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相対的副腎不全

梅雨の長雨が続き、また新型コロナ感染症流行のため自由な行動も自粛を求められ気分の落ち込むことが多いこの頃です。
だるい、疲れやすい症状は誰にでもありますが、非常に強い場合や長く続く時には身体的な疾患を考える必要も出てきます。低拍出症候群や心筋梗塞などの心疾患、起立性調節障害、血液疾患、感染症、血管炎、低血糖などありとあらゆる疾患を区別しなければなりません。甲状腺疾患や副腎不全などの内分泌疾が「異常な疲れ」をきっかけにして見つかることもあります。
副腎不全は以下のような時に疑います。体重減少・疲労感・脱力・食欲不振・悪心嘔吐・腹痛・便秘・関節痛・発熱・低血圧などの症状が続く時です。いずれも誰にでもよく起こる症状です。特徴的な症状としては「不自然な痛み(通常であれば痛みとして感じない程度の刺激などでも痛む)」があります。
一般的な検査所見では、白血球の好酸球増加やリンパ球増加・血性ナトリウムの低下・血性カルシウムの上昇・低血糖・低コレステロール血症などです。
診断するにはコルチゾール(副腎皮質ホルモン)、アルドステロン(副腎皮質ホルモン)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)などの値を調べます。
早朝安静時のコルチゾール値で判断することが多いのですが、正常基準値は検査方法でやや異なり、例えば「F臨床検査」では4.5~21.1μg/dLです。一般的には4.1μg/dL未満であれば副腎不全が疑われ、18μg/dL以上であれば副腎不全は除外できます。問題なのは基準値内であっても4~18μg/dLの場合です。色々な負荷試験で判定することになります。ACTH(臓器抽出の天然の副腎皮質刺激ホルモン)やコートロシン(合成されたACTH作用を持つペプチドの商品名)を静脈注射して血中コルトゾールの増加の程度で評価します。
緊急時にこのような負荷試験が必要になることがあります。ショック状態や敗血症時に全身状態の改善がなかなか得られない時には「相対的副腎不全」が原因のことがあるからです。輸液や昇圧剤などでもショック状態が改善されない時に副腎皮質ホルモンの投与で状態改善したとの報告が多くあります。但し、感染症を重篤化させる危険性もあるので全ての場合に有益という訳でもないようです。
ショック状態でない場合でも「相対的副腎不全」が問題になることがあるのでしょうか。正式な病名にはなっていませんが「副腎疲労」という概念が相当するように思われます。
副腎機能の状況を次の4段階に分けてあります。
ステージ1:警告反応(闘争と逃走反応)、ステージ2:抵抗反応、ステージ3:副腎疲労、ステージ4:副腎不全
副腎不全の場合以外は、副腎皮質ホルモンを薬剤として補充するのは不適切です。食生活改善(糖質を減らしつつ腸内細菌環境を改善させる、ビタミン不足のないようにするなど)や、生活スタイルの改善(嫌な事をしない、会いたくない人には会わない、適度な有酸素運動を行うなど)で対応するのが良いとされています。
こんな生活ができれば快適ですね。

平成南町クリニック 玉田