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模倣の名人 Great Imitator

 

出席はできませんでしたが本年3月3日の岡山胸部疾患研究会講演会のテーマは「結核」と「肺癌」でした。
岡山県医師会報 平成30年4月10日発行1475号に要旨が載せてあります。岡山県保健福祉部健康推進課 感染症対策班の佐藤友季氏の情報提供の要約は以下のとおりです。
岡山県で平成28年度に新たに結核症として登録された患者数は208人で人口10万人あたり10.9(結核罹患率)であり、全国の13.9より少なく、また全国と同じく減少傾向にある。岡山県の結核患者は70歳以上の高齢者が約7割(全国は6割)で、次のような理由で6人に1人の割合で受診や診断の遅れがある。
(注釈:症状出現から受診・診断を経て結核登録までが3ヶ月以上を遅れとする)
高齢者結核の特徴:咳などの典型的な結核の症状が少ない、合併症が多く症状が複雑、空洞形成割合が少なくなど画像が非典型的、認知症・寝たきりなどで症状を訴えられない
かかりつけ医を受診される高齢者の結核早期発見のために、症状がなくても年1回は胸部X線写真検査を(患者さんに)勧めて頂きたい。
岡山県として結核医療相談・技術支援センターを南岡山医療センターと岡山県健康づくり財団附属病院に委託設置しているので積極的に活用して頂きたい。(引用終わり)

当院では、ピースガーデン倉敷特養に入所されている方やグランドガーデン南町に入居されていて当院を受診されている方に年1回は胸部写真を撮影しています。また住民検診や人間ドックなどを受けておられない高齢の受診者の皆様にも症状はなくても年1回の胸部写真をお勧めしています。咳が1ヶ月以上長く続いていた方には肺結核症を除外するために胸部写真を撮っています。
私たち医師としましては、診断の遅れ(受診から結核登録までが1ヶ月以上)をなくすために常に「結核」を疑うことが必要です。結核は「模倣の名人」と呼ばれるように、リウマチやSLEなどの自己免疫疾患やベーチェット病などの自己炎症性疾患の症状・所見を示したり、また一般の細菌性肺炎の画像所見だったりすることがあるので常に疑っておかないと診断ができません。開放性肺結核の診断が遅れると集団生活の場や医療・福祉施設では集団感染となってしまうので細心の注意が必要です。
補足:肺結核や喉頭結核は、空気感染(気流にのり長時間浮遊する飛沫核に含まれる病原体による感染)をおこす疾患です。空気感染を起こす疾患には麻疹(はしか)、水痘(水疱瘡)、播種性帯状疱疹のウイルス感染症もあります。本年3月下旬に確認された沖縄での麻疹が拡大しており、さらに他県への拡大が懸念されています。

平成南町クリニック 玉田