月別アーカイブ: 2016年2月

カミ隠しの頭痛

頭痛慢性頭痛の経験のない15歳の女性が、2日前からの増強する頭痛を主訴に来院されました。手持ちの鎮痛薬を服用して一旦は治まるがすぐに頭痛が戻るとのこと。頭痛の部位は頭全体で拍動性ではない。
外傷なし 発熱なし 上気道炎症状なし 嘔気嘔吐なし 視力障害なし 耳痛なし 齲歯なし 手足の痺れなし
受診の翌日が入学試験でストレスあり。とのことでした。筋緊張性頭痛かな?・・・しかし、まずは診察。
高血圧なし 不整脈なし 眼の充血なし 咽頭所見異常なし Jolt accentuation(イヤイヤするように早く頭を振ると頭痛が増強する)認めず、Neck flection test(項が痛くて顎を胸に付けることができない)陰性・・・髄膜炎は否定的か。
頭蓋内病変の除外に頭部CTが必要か?しかし、頭痛の原因を探るには頭蓋内から最も遠い所、即ち皮膚(頭皮)からです。
皮膚に何かできていませんか?「そう言えば、背中の上の方が少しピリピリします。」見れば、項の下方に紅暈を伴う小さな丘疹が集蔟しています。小さな痂皮を伴うものもあります。帯状疱疹?右側優位で両側にあるけれども否定は出来ません。髪の生え際を見ると右側に発赤丘疹が1つあります。もっと上は?髪をかき分けて見ていくと右側の後頭部から頭頂部にかけて同じような丘疹がポツリポツリありました。水痘にかかったことはあるとのこと。後頭部の帯状疱疹による頭痛と診断しました。
少し古い本ですが、「見逃し症例から学ぶ日常診療のピットフォール(生坂政臣著 医学書院 2003年発行)」の中に「徐々に増悪する頭重感で受診した管理職の中年男性」という症例が載っています。緊張性頭痛と診断しがちですが、実は帯状疱疹による頭痛でしたという症例です。増悪する頭痛なので器質疾患を探すべきで、頭髪に隠れた頭皮の皮疹は丁寧に観察しないと見落としがちと注意してあります。
特徴的な皮疹があれば帯状疱疹と診断できますが、痛みだけの時期だと診断できないかもしれません。少し触れただけで痛みを強く感じるとの記載もありますが経験はありません。皮疹が出ないままの帯状疱疹もあるとのことで、こうなると診断は「水痘・帯状疱疹ウィルス(HHV-3)の血中抗体上昇」で行うことになります。
急な頭痛で増強あれば、まずは髪の中の頭皮をよく見てみましょう。カミに隠れた頭痛の原因が分かるかもしれません。

平成南町クリニック 玉田