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脈拍・心拍

当院新患の高齢者の方で、動悸は自覚しないのに脈が130の人がおられました。脈拍は整で心電図ではP波が不明で狭いQRS波でしたが、心拍数130でした。RR間隔は一定であり、心房粗動の2対1伝導を考えました。頻拍を改善させる薬剤の注射をして経過をみるべきなのですが、当院の医療体制では実施困難ですので病院の循環器科の先生に御紹介しました。頻拍抑制薬の注射で頻拍は改善し、心電図では心房細動が出現し抗凝固薬が開始されました。心房細動は左房内の血栓を生じ易く脳梗塞の原因になりますので、危険性を評価して有益性があれば抗凝固薬を開始することが多いです。以前に、軽度の動悸を訴えて受診された中年男性で不整な頻脈があり心電図で心房細動が確定できた方がおられました。カテーテルアブレーション治療の適応があるので専門医に紹介しましたところ、精査にて冠動脈疾患が判明しました。

一方、脈の少ない徐脈も心配な不整脈です。右胸痛で受診された若い方で脈が40の人がおられました。胸痛の原因は右自然気胸でしたが、胸痛の鑑別診断のために記録した心電図でP波とQRS波が全く連動していない波形があり房室ブロックの可能性がありました。しかし房室ブロックを思わせる症状がないので何回か心電図をとり直したところ、徐脈ですが正常な洞調律の波形も見られました。日常的に激しいスポーツをしている方で、いわゆるスポーツ心臓と思われました。QRSは狭いので房室整合部性調律であり、その成因は普段の徐脈にあると考えられました。脈が40のままであれば激しい運動には耐えられませんので、運動時には脈拍は増えていると思われます。
脈拍異常の有無は触診をすれば普通はすぐ判りますが、その異常が何であるかはやはり心電図ということになります。しかし、診察だけでもある程度推定することは可能です。規則性のない不整脈は殆どが心房細動です。また、規則性があり脈拍欠損を生じている時には、心音を聴診しながら脈をみると1拍欠けている時に心音がやや小さく早めに聴こえれば大抵は上室性期外収縮です。心室性期外収縮の時は早めの心音がかなり小さく聴こえます。頻脈の時は脈の間隔の変化が感じにくくなるので診察だけでは原因追究が困難です。

頻脈でないけれども心音で心拍数を数えると頻拍という時もあります。脈拍の異常を診察で判断するには、脈の触診と心音聴診の両方を同時に行うことが有用です。
診察時には努めて脈拍と心音を同時に診るようにしています。

平成南町クリニック  玉田