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手指の単独麻痺

気管支喘息で定期的に受診されている方が、前日の夜7時頃から左手指の違和感と動かしにくさが起こり、朝になっても治らないと訴えて来院されました。視床梗塞に多い手掌・口症候群かと思いましたが口周囲のしびれはないとのことでした。めまいはなく顔や両手の痛覚障害はありませんでしたのでワレンベルグ症候群(延髄外側の梗塞)は考えにくい状況でした。しかし末梢神経障害にしては突然すぎる発症でしたので、何らかの脳梗塞と考え、倉敷平成病院脳卒中内科に紹介させて頂きました。
image002MRI検査で右頭頂葉の小範囲の脳梗塞の診断で入院となり抗凝固療法が開始されました。数日後には、左手指の麻痺や異常感覚は消失し退院されました
この時は、そのような非常に限局した部位のみの脳梗塞もあるのだなという意識でした。しかし、「見逃し症例から学ぶ 神経症状の極めかた(平山幹生著 医学書院 2015年11月)」の中に、「50:一側の手指の脱力を急にきたした患者」のタイトルで上記の方と全く同じ状況の症例提示がありました。その症例提示では、右頸椎間孔が狭くなっていたので最初の診断は頸椎症性神経障害としたがMRI検査で「手指単独の麻痺(isolated hand palsy)」の診断に修正したという内容でした。
image004isolated hand palsyは、脳の前頭葉の中心前回の一部でprecentral knobと呼ばれる部分の梗塞で起きるとされています。手指単独の麻痺は末梢性麻痺と誤り易いので注意が必要とありました。提示されているMRI画像所見は左右の違いはありますが受診された患者さんとほぼ同じ所見でした。
急性の麻痺発症では小範囲であっても、まず第一に脳梗塞・脳出血を考えるということを改めて学びました。image001

写真は、若桜鉄道のある鳥取県八頭郡若桜町のスナップです。(10月9日に訪れました。)
若桜駅のSLと給水塔、カリヤ通りの仮屋(ひさし)、名物の豆菓子
平成南町クリニック 玉田