちインフルエンザウイルス感染レベルになったと考えておいた方が良いと思われます。感染源を特定して封じ込めることはもはや不可能だと考えられます。
感染しても発症しないためには免疫力の低下を防ぐ必要がありますが、感染を防ぐために、なるべくウイルスに曝露されないように身を守りましょう。
2003年に流行したSARSウイルスと同じコロナウイルスなので、その時の対策が役立ちます。

コロナウイルスの弱点は、空気に晒されると失活しやすい  アルコールや界面活性剤で失活しやすい 紫外線で失活しやすい などです。そこで新型コロナウイルスに曝露されにくくするには、
① 環境中のウイルスを減らす
窓を開けて換気する(付着したウイルスはなかなか失活しませんが、空中1m移動中に失活するようです)
室内に日光を入れる
家庭台所用洗剤(食器・野菜洗剤)による環境拭き取り=具体的には、ぬるま湯1リットルに対し洗剤5~10mL入れて室内環境を拭き取る(火災や皮膚あれの原因になりやすいアルコールを使用する必要はない )
もしも自身がウイルスを保持しているかもしれないと想定してマスクで飛散を防止する。

② 環境中のウイルスを減らし自分への曝露も減らす。
自分の眼・鼻・口を触る前に、石鹸で手指をよく洗う(逆に言えば、洗っていない手指で顔を触らない)
便からの感染事例もあるようですので、トイレの後には顔を触る積りがなくても石鹸で手洗いをする。

③ マスクをして直接飛沫の吸入を減らす (ウイルスを含む浮遊エアゾルの吸入を防ぐことはできませんが)

アメリカのCDC(アメリカ疾病対策センター)が新型コロナウイルス検査キットを全米に配布して、インフルエンザウイルス検査を受けて陰性だった人に新型コロナウイルス検査を行う計画をしているようです。(既にアメリカ全土に新型コロナウイルスは拡散しているのではとの噂もあります)

新型コロナウイルス検査キットがあれば、肺炎の鑑別診断の有力な手段となるので日本でも早く使用できるようになって欲しいものです。(迅速検査キットの感度・特異度は通常90%程度ですので100%確実な検査方法ではないと考えられますが) 現段階では、鑑別できる肺炎の原因が不明の時に新型コロナウイルスのPCR検査を保健所に依頼するとなっています。
しかし多数ある肺炎の原因を全て確定できるはずはなく、短時間で診断できるのは、頻度の高い原因のうちの肺炎球菌肺炎 マイコプラズマ肺炎 レジオネラ肺炎の一部、結核性肺炎 インフルエンザ肺炎 に限られますから、これらが否定的な時に「新型コロナウイルス肺炎」を想定してPCR検査を依頼するという事になります。
新型コロナウイルス肺炎に対しては抗HIV薬や一部の抗インフルエンザ薬が効果的であった事例の報告がありますから、早く確定診断することはその方への治療戦略として重要なのです。一方、肺炎を発症していない軽症患者さんに早期に新型コロナウイルス感染の確定診断を行ってもその方自身へのメリットはないと思われます。完全隔離が可能であれば隔離対象者にするという他人にとってのメリットはありますが。
繰り返し言います 洗っていない手指で顔を触らないようにしましょう。
平成南町クリニック 玉田

追記
新型コロナウイルスに関するQ&A(医療機関・検査機関の方向け) 令和2年2月18日時点版
の内容から疑問点を洗い出してみました。
疑問1 「新型コロナウイルス感染症の疑い」がある患者 とは?
問1 診断方法はなんですか? の回答
これらの地域(湖北省・浙江省?)に限定されることなく、「医師が新型コロナウイルス感染症を疑う場合に・・・」 とあり「疑い患者」とは医師が疑った患者としてある。しかし疑う根拠は記されていない。症状の概要は発表されていますが新型コロナウイルスに特異的な症状はありません。我々医師は何を持って強く疑うのでしょうか。
一方、問7 体調を崩した方が医療機関を受診した際に、現場の医師や看護師などはどのようなことに注意して診察を行うべきでしょうか? の回答は、
「新型コロナウイルス感染症の疑いのある患者」が受診した際には・・・とあり、医師の診察以前に「疑い」が決まっているかのような表現をしています。患者さん自身が「疑っている」場合を想定しているように思え、前記の内容と矛盾します。
問8 「感染の疑い」がある患者を診察する際、医療者はどのような準備や装備が必要ですか? の回答は、
手洗いなどの衛生対策 手などの皮膚消毒には70%消毒用アルコールを・・・とあるので 最初から疑う必要があり、診察室に居る医師が疑う前から医療者全てが疑っておかなければならないことになる。
結局どのような患者を「疑い患者」とするかは何も記載されていない。
にも拘らず、
新型コロナウイルス感染症に対する感染管理 改訂2020年2月14日 国立感染症研究所 国立国際医療センター 国際感染症センター
には
「nCoV感染症の疑いがある人」への診療時の感染予防策 として
標準予防策 つまり 呼吸器症状のある患者の診察時にはサージカルマスク着用・手指衛生の遵守
呼吸器症状のある患者には、サージカルマスクを着用させる
としている。
2月17日に厚生労働者が公表した「相談・受診の目安」に該当する人とは、即ち新型コロナウイルス感染の疑いがある人を対象にしている訳であるから、「帰国者・接触者相談センター」に電話していない人に対しても「目安に該当する」人を医療機関では「新型コロナウイルス感染症の疑い患者さん」と考える必要がある。
従って、①風邪の症状や37.5度以上の熱 が4日以上続くか ②強いだるさや息苦しさ がある場合、
高齢者(60歳以上?)や基礎疾患(糖尿病・心不全・呼吸器疾患)のある人、透析や免疫抑制剤、抗癌剤による治療を受けている人、妊婦では①が2日以上か②がある場合 には「新型コロナウイルス感染症の疑い」となる。このような症状、特に①で受診する人々は多くの場合は普通の上気道感染である。医療機関では今後新型コロナウイルス感染の流行が終息するまでは、普通の上気道感染患者さんを含めて「新型コロナウイルス感染症の疑い患者」への感染予防策を実施していかなければならない。患者さんにサージカルマスクをしていただくので厳密に運用すれば咽頭所見を得ることができない事になる。
疑問2 「新型コロナウイルス感染症疑似症」とは?
問9 感染の疑いがある患者の届け出は必要ですか? の回答は、
湖北省または浙江省からの帰国者など
集中治療その他これに準ずるものが必要な場合
臨床症状から肺炎と診断され、かつ、直ちに特定の感染症と診断ができない場合
は、直ちに「疑似症」として届け出る必要があります。と記載してあります。
疑似症患者さんを診察する場合には、
Ⅰ接触・飛沫予防策 Ⅱ診察室は個室が望ましい Ⅲ診察室は充分換気する Ⅳ 検体採取などエアロゾル発生手技を実施する場合にはN95マスク、眼の防護具(ゴーグル・フェイスシールド) 長袖ガウン 手袋 を装着する Ⅴ患者の移動は医学的に必要な目的に限定する
としてあります。
「湖北省または浙江省からの帰国者など」以外の方については、診察や検査を行って初めて疑似症かどうかが決まるのですが、疑似症には上記の予防策をとる必要があるので、評価する前から予防策をとっておかなければ「十分な予防策」をとっていたことになりません。言い換えれば、全ての患者さんにこれらの予防策をして臨む必要があります。しかも一人診察するごとに予防具は交換する必要があります。
離れた所からの観察や訴えを聞いただけで疑似症かどうかを判断してから対応をとることもできますが、予見が外れた場合には「十分な予防策をとっていなかった」ことになります。
現在示されている指針を忠実に守るには、患者さんの訴えを医療機関への受診前に確認して、「新型コロナウイルス感染疑い患者」に該当すれば、その人だけを隔離できる診察室で充分な感染管理のもとに診察を行うか、それができない場合には来院して頂かないようにしなければなりません。
結局、現段階の指針では、「相談・受診の目安」に該当する方の診察は一般の診療所では不可能となります。
しかし充分な対応がとれる基幹病院が全ての「疑い患者」を受け入れることができるでしょうか? 新型コロナウイルス感染を疑うかどうかではなく、ごく一般的な常識的に「症状が重いかどうか」で基幹病院を受診するかどうかを判断すべきではないでしょうか。インフルエンザと同程度の感染管理で充分かどうかを早く知りたいものです。

 

潜在性甲状腺機能異常症

 1月14日にNKH本局ディレクターT氏の電話取材を受けました。番組「あさイチ」で昆布をとりあげるが、摂り過ぎによる甲状腺機能低下の可能性について調べている時に、2015年10月20日投稿の当ブログの記述を見つけたからとのことでした。( 当院ブログ「昆布の摂り過ぎによる甲状腺機能低下」 )

30分あまりの電話取材でしたが、ヨウ素の必要量、日本での食事の一般的なヨウ素摂取量、過剰と思われる量、過剰摂取で異常が起こるのは10%程度の頻度、甲状腺機能に何らかの変化がある人が要注意、日本人では潜在的な甲状腺機能障害が高頻度でみられることなどを伝えました。翌日以降、テレビ録画して確認したところ1月16日の「あさイチ」で富山市民の皆さんが色々な形で昆布を美味しく沢山摂っているとの特集があり、昆布の有効成分について解説がありました。ヨウ素含有量については触れていませんでしたが特集の最後のところで、「昆布の摂り過ぎでごく一部の人に甲状腺機能低下がおこることがあるので注意しましょう」と結ばれていました。富山市民の皆さんのヨウ素摂取量はかなり過剰と思われる映像でしたが、ヨウ素の影響を少なくする代謝機構が備わっているのかもしれません。

さて、甲状腺機能(甲状腺ホルモン値)は正常範囲であるのに、甲状腺刺激ホルモン(下垂体前葉から分泌されます TSHと略します)が、基準以上に高値(潜在性甲状腺機能低下症)、基準以下の低値(潜在性甲状腺機能亢進症)の状態の方をかなりの割合で見かけます。治療が必要かどうかについて悩ましい状況です。

すみれ病院(大阪市)名誉院長の浜田 昇先生は「甲状腺疾患診療パーフェクトガイド(診断と治療社 2014年改訂第3版)」において以下のようにまとめています。(TSHの基準値を、年齢や状況によって変えて評価することがポイントです。)

潜在性甲状腺機能低下症(全人口の4%前後、高齢者では5~6%)の治療について

  1. 妊婦の方:すぐに治療開始(TSHが通常の基準内値ではあるが妊婦基準値の5μU/mLよりも多ければ治療開始)
  2. 妊娠を考えている女性:条件付きで治療開始する
  3. 以上どちらでもない場合:まずは、一過性でないか、他の原因によるTSH上昇でないかなどを確認する

ヨード(ヨウ素)制限や疑われる薬剤中止を行って4~12週後に再検査する。

TSH値、動脈硬化性心血管疾患や心不全リスクの有無、自己抗体の有無、年齢(75~80歳を境として区別する) などを考慮して治療開始する。

問題点として、潜在性甲状腺機能低下症を放置した場合に認知機能低下・虚血性心疾患・心不全のリスクがあるかどうかは重要であるが結論が出ていない。 としています。

潜在性甲状腺機能亢進症(全人口の1~2%)については、

  1. 原因を検査確認する
  2. 一過性でないかどうかを確認する
  3. 持続性で外因がない場合は、TSHの値、年齢、心疾患・骨粗鬆症・甲状腺機能亢進症状の有無などにより治療開始するかどうかを決める。 としています。

以上のまとめや他の書籍での方針、甲状腺専門外来の先生方の御意見などを参考にして診療をすすめたいと思っています。

※話はかわりますが、インフルエンザに罹らないようにする工夫として(あるテレビ番組出演医師が同じ内容を発言されていましたが) ①自分の顔(眼・鼻・口)を触らない ②鼻を冷やさない(マスクなどで被う)を実践してきました。急患センター出務をしていた時には冬季に3時間で20~30人のインフルエンザ患者さんの診療をしていましたが罹患しませんでした。マスク・手洗い・うがいのみで上記を忘れると罹ってしまいます。

平成南町クリニック  玉田

インスリン節約生活

血糖値やHbA1c値は正常範囲なのに絶食時のインスリン値が高くHOMA―R高値の患者さんがおられました。特に肥満体ではありません。インスリン分泌能の指標であるHOMA-βは基準値以上です。糖尿病にならないようにする為に、糖質摂取を減らしてインスリンの必要量を少なくする食生活に変えるようにと説明しました。
高血糖のみでなく高インスリンも発癌・動脈硬化・アルツハイマー病・パーキンソン病などの発症リスクになると言われています。
インスリン分泌が充分であれば高血糖や糖尿病にはならないのですが、インスリン分泌をなるべく少なくすることが望ましいのです。インスリン分泌を節約できる食生活のためには糖質を摂り過ぎないような工夫が必要です。

高血糖になりやすい食品(即ちインスリン分泌を促進させる食品)の代表的なものに砂糖入りの炭酸飲料水がありますが、天然ジュースや牛乳にも糖質は多く含まれます。
飲物容器についているバーコードを読み取って、含まれる糖質量を角砂糖1個4gで換算して何個分の角砂糖に相当するかを表示する「サトウさん」という無料アプリがあります。我が家で飲んでいる牛乳900mLには11.1個、野菜ジュース200mLには4.1個、午○の紅茶ストレートタイプ500mLには10.5個分、天然ぶどうジュース160mLには5.2個分でした。

襟裳岬(森進一)の歌詞に「君は二杯目だよね コーヒーカップに角砂糖ひとつだったね・・・」とありますが、飲物に角砂糖を入れるとして普通1~2個です。それらに比べると市販の飲物にいかに多くの糖質が入っているのかがよく判るアプリです。(ピークに達するまでの時間を別にすれば、血糖値上昇に関しては砂糖も他の糖質もほぼ同じです)ブドウ糖や果糖、乳糖などの甘い糖類だけでなく澱粉を含む糖質の量を気にする習慣をつけましょう。

当院の診療に際して、本年も多くの職種の方々のお世話になりました。ここに御礼を申し上げます。
私事で恐縮ですが来年は年男です。年神様の御加護が多くありますことを願っています。

平成南町クリニック  玉田

百から百から

11月4日に井原市立田中美術館「開館50周年記念特別展」 平櫛田中没後40年―美の軌跡―を見に行きました。

以前にも訪れたことがありますが、今回は特別展ということもあって、木彫を主体にブロンズ像、石膏原型など多彩な作品を鑑賞することができました。六代目菊五郎をモデルにした鏡獅子の製作途中を思わせる原寸大の試作木彫の展示は興味深いものでした。全高2メートルを超えるこの鏡獅子を完成させたのが86歳であり、その後も100歳を超えても製作を続けて107歳で亡くなる直前まで創作されていたことに感動を覚えます。

「不労 六十七十ははなたれこぞう おとこざかりは百から百から わしもこれからこれから」 と毛筆の書をよくかいておられた事は有名です。とても比較にはなりませんが私も昨年70歳を過ぎてからこの言葉が身に沁みるようになりました。(この書を印刷した扇子を買い求め自宅玄関に置き毎朝自分に言い聞かせています。)
当院を受診される方が「もう90過ぎまで生きたし、早くお迎えが来ないかと思っている」と言われることがあります。「そんな事はないでしょう」と返して来ましたが、これからは、「男ざかり(女ざかり)は百から百からですよ。平櫛田中さんの心意気を見習いましょう」と話して行こうと思っています。

ちなみに私の祖父(1883年生まれ 1988年105歳没)は、私たち孫が成人を過ぎた頃に、「四十、五十は洟垂れ小僧、六十、七十は働き盛り」と言っていましたがこれは渋沢栄一(1840年生まれ 1931年91歳没)の言葉「四十、五十は洟垂れ小僧、六十、七十は働き盛り、九十になって迎えが来たら百まで待てと追い返せ」の一部でした。今、私は働き盛りです。

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