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糖尿病性網膜症

世界的な眼科外科医の深作秀春医師の著書「視力を失わない生き方」光文社新書(2016年12月20日初版)の253頁に、糖尿病性網膜症についてこう説明してあります。

糖尿病の人は網膜の微小血管が詰まり、破けて眼底出血します。出血による酸素不足を補うためや組織修復のために、血管新生因子が出て新生血管が生えてきますが、これがまた、もろくて破けやすいのです。そして、眼底出血や硝子体出血を繰り返し、さらに進行すると、出血での炎症反応から眼球内に線維組織の増殖が進み、最終的にはこの増殖膜の牽引で、網膜が破けたり剥がれたりして、網膜剥離で失明します。

本書には糖尿病性網膜症の予防や治療について詳しく述べてありますので、糖尿病の方は是非読まれることをお勧めします。

著者の深作秀春先生が、ブログ「ドクター江部の糖尿病徒然日記」に寄せられた文章を転載いたします。

【17/01/21 深作秀春    糖質制限への糖尿病学会の無理解 今日、1月21日での横浜パシフィコ開催の日本糖尿病学会で、「過度な糖質制限食で起こしたケトアシドーシス」なる表題の発表がありました。 演者はケトン体値が高いというだけで、とんでもない悪さで重体と結論つけているのです。アシドーシスの方の検査値は出ていません。   私は眼科外科医ですが、糖尿病性網膜症を多く診ることもあり、糖尿病学会の会員でもあります。 今までの経験から、糖尿病専門医による治療が開始すると、糖尿病性網膜症が悪化することが多くて困り果てていました。 この経験をもって、江部先生の糖質制限食を患者に進めることができるようになってから、非常に安定した糖尿病性網膜症の治療ができるようになっています。さらに、宗田先生のケトン体の安全性とエネルギーとしての有効性は、患者だけでなく、自分自身を被験者にして実感してきています。   このような状況ですのに、地元横浜で行われた糖尿病学会では相変わらず、極端な糖質制限はケトアシドーシスを起こすので危険だ、と決めつけているのです。しかも、ケトン体値が高い事がイコールでケトアシドーシスと言っているのです。つまり、医学の基本を捻じ曲げているのです。

高ケトン値はケトアシドーシスとは別物ですが、医学部時代に刷りこまれたケトン体悪玉説に何の疑問も持たないで、科学としての医学の面を無視しているのです。   糖質制限を勧める眼科医の立場ですが、最近はますます従来の糖尿病治療で悪化して、糖尿病性網膜症が末期となり、網膜剥離を合併する患者の来院が、日本中から増えました。手術には難渋しますが、網膜復位手術後の網膜の安定化には、糖質制限が非常に有効であることを実感しております。】 以上転載終わり。

HbA1c高値の糖尿病を従来の治療法(インスリンやSU剤で血糖値をコントロールする)で開始して、血糖値が急速に改善すると、網膜症が新たに発症することや、悪化することがあります。悪化必発と言われる眼科の先生もおられます。それ故、糖尿病性網膜症がある場合はHbA1cを1ヶ月0.5~1%ずつゆっくりと下げるべきと習いました。

しかし、インスリン必要量を減らす糖質制限で高血糖が改善すれば、HbA1cの降下が速くても基本的に網膜症は悪化しないのです。ケトーシスそのものは危険ではない事も含めて、過去の常識に捉われずに、事実を真実として見つめましょう。

平成南町クリニック  玉田