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標準体重改め目標体重

標準体重は、職域健診の異常所見の合計数が最も少なくなるBMI(体格指数)22に基づいて算出されています。(適応範囲は30歳~59歳とされていますが)標準体重=「身長(メートル)×身長×BMI22」kgです。

2020年版の日本人の食事摂取基準(厚生労働省)によれば、目標体重を、男女の区別なく年令で区切って以下のように提唱しています。
18歳~49歳 身長(m)×身長×(18.5~24.9)kg 身長1.6mなら47.4kg~63.7kg
50歳~64歳 身長(m)×身長×(20.0~24.9)kg
65歳~74歳 身長(m)×身長×(21.5~24.9)kg   身長1.6mなら55.0kg~63.7kg
75歳以上  身長(m)×身長×(21.5~24.9)kg

総死亡率が最も低かったBMIの範囲から上記の目標を定めているのですが、65歳以上では総死亡率の最も低かった体重の範囲は以下のようでした。
65歳~74歳 身長(m)×身長×(22.5~27.4)kg 身長1.6mなら57.6kg~70.1kg
75歳以上  身長(m)×身長×(22.5~27.4)kg

目標体重をこれに合わせなかったのはフレイルの予防及び生活習慣病の発症予防の両者に配慮する必要を踏まえてとしてありますが、なかなか理解し難いです。
いずれにしても「標準体重」より重くても「目標体重」になるので、余計な心配が少し減ります。
患者さんの体重評価に今後は「目標体重」を用いることにしました。
体重管理に最も影響を与えるのは糖質摂取量ですが、糖質に関して「2020年版の日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」では次のように述べてあります。
~糖質の役割は(中略)通常はぶどう糖(グルコース)しかエネルギー源として利用できない組織にぶどう糖を供給することである。~
注釈:ぶどう糖が必須なのは網膜と赤血球のみであり、脳はケトン体をエネルギー源にでき空腹時には主にケトン体を利用しています。
~炭水化物については推定平均必要量(及び推奨量)も耐容上限量も設定しない。同様の理由により目安量も設定しなかった。~
注釈:必須糖質は存在しないので上記の記述は妥当です。しかし炭水化物の目標量は次のように記載してあります。(糖質と食物繊維を合わせたものが炭水化物です。)
~蛋白質と脂質の目標量の下の値に対応する炭水化物の目標量(上限)を65%エネルギーとする。炭水化物の目標量(下限)は蛋白質と脂質の目標量の上の値(20% 30%)に対応させる。~
注釈:炭水化物の目標量を50%~65%エネルギーとするとしていますが、血糖値を上げないようにする観点からはこの目標値は高めと思われ40%以下が良いと考えます。蛋白質と脂質のエネルギー比を増やせば糖質のエネルギー比率はもっと下げられます。ちなみに糖尿病患者さん用の経管栄養食の糖質エネルギー比は32~33%ですし、肺気腫など高炭酸ガス血症を来しやすい患者さん用の経管栄養食の糖質エネルギー比はさらに少なく28.4%になっています。高品質の脂質を多く含むため糖質量を減らしても必要なカロリーが確保できています。

平成南町クリニック玉田