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水辺のケガに注意

暑い夏がやって来ました。川や池、湖、海などの水辺で遊ぶのが楽しい季節です。でも皮膚に怪我をしていたり水辺で怪我をした後で皮膚が赤くなったり腫れて痛くなった時(軟部組織感染症)には、普段の怪我とは違う注意が必要です。20160719
通常の軟部組織感染症(創感染・蜂巣炎・筋壊死・壊疽性膿瘡など)の原因菌はグラム陽性球菌のブドウ球菌、連鎖球菌ですが、海水・淡水(川や池・湖・プール・水槽)に触れる状況があった後で軟部組織感染症を起こした場合には、病原微生物として以下のようなグラム陰性桿菌を想定する必要があります。
エロモナス ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophilia)
ビブリオ バルニフィカス(Vibrio vulnificus)
類丹毒菌(Erysipelotrix rhusiopathiae)
エドワードシェラ タルダ(Edwardsiella tarda)
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)
ブドウ球菌や連鎖球菌感染には、第一世代のセフェム剤やペニシリン剤が適していますが上記の微生物には効果がないので、キノロン剤・ST合剤・ミノサイクリンの内服や第3世代セフェム剤の注射などを使います。
また頻度は低いですが、水との接触後の感染症として、抗酸菌の一種のマイコバクテリウム マリナム(Mycobacterium marinum)による皮膚感染症やスピロヘータの一種のレプトスピラによる全身疾患もありえます。沖縄・奄美諸島などでは現在でも水田などでの糞線虫感染(全身疾患で皮膚には蕁麻疹のような発疹)も報告されています。水関連感染症には、その他の病原体もあります。
海や川などに行った後で皮膚病変や風邪様症状などの全身症状が出た時には、水辺に特有な微生物の感染症を考える必要があります。

平成南町クリニック 玉田

以下などを参考にしました。
淡水との接触による感染症(週刊医学会新聞 2015年4月13日 Dialog & Diagnosis 第4話)
レジデントのための感染症診療マニュアル第2版767ページ
KANSEN journal No.46(2013.12.26)