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穏やかな糖質制限

北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田 悟医師(日本糖尿病学会専門医・指導医)編著による「穏やかな糖質制限」ハンドブック(日本医事新報社)が2014年5月に発刊されています。その内容の一部をご紹介します。
緩やかな糖質制限が適しているのは、
肥満・メタボリックシンドローム・ロコモティブシンドローム・糖尿病・認知症
適していないのは、
蛋白制限食が必要な場合・1型糖尿病(全ての患者ではない)・妊婦・小児
内容
○1食20~40gの糖質量にする。間食に糖質10gを許すので、1日の糖質量は70~130gとなる。
○糖質以外の蛋白質・脂質は満腹になるまで食べてよい。
○満腹まで食べても、3大栄養素のエネルギー比率はおおよそ、蛋白質25%・脂質45%・糖質30%になる
○低血糖を防ぐために糖質制限中の糖尿病治療薬に注意する。
私的補足
※日本糖尿病学会の推奨してきたエネルギー比率は炭水化物(糖質とほぼ同義)50~60%、蛋白質1.0~1.2g/体重kg、残りを脂質 ですので、かなりの差があります。2013年には主治医の裁量で50%未満もありうると変更されています。
※※糖質のエネルギー比率をもっと低くして1日糖質量60g以下にする糖質制限食の提唱もあります
※※※妊婦の糖質制限が安全で有効な方法である事を示した報告もあります。(宗田マタニティクリニック院長 宗田哲男著 ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか 光文社新書)
さて、全仁会グループでの施設提供食の糖質エネルギー比率は全て60%で、「穏やかな糖質制限」で提唱されている1日上限の130gになるものはありません。糖質量が最も少ない糖尿1200kcal食でも、1食米飯100g(糖質37.1g)で副菜と合わせると3食で糖質合計170gになります。1食の米飯を64gにすれば3食合計糖質130gになりますが、総カロリー1019kcalです。総カロリーが少ないので痩せてしまう危険があります。
総カロリーをなるべく減らさないで糖質130gにするには、常食Aの副菜(1042kal 糖質84.1g)と主食の米飯糖質46g(米飯3食124g 208kcal 1食米飯41g)の組み合わせがあり、総カロリー1250kcalです。この組み合わせでの糖質エネルギー比率は41.6%です。当院に通院されていて上記に近い提供食で血糖コントロールが改善している方があります。しかし、北里研究所病院指導の糖質エネルギー比率30%より多いのです。現在の提供食メニューではこれが限界なので、「緩やかな糖質制限」をするにしても個人的な補食が必要になります。
コンビニ店での食品には成分としての糖質量が記載されているものがありますが、弁当や麺類、サンドイッチなどでは記載されていないものが多いです。レストランでの食事メニューのカロリー表示はよく見受けますが、糖質量の表示も是非して欲しいです。また、ヘルシーメニューとして紹介されているレシピにはカロリーは必ず記載してありますが、計算できる筈なのに糖質量は何故か記載されていません。
糖尿病や肥満でなくても、摂食する糖質量を意識しながら真のヘルシー生活を送りたいものです。

平成南町クリニック 玉田