正常圧水頭症治療と臨床工学技士のフォロー体制について

正常圧水頭症は、歩行障害、認知障害、排尿障害の3つの症状を特徴とする疾患です。脳の中にある脳室と呼ばれる空間には脳脊髄液が存在していますが、水頭症は脳脊髄液が異常に留まることで脳室が拡大し、脳を圧迫することで歩行障害、認知機能低下、失禁などの症状が現れると言われています。正常圧水頭症には、くも膜下出血や髄膜炎などの後に続発する続発性正常圧水頭症と、原因の明らかでない特発性正常圧水頭症(idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus:iNPH)に分けられ、70歳代で多く発症し男女差はありません。

特発性正常圧水頭症は、治療可能な認知症(treatable dementia)の1つとして知られていますが、その他の認知症でもみられる症状でもあるため、診断されず見逃されていることもあり、思い当たる症状があれば倉敷ニューロモデュレーションセンターの「歩行障害外来」にご相談下さい。 外来診療で「問診」・「MRI画像診断」でiNPHが疑われる場合は髄液排除試験「髄液タップテスト」を行い、症状改善が得られるか検査を行います。iNPH治療方法として、髄液シャント術が行われ、L-Pシャント術(脊髄のくも膜下腔という部分から、管を腹腔に通す方法)とV-Pシャント術(隋骸骨に小さな穴をあけ、管を脳室から腹腔に通す方法)があります。術後の経過としては、歩行障害は70%~80%、認知障害は60%~70%良くなると言われています。

臨床工学技士は手術に立会い、髄液を調整するバルブの設定圧を医師と確認しています。また、術後に設定圧が適切に維持されているか確認し、患者さまには植込みデバイスカードに記載されている注意点や、MRI撮像に関する説明を行っています。治療経過とともにバルブの設定圧変更が必要となった場合、医師の指示の下、調整を行っています。退院後は定期的に外来診療で医師の診察となりますが、診察前に臨床工学技士がバルブの設定圧に異常がないか確認を行います。

 2022年度の症例数は10例で、外来診療のフォロー体制も円滑に行えています。今後も臨床工学技士が治療に貢献できるようフォローアップに努めたいと思います。

 

臨床工学技士
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