藻塩・・・来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ 藤原定家

 寒い時期になると普段よりも血圧が上昇する患者さんが増えて来ます。自治医科大学の苅尾教授は、10℃の気温変化で血圧が10mmHg以上変動する病態を「気温感受性高血圧」と名付けています。足元の気温低下がより強く影響し、血圧上昇に伴って心血管イベントが発症しやすくなります。早朝の足元の冷えには特に注意しましょう。

西伊豆健育会病院の早朝カンファ 2021年12月(仲田和正医師)で、ニューイングランド ジャーナル オブ メディスン 2021年11月号の総説「塩と血圧」についてのまとめが紹介してあります。

10項目の重要な要点を挙げてありますが、その中の3項目をとり上げてみます。

①「食塩の1/4を塩化カリウム」で脳卒中14%、心血管疾患13%、死亡率12%減少し、高カリウムなし

⑦ポタシウム(=カリウム)スイッチでナトリウムとカリウム保持。食餌のカリウム増やすとスイッチがオフになりNa減少し血圧が低下する

⑨血圧低下に(食物)線維重要:大腸バクテリアが線維発酵しGタンパク質共役型受容体を活性化して高血圧を防ぐ

①:北京大学の医師達の研究結果です。代替食塩(塩化ナトリウム75%、塩化カリウム25%)と塩化ナトリウム100%(普通の食塩)での食生活を平均4.74年追跡して得られた結果です。

⑦:以前からカリウム摂取を増やすと血圧が下がり塩感受性(塩摂取で血圧が上昇すること)も著明に低下することが知られていました。最近、ポタシウム スイッチという概念が提唱されています。腎臓の遠位尿細管細胞にNCC(ナトリウムークロライド共輸送体)と呼ばれる共輸送体タンパク質がありWNKキナーゼによって調節されています。 食塩(塩化ナトリウム)の摂取が多くても血液中のカリウムが低ければNCCでこのポタシウムスイッチが作動してカリウムを再吸収しますが、同時にナトリウムも再吸収してしまいナトリウムが体内に貯留し高血圧が起こります。逆に食事中のカリウムが多いとこのスイッチは働かず、塩化ナトリウムの再吸収が抑制され塩過敏性が緩和されて血圧が下がるのです。代替塩で血圧が下がる理由はこれにあります。

⑨:大腸のバクテリアは食物線維を発酵させて短鎖脂肪酸を作りますが、この短鎖脂肪酸が腎臓で Gタンパク質共役型受容体を活性化させて、抗高血圧反応を起こすのです。塩分が多い食事で短鎖脂肪酸を作る腸内細菌が減少するそうです。(以上 西伊豆健育会病院 早朝カンファ からの抜粋引用)

高血圧患者さんは1日の食塩6g以下の減塩食が勧められていますが、低カリウムにならないような注意も必要です。最近、低カリウム血症と共に全身の浮腫が生じた患者さんがおられました。⑦のポタシウムスイッチが入ったのではないかと推測しました。低カリウムを生じる原因は無くなっているので少量のカリウム製剤で経過をみています。

日本で発売されている代替塩(減塩しお)はどの商品も塩化カリウムほぼ50%なので、1日10g摂るとアスパラカリウム錠15錠分のカリウム摂取となります。アスパラカリウム錠は、1日通常3~9錠処方となっており、症状により1日30錠まで増量可能の薬です。重篤な腎機能障害・副腎機能障害、高カリウム血症などでは禁忌(処方してはいけない)事になっていますので、代替塩(減塩しお)はよほど注意して使用する必要があります。「減塩しお」ではなく「藻塩」だと16gでアスパラカリウム錠の1錠と同じカリウム量ですので、通常の藻塩使用量ではカリウム過剰の注意はまず不要です。

先の北京大学の研究では代替塩摂取グループでの高カリウム血症は生じなかったようですが、腎機能障害やもともと高カリウム血症のないグループだったのでしょうか。

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全人類へのクリスマスプレゼント?

 新型コロナウイルス オミクロン株による感染拡大が懸念されているこの頃です。感染力は強いが、肺炎発症リスクは少なく、重症化率は低いので「全人類へのクリスマスプレゼントになるかもしれない」との意見もあります。正確な実態が早く知りたいです。日本でもこの株による感染拡大に対処するために、3回目のmRNAワクチン接種が始まっています。感染防御への効果は疑問のようですが「重症化を防ぐであろう」ので有用とされています。しかし、以下のような警告があることも知っておく必要があります。(江部康二医師のブログ「糖尿病徒然日記」12月6日の内容を再掲します。)
米国心臓病専門医、柳澤厚生医師のフェイスブック記事です。
【「新型コロナmRNAワクチン接種後に重症心臓発作の発症リスクが非常に高くなる」と心臓外科医ガンドリー博士がアメリカ心臓学会学術集会(2021/11/13~11/15)で発表・・・英国ではデータ隠しも!?】
・・・記載文前半(ガンドリー博士の研究内容と英国でのデータ隠し経緯)を省略します・・・
<柳澤医師の指摘する「新型コロナmRNAワクチン」の問題点>
(1) この研究から、ファイザーやモデルナのmRNAワクチン接種により、心臓や他の臓器の血管に炎症、しいては重症の心臓病発作を引き起こす可能性があります。そこのことから、既に重症心臓発作を起こしている多くのワクチン接種者の存在を考えなければなりません。重症心臓発作では突然死を起こすことがあり、原因不明の家庭での突然死の中にワクチンによるものが相当数存在しているかもしれません。そして、これは稀な現象ではなく、無症状であるがワクチン接種後にかなりの頻度で普通に起きている可能性があります。
(2) この炎症はワクチン接種後の一時的なものではなく、少なくとも3ヶ月あるいはそれ以上の長期間続く可能性があります。従って、3回目のブースター接種によりさらに炎症が悪化し、重症心臓発作を引き起こす危険があります。
(3) 診断或いは未診断の心臓血管疾患を有する中高年だけでなく、血管の炎症を有する自己免疫疾患患者、さらには冠動脈の病変を有している可能性のある川崎病に罹患している既往のある小児においても、mRNAワクチン接種後長期間を経て重症心臓発作を引き起こす可能性があります。
私(柳澤医師)は心臓病専門医として、ガンドレー博士の研究結果の再確認がされるまでは、ブースター接種を含めてワクチン接種に慎重になるべきだと考えます。さらに小児についてはワクチンを絶対にしてはならないでしょう。心臓の血管に病変を起こす可能性のある川崎病の既往のある子どもから成人の方も接種は慎重にすべきでしょう。そして、国際オーソモレキュラー医学会が提唱するビタミンC、ビタミンD、亜鉛などによる栄養療法で、安全にそして確実に新型コロナの感染予防と重症化予防を推奨します。
(以上、柳澤医師のフェイスブック12月2日記載内容 周囲の方に情報を伝えて下さいと記載されています。)
新型コロナ感染による重症化や死亡と、ワクチン接種後の重篤な副反応や死亡を比較する場合、夫々の発症率で評価するのはおかしいです。感染の場合の危険性は「感染する確率×発症率」であり、ワクチンの場合の危険性は「接種100%×発症率」です。 感染する確率が非常に低い現時点(2021/12/14 7日間平均 118人/総人口1億2580万人=0.00093%)において、心筋炎発症の頻度を比較すると 感染後発症する確率=(アメリカのデータでは)2.3%なので日本の今の感染確率0.0000093×240(ワクチン8ヶ月ごととして)を掛けて0.0000215%×240=0.0052%の危険性、ワクチン後発症する確率=0.006%なので1.0を掛けて0.006% どちらが危険でしょうか? 年齢や「その人の感染のしやすさ」などを無視すれば現時点ではワクチン接種の方が「心筋炎発症リスクが高い」となります。
オミクロン株については、心筋炎発症頻度を含め、重症化率や死亡率が不明なのと感染確率が不明ですので、何も評価できません。そろそろこれらのデータを正確に発表して欲しいものです。

(写真 当クリニック 受付周囲 クリスマスバージョン)。
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新型コロナウイルスへの感染リスクを減らす

日本での新型コロナウイルスPCR検査陽性者は、現在かなり減少していますが、通常のコロナウイルス(いわゆる風邪)と同じく、私たちが感染するリスクは常にあり感染予防に留意する必要は変わりません。

さて、大阪大学大学院医学系研究科糖尿病病態医療学寄附講座の研究グループにより、高インスリン状態を改善すれば新型コロナウイルスへの感染リスクを下げる可能性があると提唱されました。
「血中インスリンレベルが上昇すると、GRP78という蛋白が増加し、新型コロナウイルスのスパイク蛋白質とGRP78との結合が増えて、ACE2(アンギオテンシン変換酵素2)を発現している細胞へウイルススパイク蛋白質が集積しやすくなる=即ち感染しやすくなる」そうです。加齢、肥満、糖尿病があると新型コロナウイルスに感染しやすい理由として高インスリン状態が考えられます。
逆に、高インスリン状態を改善すれば、新型コロナウイルスへの感染リスクを下げる可能性がある訳です。
※GRP78はBip(binding immunoglobulin protein)とも呼ばれ、ヒトではHSPA5遺伝子によってコードされる蛋白質です。新しく形成されて小胞体に移行してきた蛋白質に結合して、それらの蛋白質の立体構造を形成したり重合させたりできるようにするように働きます。
※GRP78は高インスリン環境で誘導され脂肪組織で過剰に存在しています。
別の研究で、ケトン産生食(かなりの低糖質の食事)は、GRP78発現の低下をもたらす という報告もあります。(以上、ドクター江部の糖尿病徒然日記2021年11月1日を参考にしました。)

インスリン分泌を減らす食生活は、糖尿病発症を防ぐばかりでなく、新型コロナウイルス感染を防ぐ可能性が示されました。低糖質食がインスリン分泌を減らします。低カロリー食であっても糖質が多ければインスリン分泌は減りません。9月、10月のブログと同様のテーマですが、大切なことなので何度も書きます。
空腹時血糖値正常、HbA1c正常でも食後高血糖の人は高インスリン状態の場合が多く油断できません。

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秋の果物

私の誕生日は10月なので、柿 葡萄 無花果 蜜柑などの果物が豊富な季節であり多くの果物が一度に味わえて、子供頃はとても嬉しかったのを覚えています。成人になってからも果物は大好きで、毎日必ず何かの果物を食べていました。ところが最近は果物が欲しくて堪らないことは無くなり、何日も果物を食べずに過ごす事もあります。年齢的な味覚嗜好の変化というよりも、おそらく低糖質食生活に慣れたからだと思います。また低糖質食だとビタミンCの必要性がかなり減るのでビタミンCの豊富な果物を体が欲しないのかもしれません。

さて、果物に含まれる主な糖質は、フルクトース(果糖)とグルコース(ブドウ糖)です。スクロース(ショ糖=砂糖)が多いバナナや蜜柑もありますが、最終的には単糖類としてのブドウ糖と果糖になり、一般的に果物には果糖が45~65% 含まれます。野菜に分類されますがトマトの糖は果糖が52%です。

果糖は血糖値(即ちブドウ糖値)を上げないので、果糖を多く含むドライフルーツ・フルーツジュース・ハチミツ・アガベシロップ(リュウゼツラン樹液甘味料)などは低GI値食品とされ良いイメージです。しかし果糖はエネルギー源として利用されず毒性が強いので肝臓で早急に中性脂肪に変換され肝臓に蓄積されます。最終的に肝臓癌や肝硬変になるかもしれない非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の原因の殆どは果糖の過剰摂取と言われています。老化促進の元凶とされる最終糖化産物になる量がブドウ糖の7倍~10倍あるのです。

中性脂肪の多い方に尋ねると果物が好きでよく食べていると答える方が多いです。

とうもろこしから作られるブドウ糖果糖液糖(高果糖コーンシロップ)は、果糖55%・ブドウ糖45%です。果糖の甘さは低温ほど引き立つのでブドウ糖果糖液糖はその低価格もあって清涼飲料水を始めとする多くの食品に使われています。その結果、肥満の人が増えたと言われます。

ブログ020「果糖の真実」の中で、オーガスト・ハーグマイヤーは以下のように警鐘を鳴らしています。

「果糖は『悪糖』で ドライフルーツが飴よりいいという事はない、りんごジュースがコーラよりいいという事もない。果物やフルーツジュースは、最小限に控えてください。」

果物の恐ろしさを知り、おいしい果物は少量味わうだけにしましょう。トマトも要注意です。

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ケトン体の効能

光文社新書 脳の寿命を延ばす「脳エネルギー」革命 佐藤拓己(東京工大応用生物学部教授)著 を読みました。内容をまとめると、脳の寿命を延ばす鍵は「ケトン体」であり、その効能は以下になります。

1) 細胞のエネルギー源になる
2) 記憶保持効果・抗炎症作用(細胞膜にあるHCAR2と言う受容体を活性化して作用する)
3) 脂肪燃焼させる(細胞膜にあるGPR43という受容体と結合して脂肪燃焼酵素群が活性化される)
4) 神経細胞(ニューロン)死を防ぐ(核内にあるHDAC受容体を抑制して抗酸化酵素の抑制を解除する)
5) 前頭葉に多いセロトニン受容体を持つ神経細胞の機能を高めセロトニン機能を高める(心のバランスがとれ幸せを感じる)
6) 脳血流量を増やす
など


ケトン体は、網膜や赤血球以外の細胞のエネルギー源になるのですが、脳細胞のエネルギー源にもなり、ブドウ糖よりも効率が良いのです。血糖値が下がった時にはケトン体がないと神経細胞は活動低下し低血糖症状を起こし、昏睡状態になる事もあります。逆にケトン体が十分あると血糖値が35mg/dLのような「低血糖」でも低血糖症状は起きません。
脳のエネルギー源は血中のケトン体濃度によって変化するのです(同書 文献39)

通常の食事(糖質60%程度)では、ケトン体濃度0.1mM(1L中に0.1ミリモル)でブドウ糖100%、糖質制限時はケトン体濃度1.0mMでブドウ糖70%・ケトン体30%、数日間の絶食後にはケトン体2.5mMでブドウ糖50%・ケトン体50%、ケトン食ではケトン体濃度5mMでブドウ糖30%・ケトン体70%のエネンルギー源比率になる。

ケトン食は1日の糖質数g以下で脂質カロリー80%、蛋白質カロリー20%弱にする食事で、難治性てんかんや癌治療、精神疾患への効果が実証されています。

インスリンの基礎分泌(100pモル/分)があれば、糖質を最高に制限しても血中ケトン体濃度は10mM以上にはならず「生理的ケトーシス」になるのであって、インスリン分泌不足時の「ケトアシドーシス」とは異なります。

糖質過剰摂取時にはインスリン分泌スパイクが生じ、ケトン体産生に必要な酵素(HMGCS2)が強く抑制されてケトン体が産生されないのです。著者は、糖質過多にならないようにして(記載はありませんでしたが糖質40%程度と思われます)血中ケトン体濃度が0.2~0.5mMにしておくのが長生きする秘訣としています。ケトン体とは別に、インスリンやインスリン様成長因子1が老化の本体という「インスリン学説」が紹介されています。
血中ケトン体濃度を0.1mMから0.2~0.3mMに上げてアルツハイマー型認知症の症状が改善できた事例が紹介されています。(緩い糖質制限で到達可能です)
2)~6)の効果で、肥満を防ぎ認知機能を低下させずに楽しく長生きをしたいですね。
また、江部康二医師(ブログ ドクター江部の糖尿病徒然日記の言われるように、ケトン体を高値にして「免疫力向上」させ新型コロナウイルス感染症に対応したいですね。

 


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鳥人間コンテスト・魔改造の夜

楽しみにして観ているテレビ番組はいくつかありますが、鳥人間コンテスト(読売テレビ)と 魔改造の夜(NHK BSプレミアム)は息子たちが出場チームとして参加しているので特に思い入れがあります。

上の息子は、学生時代に居た浜松のY発動機のチームで鳥人間コンテストに数回、現職場のH技研チームで魔改造の夜(お掃除ロボット走り幅跳び)に、下の息子はH大学チームとして鳥人間コンテストに2年前と今年(来月9月2日放映)参加しています。
どちらの番組も、3次元の物体を実際に製作しなければならないのが気に入っています。参加出場するためには期日までに機体や作品を完成させなければならず、楽しみと苦しみどちらが大きいか察するに余りあります。

私自身は、もう解散して無くなってしまったラジコン飛行機クラブの元飛行場が荒れ果てていくのを見て嘆いています。しかし 嘆いてばかりいても仕方がないので、いつかは飛ばせる日が来ると信じて新しい機体の製作をボチボチしています。飛ばしていない機体が貯まってきて廊下の天井は一杯になり、使っていない部屋を占領し始めています。物作りは子供の頃から大好きでした。気乗りして作り始めると時間がすぐに過ぎてしまいます。勉強や仕事が忙しいと余計に作りたくなってしまうものです。
物作りの楽しみは、完成への期待と過程の困難との両面があります。製作過程での失敗やそれをリカバーするための工夫は苦痛でもあり楽しみでもあります。ラジコン機を飛行させて壊してしまう事も度々あり、大破でなければその都度修理しますが、いかに修理するかも楽しみの一つです。
病気の治療も、治癒する日への期待と治療中の忍耐の両面があると思います。症状が改善して毎日の生活が普通にできるようになることへの期待を楽しみとして感じて頂ければ医療者として嬉しい限りです。

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ケトン体を増やす食生活

NHK BSプレミアム 「ヒューマニエンス」2021年7月8日 にて、大阪大学の萩原圭祐特任教授が行った「がんの食事療法」が紹介されていました。

進行癌(ステージ4)患者37人に抗癌剤投与とケトン食(1日の糖質10~30g)を行い5年間経過観察した結果、37人中10人で癌が消滅したとのことです。癌細胞がブドウ糖を利用できなくなり消滅したと考えられるのですが、この結果は信じられないほど良い結果です。(治験登録締切り後なので参加できなかった当院通院中の患者さんがおられました。) 通常は睡眠中に血中ブドウ糖濃度は低下しケトン体は上昇するが、年齢が高くなるとケトン体の上昇が少なくなるという観察事実の紹介もあり、年齢が上がるとケトン体が減少するので発癌しやすくなるのではないかという同教授の仮説も紹介されました。

大阪大学でのケトン食の映像をこの番組で始めて見ましたが、我が家の普段の休日と同じでした。即ち、米飯・パン・麺類・パスタなしの「おかずのみ」です。私は、出勤日は勤務先で昼食を摂り米飯や麺類を食べますので「3食ともケトン食」ではありません。また、時には自宅でも米飯を少し食べますし、間食でお菓子を食べる事もあるので緩い低糖質食といったところです。

番組では、ケトン食を継続するには余程の精神力のある人やストイックな人でないと続かず、その理由としては糖質への欲求がどうしてもあるからだとしていました。それを認めざるを得ませんが、私自身は、必要があればすぐにケトン食を実行できる気がします。

アセトン、アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸をケトン体といいます。3-ヒドロキシ酪酸はケトン基がありませんが「ケトン体」に含めて語られます。肝細胞、脳アストロサイト、腎臓、小腸粘膜上皮で脂肪酸から作成されます。

ケトン体と言うと糖尿病でのケトアシドーシスを思い浮かべる人が多いと思いますが、インスリン不足時のケトアシドーシスとケトン体が多いだけのケトーシスとは異なる状態で、ケトーシス自体は危険ではありません。

通常糖質量食事での血中総ケトン体基準値は、26~122μM/Lですが、胎盤組織液の-ヒドロキシ酪酸濃度は平均22350μM/L(胎児は殆ど「ケトン食」です。)、絶食中やスーパー糖質制限(ケトン食)時には、300~4000μM/Lになります。
ケトン体は脳細胞のエネルギー源になります。通常状態でエネルギーの20%がケトン体(ハーパー生化学) 長期飢餓時のエネンルギー源は、ケトン体70%、ブドウ糖20%、アミノ酸10%(リッピンコット生化学)と記載。
がん治療よりも以前から、難治性てんかん治療として脂質エネルギー比率75~80%のケトン食が実行されており、3-ヒドロキシ酪酸4000μM/L以上でてんかん症状が減少するとのことです。また、アルツハイマー型認知症では脳内でのブドウ糖利用が低下しているのでケトン体が主なエネルギー源になっているそうです。順天堂大学 白沢卓二大学院教授によれば、ケトン体利用が増えると認知機能が上昇したとのことです。
さらに、3-ヒドロキシ酪酸は、炎症反応を誘導する蛋白質複合体であるインフラマソームの一部であるNLRP3を直接阻害しての炎症抑制作用もあります。
がんや認知症を予防し炎症の暴走を防ぐためには少しでもケトン体を増やす食生活を心掛けたいものです。

※診断基準を満たす膵炎、肝硬変、長鎖脂肪酸代謝異常、尿素サイクル異常症では糖質制限は不適切です。

【参考】組織のエネルギー源
エネルギー源としてどうしてもブドウ糖が必要な組織→赤血球(無核なのでミトコンドリアが無いため)。
常に主にブドウ糖を利用する組織→網膜。
ケトン体を利用しない組織→肝臓(脂肪酸は使用する)。
小腸のエネルギー源:グルタミン酸50~60%、ケトン体15~20%、ブドウ糖5~7%。大腸のエネルギー源は短鎖脂肪酸のみ(腸内細菌が食物繊維を分解して作る)。虚血心筋細胞はケトン体優位使用。カルニチンが不足すると、食品油脂に多い長鎖脂肪酸が核内のミトコンドリアに到達できない結果ケトン体産生が減少する。(カルニチン不足の原因は、赤味の肉などの摂取不足、代謝異常、肝硬変、下痢、利尿薬・ピボキシル基配合経口抗菌薬・抗てんかん薬などの薬剤、などです。)

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もう一段掘り下げて考えてみよう

あるブログに、「枇杷の実を小鳥が食べない なぜだろうか 甘い実なのに種が大きいからか」 という意見があり、それに対して、「いえいえ 鳥たちは枇杷の実を食べていますよ。」いう応答がありました。
我が家にある枇杷の実は、木によって甘みが違います。甘い方は用心しないとすぐに鳥につつかれてしまいます(小さな鳥は種が大きいので実ごとは食べず果肉=花托をつついています) 酸っぱい方は殆どつつきません 甘い方の実がなくなると、酸っぱい方もつつくことがあります。枇杷の実を食べないのではなくて甘い実があれば、酸っぱい実はわざわざ食べないのです。ですから文頭の異なる見方はどちらも正しいのです。「甘い実なのに」と決めてかかるので正しい考え方ができないのです。同じように、物事の本質を理解せずに表面だけ見て断じている表現は多々あります。

「痩せている人は糖質を制限すると筋肉が減るのでお勧めしません。」これは条件付きで正しくもあり誤りでもあります。正しい言い方は「摂取カロリーを保たずに糖質を制限すると筋肉が減る」であって、「蛋白質や脂質を増やして摂取カロリーを減らさないようにすれば糖質を制限しても筋肉は減らない」のです。

アルツハイマー病の治療薬としてアデュカヌマブをアメリカFDAが承認しましたが、承認審議を行ったFDAの諮問委員会では昨年11月 賛成0 反対10 保留1 で承認を支持しない勧告を出していました。FDAの承認に反発して二人の委員が辞任しました。そもそも この新薬(モノクロ―ナル抗体薬)は脳内のアミロイドベータを減少させる効果が確認されたものの、患者さんの認知機能改善があったかどうかは全く評価されていないのです。
田頭秀悟医師(脳神経内科医)は「たがしゅうブログ2021年6月13日」のなかで以下のように嘆いておられます。「この承認が多くの人達に肯定的に受け止められた事実をみると、一言で言えば現代医療はニセの科学によって不可逆的なレベルまで歪められてしまったという解釈に至らざるを得ません。」「著しく高額な薬を思慮浅く承認してしまう事は、(似たような他の例もあり)もはや医療は不可逆的に公平性を欠くレベルまで歪んでしまっているのだと思わざるを得ません。医療において言われている科学的根拠というものは、科学の名を借りた偽りの何かであって、それをほとんどの医療者に疑われることなく受け入れられてしまっているのだと思わざるを得ません。科学的に妥当であるかどうかは問題ではなく、社会的にそれが正義だと判断されたことにはいくらお金を費やしても構わないと」
表面だけを見て本質を見ようとしない誤りに警鐘を鳴らす人がおられるのは大いに勇気づけられます。

さて、新型コロナワクチンを接種しない人へのパワーハラスメント相談が増えているそうです。大阪東成区役所では、接種辞退職員を確認できるリストが一部の職場に配られていました。電話相談ホットラインを開設した日本弁護士連合会によると、接種を辞退した看護学生が「実習に参加できずに学習単位がとれないかも」と言われたり、介護施設職員が「ワクチン接種は義務的であり、受けないならここでは働けないぞ」と脅されたりしているとのことです。医療関係者からも「接種者・未接種者のリストが職場に貼りだされているので、接種しないにチェックできる空気ではない」という相談もあるようです。先月のこのブログで紹介しましたが、厚生労働省が「新型コロナワクチン接種についてのお知らせ」で「職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをすることのないようお願いいたします。」と注意を喚起していることに反します。そもそも相談内容はパワーハラスメントに相当する事柄であり断じてあってはならない事です。

同調圧力を生じる雰囲気が色々な方面で蔓延しているように感じます。幻想かもしれない集団の利益の為に個々の自由や信条をないがしろにする、非常に危険な社会風潮と思います。
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新型コロナワクチン接種について(厚生労働省HPの抜粋)

新型コロナワクチン接種についてのお知らせ

接種を受ける際の同意
新型コロナワクチンの接種は、国民の皆様に受けていただくようお勧めしていますが、接種を受けることは強制ではありません。しっかり情報提供を行ったうえで、接種を受ける方の同意がある場合に限り接種が行われます。
予防接種を受ける方には、予防接種による感染症予防の効果と副反応のリスクの双方について理解した上で、自らの意志で接種を受けていただいています。受ける方の同意なく、接種が行われることはありません。
職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをすることのないようお願いいたします。

職場におけるいじめ・嫌がらせなどに関する相談窓口はこちら

⇒人権相談に関する窓口はこちら

新型コロナワクチンQ&A
Ⓠ 認知症などで本人に接種意思を確認することができない場合、家族にて同意書を書いてもらっても良いですか。
Ⓐ 接種には、ご本人の接種意思の確認が必要です。確認が難しい場合は身近な方にご協力いただき、本人の接種の意向を丁寧に酌み取ることなどによる意思確認を行ってください。
接種には、ご本人の接種意思の確認が必要です。それぞれの状況に応じて、家族やかかりつけ医、高齢者施設の従事者など、日頃から身近で寄り添っている方々の協力を得て、本人の接種の意向を丁寧に酌み取るなどにより本人の意思確認を行っていただくようお願いいたします。
なお、ご本人が接種を希望されているものの、何らかの理由でご本人による自署が困難な場合は、ご家族の方等に代筆していただくことが可能です。
(以上、厚生労働省HPから)
ご本人の意思をどうしても酌み取れない場合があります。この場合どうすればよいのでしょうか。
厚生労働省は高齢者施設あて通知で、意思確認ができない場合も成人後見人がいれば家族や主治医、入所施設の職員らと相談して接種できる。としています。
(予防接種法では、保護者の同意があればワクチン接種可能となっていて、「保護者」とは、親権を行う者又は後見人をいう。としてあります。家族の同意のみでは接種できません。)
2021/4/23の衆院厚労委員会で、田村憲久厚生労働相は「どのような形で本人の意思確認をすればいいのかを丁寧に示したい。確認方法を明確にして近く自治体に通知を出す。」と答弁していますが、いまだにその通知は出されていません。(2021年5月18日現在)
インフルエンザワクチンなどでは、ご家族の同意で接種可能とみなされて来ましたが、今回の新型コロナワクチンについては、何故かは分かりませんがそのような特例が政府から示されていません。
このことを、ご家族、施設従事者、接種指示を出す医師、実際の接種者など全ての人が理解し、くれぐれも「受ける方の同意なく、接種が行われること」がないようにしなければなりません。同意なく接種したとすれば予防接種法違反に問われる可能性があり、もし接種後に重大な事態が生じた時には、「重大な過失があった」と追及されるかもしれません。そうならないためにも、「家族の同意で接種可能」という政府通知が早く欲しいものです。

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新型コロナワクチンに関する一考

4月23日に第202回倉敷内科医会で「接種が始まった新型コロナワクチン」の特別講演があります。講師は、川崎医科大学 総合医療センター 小児科部長の 中野貴司先生です。
私は、私の中の疑問を解消したいと思い、以下の質問票を送付しました。
①ワクチン接種による新型コロナウイルス感染死者数減少の目標値は? 目標値なしでは、後日の検証ができないと考えられます。
2021年4月10日現在で、国民の40%ワクチン接種済みのイスラエルでは7日間合計死者数が100万人あたり6.1人。殆ど未接種の日本では、同上100万人あたり1.2人。これをどこまで減らす目標でしょうか。
②ワクチン接種で不顕性感染を含む感染予防が可能でしょうか? その理論

的根拠と実態が知りたいです。
③人口の何%がワクチン接種を受ければ「集団免疫」が獲得できる予想ですか?
④ノルウェーでの事例(75歳以上ではワクチン接種1300人に1人が死亡)を考えると、日本でも75歳以上の高齢者へのワクチン接種メリットは無いのではないか?
⑤新型コロナウイルス不顕性感染者がワクチン接種しても問題はないのですか?
⑥新型コロナワクチン副反応としての死亡(現在まで7人)に関して、専門部会では「因果関係は評価できないが、直接的な関係性を示す事実はない」としている。(4月14日毎日新聞)
「直接的な関係性」の判断基準があるはずなので、それを教えて頂きたい。基準なしの評価は許されない。
⑦副反応としての、ギランバレー症候群・脳炎、抗体依存性免疫増強の事例は、日本でどの程度報告されているか知りたい。

新型コロナウイルス感染は、まだまだ消褪傾向がなく、「ワクチン頼み」の様相を呈しています。しかし人類初のmRNAワクチンです。ワクチン接種ありきではなく、常に冷静に事実を確認・考察することが必要と考えます。

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