月別アーカイブ: 2021年6月

もう一段掘り下げて考えてみよう

あるブログに、「枇杷の実を小鳥が食べない なぜだろうか 甘い実なのに種が大きいからか」 という意見があり、それに対して、「いえいえ 鳥たちは枇杷の実を食べていますよ。」いう応答がありました。
我が家にある枇杷の実は、木によって甘みが違います。甘い方は用心しないとすぐに鳥につつかれてしまいます(小さな鳥は種が大きいので実ごとは食べず果肉=花托をつついています) 酸っぱい方は殆どつつきません 甘い方の実がなくなると、酸っぱい方もつつくことがあります。枇杷の実を食べないのではなくて甘い実があれば、酸っぱい実はわざわざ食べないのです。ですから文頭の異なる見方はどちらも正しいのです。「甘い実なのに」と決めてかかるので正しい考え方ができないのです。同じように、物事の本質を理解せずに表面だけ見て断じている表現は多々あります。

「痩せている人は糖質を制限すると筋肉が減るのでお勧めしません。」これは条件付きで正しくもあり誤りでもあります。正しい言い方は「摂取カロリーを保たずに糖質を制限すると筋肉が減る」であって、「蛋白質や脂質を増やして摂取カロリーを減らさないようにすれば糖質を制限しても筋肉は減らない」のです。

アルツハイマー病の治療薬としてアデュカヌマブをアメリカFDAが承認しましたが、承認審議を行ったFDAの諮問委員会では昨年11月 賛成0 反対10 保留1 で承認を支持しない勧告を出していました。FDAの承認に反発して二人の委員が辞任しました。そもそも この新薬(モノクロ―ナル抗体薬)は脳内のアミロイドベータを減少させる効果が確認されたものの、患者さんの認知機能改善があったかどうかは全く評価されていないのです。
田頭秀悟医師(脳神経内科医)は「たがしゅうブログ2021年6月13日」のなかで以下のように嘆いておられます。「この承認が多くの人達に肯定的に受け止められた事実をみると、一言で言えば現代医療はニセの科学によって不可逆的なレベルまで歪められてしまったという解釈に至らざるを得ません。」「著しく高額な薬を思慮浅く承認してしまう事は、(似たような他の例もあり)もはや医療は不可逆的に公平性を欠くレベルまで歪んでしまっているのだと思わざるを得ません。医療において言われている科学的根拠というものは、科学の名を借りた偽りの何かであって、それをほとんどの医療者に疑われることなく受け入れられてしまっているのだと思わざるを得ません。科学的に妥当であるかどうかは問題ではなく、社会的にそれが正義だと判断されたことにはいくらお金を費やしても構わないと」
表面だけを見て本質を見ようとしない誤りに警鐘を鳴らす人がおられるのは大いに勇気づけられます。

さて、新型コロナワクチンを接種しない人へのパワーハラスメント相談が増えているそうです。大阪東成区役所では、接種辞退職員を確認できるリストが一部の職場に配られていました。電話相談ホットラインを開設した日本弁護士連合会によると、接種を辞退した看護学生が「実習に参加できずに学習単位がとれないかも」と言われたり、介護施設職員が「ワクチン接種は義務的であり、受けないならここでは働けないぞ」と脅されたりしているとのことです。医療関係者からも「接種者・未接種者のリストが職場に貼りだされているので、接種しないにチェックできる空気ではない」という相談もあるようです。先月のこのブログで紹介しましたが、厚生労働省が「新型コロナワクチン接種についてのお知らせ」で「職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをすることのないようお願いいたします。」と注意を喚起していることに反します。そもそも相談内容はパワーハラスメントに相当する事柄であり断じてあってはならない事です。

同調圧力を生じる雰囲気が色々な方面で蔓延しているように感じます。幻想かもしれない集団の利益の為に個々の自由や信条をないがしろにする、非常に危険な社会風潮と思います。
平成南町クリニック 玉田