月別アーカイブ: 2019年2月

「はしか」のおさらい

2月10日に家族3人で京都観光をしました 京都には大学卒業後2年間までの8年間住んでいたのですが、鹿苑寺金閣、二条城へは行ったことがなく今回初めて訪れました。金閣の屋根に雪がうっすら積もって風情がありましたが、やはり慈照寺銀閣の落ち着きの方が好みです。銀閣にも行き、50年前の学生時代に行っていた大銀食堂(当時とは改築されていましたが)で昼食を摂りました。50年前も働いていたと言われる方がおられ懐かしく感じました。(当時は作り置きのおかずがガラスケースに入れてありましたが、今はサンプルのみ置いてありました。)
帰りの新幹線は早めに午後4時27分京都発に乗り帰ってきましたが、後日のニュースで同日午後8時過ぎの下りの新幹線に麻疹に罹った方が乗っていたと報じていました。
今年は麻疹の患者数が2009年を上回るペースで増加しており2月6日 国立感染研究所データでは、近畿圏を中心に計148人(昨年同時期0人、2009年同時期76人)の感染者数です。岡山県ではまだ0人ですがいつ発症者があらわれるか予測困難です。「はしか」はヒトだけが罹る空気感染するウイルス性疾患です。全身状態が非常に悪い免疫患者にはビバビリンという抗ウイルス薬を使用して有効だったとする報告があるのですが、認可されておらず一般的には対症療法のみです。
マスコミでは「はしか」を思わせる症状の方は予め医療機関に電話してから受診するように注意を促していますが、どのような時にそうすれば良いでしょうか。はしかの経過は以下のようになります。
麻疹ウイルスに曝露されてから10~12日後に風邪症状が始まります。
その後口蓋にKoplick斑と呼ばれる、紅斑の中心に白色や灰色の砂粒様斑点のある粘膜疹が出現します。
風邪様症状出現から4日後に再発熱と共に、顔面(前額部、耳介後部・頚部)から始まる、圧迫で消える盛り上がりのない小さい鮮紅色の皮疹が次第に体全体に拡大して行きます。
その後3~4日後に熱が下がり皮疹が次第に消退して行きます。(茶褐色の色素沈着が起こることもあります)
「はしか」かもしれないと考えるのは、次の(1)、(2)、(3)のいずれかの時となります。
(1)麻疹に罹ったと分かっている人と同席、同室になってから10~12日後に風邪様症状が出現した時
(2)風邪様症状出現後、Koplick斑が出現した時
(3) (1)や(2)の後に、顔を中心に発赤疹が出てきた時
他の人へうつしてしまうのは最初の風邪様症状が出る1日前からとされていますので、(1)、(2)、(3)のいずれの時も他の人へ感染させうる状況です。
言い換えると、「はしか」かもしれないと思われる時には空気感染を阻止できる区域のある医療機関を受診するか、その区域のない医療機関の場合は車で行き診察室に入らずに車中に留まっていただく必要があります。そうでなければ、その医療機関内で感染拡大を起こしてしまいます。(当院に空気感染対策区域はありません)
受診された方の「はしか」の診断方法は下記のとおりです。
臨床的診断 上記の(2)、(3) で診断  (1)の時点では他の疾患かもしれません
確定診断(血液検査) 麻疹IgG抗体の上昇 臨床的診断時と皮疹出現後2~4週間後のIgGの差を確認
麻疹IgM抗体の確認(皮疹出現後3~30日後に上昇してくる)
確実な治療方法のない「はしか」を診断する意義はどこにあるのでしょうか?
はしかが除外できれば、その疾患の治療を行う、はしかと診断してその後の感染拡大を防ぐ、はしかの合併症を早めに確認する と考えられます。
麻疹ワクチン接種を受けていても十分な感染防御抗体価がない場合もあるので注意が必要です。

平成南町クリニック  玉田