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胎児のエネルギー源  どちらが「代わりの事実」?

以前にも紹介しましたが、産婦人科医の宗田哲男医師の研究によれば、胎児のエネルギー源はブドウ糖ではなくケトン体です。胎盤には高濃度のケトン体が含まれていますが、ブドウ糖は胎盤にも臍帯血にも多くは含まれません。このケトン体は母体からの脂肪酸を原料として胎盤で作られています。胎児に必要な栄養素とするために母体には中性脂肪とコレステロールが増加しています。卵生動物の卵は蛋白質と脂肪でできていて、炭水化物(糖質)は殆ど含まれません。哺乳類の胎児も同じようにブドウ糖は殆ど必要としないのです。妊娠母体の血糖値が上昇しているのは、胎児がブドウ糖をより必要とするからではないのです。
宗田医師は次のような仮説を唱えています。(光文社新書 宗田哲男著 「ケトン体が人類を救う」 )
妊娠糖尿病は、妊娠母体が「糖質を拒否」している病態である。同時に「タンパク質と脂肪を要求」している。
(それなのに)これに気付かずに、妊婦が糖質過多の食生活を送るために、病気が発症してしまう。
そして、この仮説をもとに糖質制限食でインスリンを使用せずに、妊娠糖尿病・妊娠中の明らかな糖尿病・糖尿病合併妊娠の妊婦さんを治療し、健常な胎児を出産される方々を増やしておられます。
糖尿病学会のガイドラインでは糖質エネルギー比率60%が良いバランスとしていますが、これの根拠となる論文やエビデンスはなく、糖質過多の状況なのです。その食事でカロリー制限をしても妊娠糖尿病の妊婦さんは食後高血糖になります。ガイドライン通りのカロリー制限をすれば、胎児に必要なタンパク質と脂質を犠牲にしていることになります。(ドクター江部の糖尿病徒然日記2017年3月14日記載事項抜粋)
低糖質食にすると結果的に血中ケトン体が増加しケトーシスになりますが、これをインスリン不足時に生じるケトアシドーシスと同一視して「ケトーシスが危険」と考えてはいけないのです。胎児はまさにケトーシスの状態でスクスクと育っていくのです。また、新生児も脂肪含有量の多い母乳からケトン体を生成し脳の重要なエネルギー源にしています。(ヒューマン・ニュートリション第10版2004年) 小児も成人も脳はごく普通にケトン体を利用できるのです。(ドクター江部の糖尿病徒然日記2017年3月12日記載事項)
これまでの常識が「代わりの事実」のこともあります。「真の事実」は何かを問う姿勢を続けたいものです。
平成南町クリニック  玉田