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インフルエンザ濾胞

ブログ9月12日(土)の倉敷市休日夜間急患センターの夜間当番の出務の時に、中年女性でその日の昼前からの発熱の患者さんがおられました。悪寒・咽頭痛・鼻水・全身痛があり、後日にインフルエンザの診断がついた人と3日前に話をしたという経過でした。診察時に咽頭後壁に、「インフルエンザ濾胞」を認めましたので、症状と合わせて、「検査結果が陰性でもインフルエンザとして治療しましょう。」と説明しました。発熱後10時間余りの経過なので、鼻粘膜拭い液検体での迅速検査では陰性かと思いましたが、結果は「A型インフルエンザ陽性」でした。倉敷市の倉敷小児感染症サーベイランスでは9月6日まではインフルエンザ報告はまだありませんが、実際にはもうインフルエンザ発症患者さんはおられます。もっとも、真夏でもインフルエンザは発症し得ますので「まだ」とか「もう」とか言うことは無意味なのですが。
さて、「インフルエンザ濾胞」とは何かご存じでしょうか。咽頭後壁のリンパ濾胞は種々のウィルス感染での出現が知られていたのですが、インフルエンザに特徴的な濾胞の所見については、2004年1月に宮本明彦先生(桜川市 内科宮本医院)が茨城保険医新聞に発表されたのが最初です。インフルエンザ濾胞があれば95%以上の確率でインフルエンザと診断でき、迅速検査が陽性になるよりも早く出現することもあるようです。
この濾胞は「かぜ診療マニュアル 2013年12月刊 日本医事新報社」P134によれば、
①咽頭後壁に丸く半球状の濾胞
②境界明瞭でそれぞれが独立
③米粒様、涙滴様の濾胞も
④赤紫(マゼンタ)色でイクラに似ている
⑤周囲は緊満して光沢があり、半透明
⑥特にインフルエンザ感染初期でみられる
という特徴があります。
この「イクラ状のリンパ濾胞」が無くてもインフルエンザは否定できませんが、可能性はかなり低いのでインフルエンザ以外の疾患による発熱や症状を考える必要が出てきます。所見があってもその気になって観察しないと見えてこないので、「咽頭後壁に何かないか?」と自問自答しながら診察している毎日です。

平成南町クリニック 医師