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亜鉛欠乏症の薬「ノベルジン」

これまで亜鉛欠乏症(低亜鉛血症)に対する保険適応の薬はなく、亜鉛を含む胃潰瘍の薬を使わざるをえませんでした。本年3月に「ノベルジン」が低亜鉛血症の適応となりました。ノベルジンは、銅の排泄障害で起こる先天性銅過剰症のウィルソン病(肝レンズ核変性症)の治療薬としてのみ認められていました。

亜鉛Znが不足すると味覚障害・皮膚炎・脱毛・口内炎・性腺機能障害などがおこります。小球性~正球性貧血や亜鉛欠乏性溶血(赤血球膜が脆くなり、ランニング中の足底圧力や人工透析による機械的な溶血性貧血)が起こることがあります。

ノベルジンを低亜鉛血症に用いる場合には、食事等による亜鉛摂取で十分な効果が期待できない場合に使用することとなっています。服用量は体重30kg未満の小児では、開始量25mg1日1回、最大量25mg1日3回。それ以外の場合は、開始時25~50mg1日2回、最大量50mg3回です。

タンニンや多量の食物繊維を摂ると亜鉛・鉄・銅などの吸収が低下します。また、薬剤によっては亜鉛過剰排泄をおこすものがあり、多量の汗・尿による過剰排泄もあります。このような事がなければ、亜鉛欠乏を起こすことは稀とされていますが、亜鉛を含む食品の摂取が非常に少なければ亜鉛欠乏になるかもしれません。

亜鉛を多く含む食品は以下のものがあります。( )内は1回の通常摂取量での亜鉛mgです。

牡蠣60g(7.9mg)、豚レバー70g(4.8mg)、牛ロース70g(3.9mg)、鶏レバー70g(2.3mg)、ほたて貝60g(1.6mg)など。

逆に、サプリメントなどで亜鉛を過剰摂取すると、亜鉛と銅の吸収輸送体が共通なので銅の吸収が少なくなり銅欠乏が生じることがあります。銅が不足すると、正~大球性低色素性貧血や亜急性連合性脊髄変性症になりえます。これはビタミンB12欠乏と同じ症状・所見です。

亜鉛の1日必要量は、男性10mg・女性8mg(妊娠中10mg、授乳中11mg)なので摂り過ぎにも注意しましょう。亜鉛欠乏がない場合、1日40~45mg以上は摂り過ぎです。

平成南町クリニック  玉田