平成南町クリニック」カテゴリーアーカイブ

原発性免疫不全症について

蜂窩織炎(ほうかしきえん)を繰り返す患者さんがおられました。
倉敷平成病院の外来で免疫グロブリンの検査が行われ、選択的IgA欠損症と判明しました。IgAは粘膜表面(喉、気管支、腸)に存在して病原菌やウイルスの侵入を防ぐ役割があります。
原因の多くは遺伝性ですが薬剤の影響もあります。選択的IgA欠損症は、300以上の疾患がある原発性免疫不全症の内の1つです。

以下の10の徴候の1つ以上が当てはまる時は、原発性免疫不全症を疑う必要があります。(難病情報センター資料)
1. 乳児で呼吸器・消化器感染症を繰り返し、体重増加不良や発育不全が見られる。
2. 1年に2回以上肺炎にかかる。
3. 気管支拡張症を発症する。
4. 2回以上、髄膜炎、骨髄炎、敗血症や、皮膚膿瘍、臓器内膿瘍などの深部感染症にかかる。
5. 抗菌薬を服用しても2ヶ月以上感染症が治癒しない。
6. 重症副鼻腔炎を繰り返す。
7. 1年に4回以上、中耳炎にかかる。
8. 1歳以降に、持続性の鵞口瘡(がこうそう)、皮膚真菌症、重度・広範な疣贅(イボ)が見られる。
9. BCGによる重症副反応(骨髄炎など)、単純ヘルペスウイルスによる脳炎、髄膜炎菌による髄膜炎、EBウイルスによる重症血球貪食症候群に罹患したことがある。
10. 家族が乳幼児期に感染症で死亡するなど、原発性免疫不全症候群を疑う家族歴がある。

また、原発性免疫不全症では下記の感染症状が様々な組み合わせで見られます。(難病情報センター資料)
1.主に抗体産生不全によるもの
反復性気道感染症(中耳炎、副鼻腔炎を含む)、 重症細菌感染症(肺炎、髄膜炎、敗血症など)、気管支拡張症、膿皮症、化膿性リンパ節炎、遷延性下痢
2.主に細胞性免疫不全によるもの
遷延性下痢、難治性口腔カンジダ症、ニューモシスチス肺炎、ウイルス感染の遷延・重症化(ことに水痘)

免疫グロブリンにはIgAの他にIgG、IgM、IgD、IgEがありそれぞれに欠損・過剰時の疾患があります。
選択的IgGサブクラス欠損症ではIgG1、2、3、4の1つないし複数のサブクラスが欠損・低下します。
IgG2が低下すると莢膜を持つ細菌(肺炎球菌・肺炎桿菌・インフルエンザ菌・髄膜炎菌)の感染(中耳炎など)を繰り返しやすくなります。
選択的IgM欠損症では自己免疫疾患を合併しやすいと言われています。
IgD、IgEでは多すぎる時に発症する疾患があります。

感染症を繰り返す時には、後天性免疫症候群(AIDS)や薬剤、悪性腫瘍、脾臓機能低下、糖尿病、肝硬変などの続発性の免疫不全以外にも上記の原発性免疫不全症を考えておく必要があります。
意外と多いのかもしれませんが、鑑別診断は容易ではありません。疑いを持った時は、感染症科や血液内科の専門の先生にお願いすることになります。

平成南町クリニック 玉田

お知らせ
来年1月から平成南町クリニックの外来診療を一部変更いたします。
詳しくは倉敷平成病院HP案内欄の関連施設「平成南町クリニック」をご参照ください。

尿の泡立ちは病気のサイン?

気温が下がって来ると、年のせいもありトイレに行く回数がやや増えて来ます。普段は気にならなくても、時々妙に泡立つので心配になることもあります。おそらくどなたでも同じような経験がおありだと思います。
尿はなぜ泡立つのでしょうか? 泡立つ尿は何かの病気のサインでしょうか。
結論から言うと病気のサインであればそうでない事もあるとなります。
界面活性物質(石鹸も界面活性物質です)が含まれると、出来た泡が壊れにくくなり泡立ちます。尿に正常に微量含まれるウロビリノーゲンは界面活性物質です。濃縮尿だとウロビリノーゲン濃度が高くなり泡立ちやすくなります。また尿が酸性に傾いても尿の表面張力が低下し泡立ちやすくなります。また尿に含まれる蛋白質も界面活性作用があり尿蛋白が多いと泡立ちます。特別な疾患がなくてもこのようになることはあるので、一時的な尿の泡立ちは左程気にすることはありません。
しかし、いつまでも続く時やきめ細かいクリーミーな泡であるなら病気を疑っての検査が必要になります。1回の尿検査だけでは異常を見落とすかもしれないので、時刻や日にちを変えて複数回検査をして確かめるのが良いと思います。
通常は出現しないビリルビン(水溶性の間接ビリルビン)が尿に含まれると尿は褐色調が強く泡立ちます。(ビリルビンも界面活性物質です) ビリルビンが多くなる疾患を考える必要があります。
尿蛋白が多く出る疾患には糸球体腎炎、糖尿病腎症、膠原病腎障害、ネフローゼ症候群などがあります。
血糖値が高く尿糖が出現すると尿の粘稠度が高くなり泡立ちやすくなります。食後の尿だけ泡立つ時には食後高血糖が疑われます。
尿の泡立ちが気になる方は尿検査を受けみられてはどうでしょうか。

平成南町クリニック  玉田

下記の書物やネット情報を参考にしました。
異常値の読み方が身につく本(村上純子著 じほう株式会社)
徳島県医師会 健康相談 2016/12/21 鴨島川島クリニック 川原和彦先生
医師水野のアメブロ 2016/8/27
東邦大学医療センター 大橋病院 腎臓内科 尿に関するQ&A

「血液検査だけでは診断できない」不明熱  

帝京大学ちば総合医療センター第三内科(血液・リウマチ)講師の萩野 昇先生の教育講演が10月3日にありました。演題名は「不明熱・不明炎症へのアプローチ~リウマチ科医の視点から~」です。

不明熱とは、大雑把に言うと原因がなかなか判らない発熱と言うことです(最終的には原因が明らかになる場合が殆どなのですが)。以下の内容が記憶に残りました。

「血液検査だけでは診断できない」不明熱には次のような疾患があるとのことです。
血管炎(結節性多発動脈炎、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎)、リウマチ性多発筋痛症、成人Still病、再発性多発軟骨炎、ベーチェット病、炎症性腸疾患、サルコイドーシス、周期性発熱症候群、IgG4関連疾患。

また発熱患者さんの炎症反応は陽性であることが多いのですが、「炎症反応陰性」の不明熱もあり、(先生の)個人的リストは以下のとおりです。
未確認の自己炎症症候群、ベーチェット病(の一部)、Q熱、ライム病、ある種の結合織病(エーレス-ダンロス症候群の一部)。

さらに不明熱の原因疾患に、リンパ腫と気付けないリンパ腫があることを知りました。
そのリンパ腫の特徴は、
・リンパ節腫脹がない
・リンパ節の検査をしても腫瘍細胞が認められない
・リンパ節腫脹が自然経過や治療修飾で退縮してしまう
であり、肝臓や脾臓の組織検査で初めて診断がつくそうです。

発熱患者さんの発熱の原因を毎回「正しく」診断できているかと言うと、自信がありません。症状の経過 身体所見 血液・尿検査 画像検査などで原因を絞り込んでいくのですが、上記のような疾患を想起できなければ真の原因を見逃す可能性があります。たとえ抗生物質を使って熱が下がったとしても、抗生物質が効果のある細菌性感染症だとは言い切れません。

講演会で挙げられた不明熱の原因疾患は経験することが稀な疾患が多いので、疾患の全体像を常に繰り返し学習しておく必要があります。

平成南町クリニック  玉田


一般外来で気付くためのヒント
(参考 萩野 昇著 ロジックで進めるリウマチ・膠原病診療、岩田健太郎編集 診断のゲシュタルトとデギュスタシオン1、2  など)
○結節性多発動脈炎=発熱+中型血管の虚血症状(四肢末端疼痛・睾丸痛・筋肉痛・間欠的で激しい腹痛)
○高安動脈炎=若い女性で持続する微熱・倦怠感+頚部・鎖骨下血管雑音、
○巨細胞性動脈炎=高齢者初発頭痛(頭皮痛・側頭動脈圧痛)+顎跛行・一過性黒内障
○リウマチ性多発筋痛症=60歳以降の急性~亜急性の全身の痛み(筋肉痛ではなく滑液包炎の痛み)
○成人Still病=若い女性でかなりの高熱でも割合元気 有熱時のサーモンピンクの痒くない皮疹
○再発多発軟骨炎=軟骨(鼻・耳介・喉頭・気管など)の変化に伴う所見や症状がある
○ベーチェット病=再発する口腔アフタ性潰瘍・外陰部潰瘍・膿胞性丘疹(針反応)・眼の症状
○炎症性腸疾患=クローン病:下痢・腹痛+肛門潰瘍・周囲膿瘍、潰瘍性大腸炎:下痢血便+アフタ性口内炎
○サルコイドーシス=眼のかすみ眩しさ・皮膚紅斑・不整脈・神経系異常など(診断きっかけは胸部写真異常)
○周期性発熱症候群=半日~数週間続く発熱が6~12ヶ月の間に3回以上繰り返し、無熱時に無症状
○IgG4関連疾患=唾液腺、肺、膵臓などに病変がある
○自己炎症症候群=周期的な発熱を繰り返す 他の疾患では説明できない症状・所見
○Q熱=1ヶ月以内に動物と接触歴のある人が肺炎・肝炎を発症
○ライム病=マダニに咬まれた、咬まれるような環境の人が全身の症状を来す
○ある種の結合織病(エーラス-ダンロス症候群の一部)=過伸展できる脆弱な皮膚で血腫生じ易い

脈拍・心拍

当院新患の高齢者の方で、動悸は自覚しないのに脈が130の人がおられました。脈拍は整で心電図ではP波が不明で狭いQRS波でしたが、心拍数130でした。RR間隔は一定であり、心房粗動の2対1伝導を考えました。頻拍を改善させる薬剤の注射をして経過をみるべきなのですが、当院の医療体制では実施困難ですので病院の循環器科の先生に御紹介しました。頻拍抑制薬の注射で頻拍は改善し、心電図では心房細動が出現し抗凝固薬が開始されました。心房細動は左房内の血栓を生じ易く脳梗塞の原因になりますので、危険性を評価して有益性があれば抗凝固薬を開始することが多いです。以前に、軽度の動悸を訴えて受診された中年男性で不整な頻脈があり心電図で心房細動が確定できた方がおられました。カテーテルアブレーション治療の適応があるので専門医に紹介しましたところ、精査にて冠動脈疾患が判明しました。

一方、脈の少ない徐脈も心配な不整脈です。右胸痛で受診された若い方で脈が40の人がおられました。胸痛の原因は右自然気胸でしたが、胸痛の鑑別診断のために記録した心電図でP波とQRS波が全く連動していない波形があり房室ブロックの可能性がありました。しかし房室ブロックを思わせる症状がないので何回か心電図をとり直したところ、徐脈ですが正常な洞調律の波形も見られました。日常的に激しいスポーツをしている方で、いわゆるスポーツ心臓と思われました。QRSは狭いので房室整合部性調律であり、その成因は普段の徐脈にあると考えられました。脈が40のままであれば激しい運動には耐えられませんので、運動時には脈拍は増えていると思われます。
脈拍異常の有無は触診をすれば普通はすぐ判りますが、その異常が何であるかはやはり心電図ということになります。しかし、診察だけでもある程度推定することは可能です。規則性のない不整脈は殆どが心房細動です。また、規則性があり脈拍欠損を生じている時には、心音を聴診しながら脈をみると1拍欠けている時に心音がやや小さく早めに聴こえれば大抵は上室性期外収縮です。心室性期外収縮の時は早めの心音がかなり小さく聴こえます。頻脈の時は脈の間隔の変化が感じにくくなるので診察だけでは原因追究が困難です。

頻脈でないけれども心音で心拍数を数えると頻拍という時もあります。脈拍の異常を診察で判断するには、脈の触診と心音聴診の両方を同時に行うことが有用です。
診察時には努めて脈拍と心音を同時に診るようにしています。

平成南町クリニック  玉田

レムナント様リポ蛋白コレステロール RLP―C ( Remnant-like particle cholesterol )

葡萄、西瓜、桃、梨、無花果、もう少しすると柿などおいしい果物が出回ります。果物には果糖、ブドウ糖、ショ糖などの糖質が含まれます、(果糖>ブドウ糖>ショ糖) 果糖そのものは血糖値を殆ど上昇させませんが下記の性質があるので、より甘く品種改良された果物や果糖・ブドウ糖液を使用した飲み物などは摂り過ぎると動脈硬化の元凶となり得ます。
果糖は、蛋白質と糖が結びついて作りだされる終末糖化産物を極めて生じ易く、肝臓での脂肪合成を誘導しやすい糖質であり、多く摂ると血中の中性脂肪濃度が上昇し肥満の原因となります。おいしくて食べると幸せ感のある果物ですが、肥満・動脈硬化・高脂血症・糖尿病・高血圧の方は食べる量に注意しましょう。
さて、本年5月から脂質代謝異常の評価項目としてRLP-Cが倉敷平成病院検査室で測定できるようになりました。コレステロールが動脈硬化に関連することは以前から知られていますが、種々のコレステロールの中で真の原因物質が何であるかはまだ確定されていません。LDLコレステロールのなかで小粒子のLDLコレステロールは酸化しやすく、酸化LDLコレステロール値が動脈硬化と密接に関連するとされてきました。しかし原因ではなくて動脈硬化の結果という見方もあります。
近年、リポ蛋白(カイロミクロンや種々のコレステロールの総称)の中でカイロミクロンとVLDLコレステロールがリポ蛋白リパーゼという酵素で分解されて残った代謝産物の「レムナントリポ蛋白」が動脈硬化の原因と考えられるという研究結果が発表されています。但しこの代謝産物は速やかに血中から消失するので測定が困難であり、その代わりに「レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)」を測定して評価します。
血液中の脂質は食後の時間と共に変化するものと変化しにくいものがありますが、このレムナント様リポ蛋白コレステロールは健常者では食後増加は少ないが、虚血性心疾患患者や糖尿病患者では食後増加しなかなか低下しないようです。(食後血糖値に似ています)
基準値は空腹時で7.5mg/dL以下です。糖尿病や冠動脈疾患の既往患者では5.2mg/dL以上は高リスクとされています。内臓脂肪蓄積群やメタボリック症候群ではLDLコレステロール値が基準内であってもRLP-Cが高値になっていたとの発表があります。「高レムナント血症」という概念も提唱されています。
レナント様リポ蛋白コレステロール値はカイロミクロンやVLDLコレステロールの代謝産物なので、これらを減らすことによって低下すると思われますが、これらは中性脂肪を多く含んでいるリポ蛋白です。利用されなかったブドウ糖がインスリン作用により肝臓に取り込まれ、また果糖はそのまま肝臓内で中性脂肪に変えられて脂肪組織に蓄積されていきます。従って過多の糖質を摂らないようにすれば、中性脂肪は減ってムナント様リポ蛋白コレステロール値が低下すると考えられます。

平成南町クリニック  玉田 電話086-434-1122

 

2020年に流行が懸念される感染症

7月13日に倉敷中央病院で、国立国際医療研究センター・国際感染症センターの忽那賢志(くつな さとし)先生の「2020年に向けたグローバル時代の感染対策」という教育講演がありました。日本から海外への1年間の観光客数は過去20年間1800万人弱で不変だが、海外から日本を訪れる観光客は最近5年で急増し2017年には年間2900万人弱になっている。人の移動が増えて海外からの感染症が日本に持ち込まれることが多くなっているとのことです。
注意すべき新興感染症について概説がありました。そして2020年東京オリンピック(7月24日開幕~8月9日閉会)に流行が懸念される感染症として、
蚊が媒介する感染症:デング熱 チクングニア熱 ジカ熱など、髄膜炎菌感染症、麻疹・風疹・おたふくかぜ・水痘、インフルエンザ(熱帯・亜熱帯地域からの持ち込み)、感染性腸炎(ノロウイルス、サルモネラ、病原性大腸菌O157)が挙げられるとのことです。他に注意すべき新興感染症としては、
結核 MERS(中東呼吸器症候群) SFTS 鳥インフルエンザ スーパー耐性菌による感染症(海外での入院治療歴でリスク増大)が紹介されました。
海外との往来で新興感染症に遭遇する機会は増えており、特定の医療機関以外でも新興感染症を診る可能性があり、第一線の診療所でも海外渡航歴は医師が確認すべき事柄であり患者さんからの申し出を待っていてはいけないと注意されました。
いつも感じていることですが、介護施設など集団生活の場では集団感染を防ぐため、発端になる人の発見に留意しなければならないと肝に銘じています。講演会で挙げられた疾患のうち、日常的に可能性の高い集団感染に結核症があります。
常々疑問に思っている「結核を否定するのにどの程度の検査をすればよいか」を質問しました。忽那先生の回答は、「診断と感染対策に分けて考える。 診断については完全に否定することは非常に困難。感染対策については個室管理 N95マスクが基本」というものでした。 結核を一応否定する最低限の検査項目・回数について尋ねましたが、単純明解な回答はありませんでした。
結核に関する検査の内容・頻度と結核症を否定できる可能性の割合についての研究論文を調べてみなければならないと感じました。

平成南町クリニック  玉田 電話086-434-1122

 

ロコモティブシンドローム到来を遅らせるぞ!

6月16日に宮島弥山の頂上(標高535m)まで行って来ました。登りましたと言いたいのですが途中まではロープウェイなので「行って来ました。」です。ロープウェイの終点獅子岩駅(標高433m)から一旦山を下りそれから上がって行くので140mを登ったことになります。それでも途中で何度か息が切れました。
山頂手前の「消えずの霊火堂」で家内安全を祈願し、「くぐり岩」を通り山頂に到着しました。山頂には巨石群があります。展望台から四方360度の視界が開けています。鹿はいませんでしたが人に慣れた烏が来訪者からの食べ物を狙って近寄って来ます。

しばらく休憩してから、下りは徒歩のみで厳島神社まで「下山」しました。段差の大きな石段が続く坂道が殆どで、かなり足に負担がかかりました。つま先が小さな石や木の根に何度となく引っ掛かりそうになり、足を引きずるような歩き方になっていたと反省しています。
宮島へは幼稚園の頃から遠足などでよく訪れていましたが、弥山山頂まで行ったのは初めてです。天候に恵まれ幸運でした。
本年秋に古希を迎えますので来年の夏には富士山の山頂を目指す計画です。学生時代に8合目まで登りましたが、下から吹き上げる激しい風雨となり山頂を断念した経緯があります。
それにしても加齢による足腰の衰えを自覚するようになりトレーニングの必要性を痛感しています。私の祖父は105歳まで生き、102歳ころまで独りで出歩いていました。

その祖父は70歳を契機に独自の柔軟体操(今で言うストレッチ)を始めていました。「晴耕雨読」をモットーに植林地の枝払いなど山を歩き回っていたのを覚えています。祖父を見習い私もストレッチ・筋肉トレーニングを行い、ロコモティブシンドロームになるのを避けることは不可能でしょうが、できるだけ遅くなるよう心がけたいと思っています。

平成南町クリニック  玉田 電話086-434-1122

湿布剤による光線過敏症  市販薬にも注意!

5月なのに真夏日になった日もあります。紫外線がますます増えてきていますので光線過敏症に過敏にならざるを得ません。2016年6月17日の本ブログで薬剤部からの「湿布の適正使用」でも記載されていますが、湿布剤での光線過敏症についてまとめてみます。湿布剤によるものは外因性光線過敏症のうち光アレルギー性皮膚炎に分類されます。ケトプロフェン以外にジクロフェナクを含む湿布剤にも光線過敏症の注意が記載されており、どちらも市販薬があり要注意です。

ケトプロフェン・ジクロフェナク(非ステロイド性消炎鎮痛剤の1種)含有湿布剤の 添付書(薬会社の薬説明書)や市販薬使用上の注意 の記載事項
《禁忌(使用してはいけない人・状況)》①本剤への過敏症の既往のある患者 ②アスピリン喘息またはその既往のある患者 ③以下の薬剤や成分を含む製品に過敏症の既往のある患者 ★チアプロフェン酸(内服薬 光線過敏症起こしうる) ★スプロフェン(チアプロフェン酸の異性体):外用塗布剤(軟膏・クリーム剤) ★フェノフィブラート:高脂血症治療薬 ★オキシベンゾン:日焼け止め剤や化粧品に含有 光線過敏症・発癌性環境ホルモン作用のリスクあり ★オクトクレリン:耐水性日焼け止め製品に含有 ケトプロフェン併用で光線過敏症のリスク増加 ④光線過敏症の既往歴のある患者 ⑤妊娠後期の女性
《注意》 重篤な接触皮膚炎・光線過敏症が発現することがある 重度の全身性発疹に進展する例の報告がある 損傷部位に使用しない
《副作用》 光線過敏症:使用後数日から数か月を経過してから発現することがある

湿布剤を使用してから数か月後に皮膚炎を発症することがあるので、夏になり半袖・半ズボンで直接日光を浴びて気付くこともあります。処方する際に注意点を説明はしていますが、毎回は説明していないかもしれません。市販薬にも光線過敏症の頻度が高い湿布薬がありますので、成分表や使用上の注意(いずれも小さい字で書かれています)をよく見るようにしましょう。

平成南町クリニック  玉田

《補足》 外因性光線過敏症の分類
光毒性皮膚炎(日焼け症状)  初回曝露でも発症(アレルギー無関係)
ソラレン コールタール サイアザイド薬 テトラサイクリン
光アレルギー性皮膚炎(紅斑・水疱) 初回曝露では発症しない 全身に発症する可能性がある
貼付剤・外用薬(光アレルギー性接触皮膚炎) ケトプロフェンは頻度多い  ジクロフェナク
内服薬 クロルプロマジン サイアザイド薬 テトラサイクリン シプロフロキサシン その他多種あり

模倣の名人 Great Imitator

 

出席はできませんでしたが本年3月3日の岡山胸部疾患研究会講演会のテーマは「結核」と「肺癌」でした。
岡山県医師会報 平成30年4月10日発行1475号に要旨が載せてあります。岡山県保健福祉部健康推進課 感染症対策班の佐藤友季氏の情報提供の要約は以下のとおりです。
岡山県で平成28年度に新たに結核症として登録された患者数は208人で人口10万人あたり10.9(結核罹患率)であり、全国の13.9より少なく、また全国と同じく減少傾向にある。岡山県の結核患者は70歳以上の高齢者が約7割(全国は6割)で、次のような理由で6人に1人の割合で受診や診断の遅れがある。
(注釈:症状出現から受診・診断を経て結核登録までが3ヶ月以上を遅れとする)
高齢者結核の特徴:咳などの典型的な結核の症状が少ない、合併症が多く症状が複雑、空洞形成割合が少なくなど画像が非典型的、認知症・寝たきりなどで症状を訴えられない
かかりつけ医を受診される高齢者の結核早期発見のために、症状がなくても年1回は胸部X線写真検査を(患者さんに)勧めて頂きたい。
岡山県として結核医療相談・技術支援センターを南岡山医療センターと岡山県健康づくり財団附属病院に委託設置しているので積極的に活用して頂きたい。(引用終わり)

当院では、ピースガーデン倉敷特養に入所されている方やグランドガーデン南町に入居されていて当院を受診されている方に年1回は胸部写真を撮影しています。また住民検診や人間ドックなどを受けておられない高齢の受診者の皆様にも症状はなくても年1回の胸部写真をお勧めしています。咳が1ヶ月以上長く続いていた方には肺結核症を除外するために胸部写真を撮っています。
私たち医師としましては、診断の遅れ(受診から結核登録までが1ヶ月以上)をなくすために常に「結核」を疑うことが必要です。結核は「模倣の名人」と呼ばれるように、リウマチやSLEなどの自己免疫疾患やベーチェット病などの自己炎症性疾患の症状・所見を示したり、また一般の細菌性肺炎の画像所見だったりすることがあるので常に疑っておかないと診断ができません。開放性肺結核の診断が遅れると集団生活の場や医療・福祉施設では集団感染となってしまうので細心の注意が必要です。
補足:肺結核や喉頭結核は、空気感染(気流にのり長時間浮遊する飛沫核に含まれる病原体による感染)をおこす疾患です。空気感染を起こす疾患には麻疹(はしか)、水痘(水疱瘡)、播種性帯状疱疹のウイルス感染症もあります。本年3月下旬に確認された沖縄での麻疹が拡大しており、さらに他県への拡大が懸念されています。

平成南町クリニック 玉田

感染予防抗体価

4月に医療関連の学校や大学校・大学に入学される方々が、麻疹や風疹ワクチン接種のために当院を受診されています。医療機関での実習や研修の予定がある場合、感染予防できる抗体量を持っている必要があります。一般的には発症予防に充分な抗体価(抗体価陽性)があれば良いです。しかし医療関係者は各自が麻疹などを発症してなくても、ウイルスに感染してしまうと患者さんや利用者さんに麻疹などを感染させてしまう危険性が生じます。そこで感染予防に必要な抗体量(発症予防の抗体量よりも多い)を持っていることが望まれます。
2014年9月に「医療関係者のためのワクチンガイドライン第2版」が日本環境感染学会から出されました。
対象となるウイルスは、B型肝炎・麻疹・風疹・流行性耳下腺炎・水痘の各ウイルスです。
B型肝炎ウイルスについては、患者さんに接触したり血液や体液に接触する可能性がある場合を除いて特に注意書きのない教育機関が多いようです。
麻疹・風疹・流行性耳下腺炎・水痘の各ウイルスについては図1のフローチャートに基づいて免疫状態証明書の提出を求めています。感染予防に必要な抗体価は「基準を満たす抗体価」で示されています。(表1)
これらの疾患に罹ったことがあると終生免疫が生じると考えられていましたが、実際には抗体価は時間と共に低下していくことが判っています。終生免疫があると思われていたのは、実は時々ウイルスに曝露されて抗体価が再上昇していたからなのです。疾患自体が殆ど流行しなくなるとウイルス曝露がなくなり抗体価が維持されなくなる可能性は十分あります。まだまだ水痘や流行性耳下腺炎の流行はあります。風疹も地域的に流行は起こっています。麻疹はまだ根絶されてはいませんが流行はかなり減っています。
ワクチンを2回接種すれば感染防止抗体量ありと判定して抗体量測定は必須とされていませんが、実際に2回接種してもどうしても抗体陽性にならない人も存在します。また、陽性になっても数年以上経過すると抗体価は減少して、発症予防抗体価は維持できていても感染予防抗体価に達していない場合があることが判明してきています。「MRワクチン2回接種後(第2期、第3期)の血清抗体持続に関する検討  小児感染免疫 第29巻 No1、2017年」 本論文は6年後の検査結果の検討ですが、論文筆者はさらに長期間の検討を要すること、MRワクチンの3回目接種の検討も必要と結んでいます。
当院を受診された方の中に麻疹ワクチン2回接種後11年後でしたが、上記の内容を説明して麻疹抗体価を測定してみるようお勧めした方がおられます。抗体価は陽性でしたが基準に達していなかったので麻疹ワクチンを1回追加接種としました。ワクチン接種歴によらず全ての抗体価を検査するよう求めている医療関連教育機関もありました。
私見としましては、罹患歴やワクチン接種歴に関係なく抗体価を測定して、感染防止抗体価(基準を満たす抗体価)がない場合に、ワクチン接種歴に応じて追加ワクチンを1回ないし2回接種するのが合理的だと考えています。それらの費用は現在全て実習予定者本人負担ですが、実習生自身の発症を防ぐ目的以上に患者さんや利用者さんへの感染を防ぐことが第一の目的なのですから、教育機関が負担したり補助したりすべきではないでしょうか。

 

(図1)

(表1)

 

 

 

 

 

 

 

平成南町クリニック 玉田