インフルエンザでないなら、その発熱の原因は?

インフルエンザ流行の季節になりました。インフルエンザウイルス感染の有無は臨床所見(咽頭後壁のイクラ状リンパ濾胞が特徴的)とインフルエンザウイルス抗原迅速検査で判断しますが、発熱があるのにどちらも陰性の場合には、見逃してはいけない原因がないかどうか苦慮します。

発熱疾患は多岐にわたります。発熱と症状の経過で、感染症か非感染症かを完全には困難ですが区別します。38℃以上の高熱の時は比較的徐脈※がないかどうか確認します。感染症と考えるならSTSTA※※評価して病原体が何か、細菌性か真菌かウイルス・原虫かを推定します。
皮膚病変あればウイルス性全身感染症や蜂窩織炎、頭痛が強ければ髄膜炎、前額部や頬部の痛みや叩打痛があれば急性副鼻腔炎、耳痛があれば中耳炎、喉の痛みが強ければ咽頭炎扁桃炎や喉頭蓋炎、胸痛あれば肺炎胸膜炎、腹痛あれば腹膜炎・胸膜炎や泌尿器婦人科疾患、排尿痛あれば尿路感染・前立腺炎など様々な状況を見て推定診断します。

感染症ではないと考えるなら、腫瘍や循環器疾患(心筋梗塞・肺塞栓、深部静脈血栓など)、外傷、膠原病や自己炎症性疾患などを考えますが、緊急性の高い疾患は外傷や循環器疾患です。
薬剤性の発熱も除外する必要があります。アレルギー、悪性症候群・セロトニン症候群、体温調節変調などが原因になります。薬剤熱は一般的に全身状態が良好ですが、悪寒・筋肉痛・頭痛などの感染症を思わせる症状を伴うことがあります。

高熱だけで他に自覚症状や身体所見がない場合は身体診察だけでは診断困難で、敗血症・感染性心内膜炎・悪性腫瘍熱などを区別しなければならず、所見がある場合よりも心配です。

高齢者の方の場合は、高熱だけの訴えで受診されても肺炎・腎盂腎炎や蜂窩織炎のことがあります。
インフルエンザ抗原迅速検査が陰性の時は、ではその発熱の原因は? と常に悩まなければなりません。

※比較的徐脈
通常、体温が1度上昇するごとに1分間の脈拍数は8~10増加しますが、38℃以上の発熱にもかかわらず 脈拍増加8以下の時に「比較的徐脈」と考えます。薬剤熱や中枢神経疾患のことが多く、感染症ではレジオネラ症、クミドフィラ症(クラミジア症)、チフス(渡航歴なくてもありうる)、ブルセラ症、髄膜炎菌感染などを考えます。逆に体温1度上昇ごとの脈拍数増加が20以上あれば細菌感染症を強く疑います。平常時の脈拍数を知っておく必要があります。2度以上の房室ブロックのある人やβ遮断薬・カルシウム拮抗薬(降圧薬・狭心症薬)を服用している人には当てはまりません。

※※STSTA 感染源のチェックリストです。病気(感染症)の人との接触、結核患者さんとの接触、性的接触、旅行歴、動物接触 の代表的5項目です。

平成南町クリニック 玉田