機能的脳神経外科(機能外科)とは

機能的脳神経外科(機能外科)とは、脳の機能障害を改善させるための外科的治療です。

対象となる疾患は体をうまく動かせなくなったりするパーキンソン病や本態性振戦(ふるえ)、自分の意思とは別に体が勝手に動いてしまうジストニアや頚性斜頚などの不随意運動症です。
さらには脳や脊髄の障害が原因で耐え難い痛みが起こる難治性疼痛や、薬では十分にコントロールできない難治性てんかんなども外科治療が適応となることがあります。
片側の顔面の筋肉がピクピクと痙攣を起こす半側顔面けいれんや、片側の顔面に痛みが起こる三叉神経痛も手術で治すことができます。

神経組織自体に外科処置を行い、その機能を変化させることで症状を改善・緩和させる治療です。



機能的脳神経外科(機能外科)とは


機能的脳神経外科の主な対象疾患


パーキンソン病

パーキンソン病
脳の中の「ドパミン」と呼ばれる神経細胞が減少し、

  • 振戦(ふるえる)
  • 動作緩慢(動きが小さく・鈍くなる)
  • 筋固縮(筋肉がこわばる)
  • 姿勢保持障害(バランスがとりにくくなり、転びやすくなる)

を主な運動症状とする病気です。

加齢に伴って発症しやすくなりますが、40歳未満で発症することもあり、「若年性パーキンソン病」と呼ばれます。珍しい病気ではなく、およそ1000人に1人~1.5人、60歳以上では100人に約1人の患者さんに発症し、人口の高齢化に伴い患者さんは増加しています。

進行性の病気であり、一旦発症すると自然によくなったり治ったりすることはありません。

パーキンソン病の詳細・治療法について


ジストニア

ジストニアジストニアとは、筋肉の緊張の異常によって様々な不随意(自分で制御できない)運動や肢位、姿勢の異常が生じる状態をいいます。

症状は筋肉の異常収縮によるものですが、筋緊張を調節している大脳基底核という部分の働きの異常や上部脳幹、小脳など中枢神経が集まる部位において何らかの障害が起こるためと考えられています。

ジストニアの詳細・治療法について


本態性振戦

本態性振戦原因の不明な、あるいは特定の原因によらない(本態性)、規則的な不随意運動(振戦)を生じる疾患のことで、いわゆる「ふるえ」です。
どの年齢層でも起こりますが、高齢の患者さんに多く見られ40歳以上の5%程度で存在し最もよく見られる不随意運動症です。

ふるえ以外の症状はありませんが、重度になるとコップが持てない、字が書きづらいといった日常生活に支障を来すこともあります。
本態性振戦によるふるえは精神的な緊張で強まることが知られており、十分な睡眠をとり、リラックスした状態ではふるえが軽くなる場合があります。

本態性振戦の詳細・治療法について


慢性疼痛(神経障害性疼痛)

慢性疼痛慢性疼痛とは、特定の原因がなく、痛みが慢性的に続くものをいいます。けがや病気などが完治した後も3か月以上痛みが続く場合や、がん、関節炎、糖尿病、線維筋痛症などの慢性疾患や治らないけがが原因の痛みが続く場合などが慢性疼痛に該当します。

神経障害性疼痛とは、感覚神経が障害されて生じる痛みです。神経が過敏になり、痛みの信号が出過ぎてしまう状態です。神経障害性疼痛は、通常の痛み止めの効果が期待できず、難治性の痛みになりやすい傾向があります。

慢性疼痛の詳細・治療法について


痙縮

痙縮痙縮(けいしゅく)とは、意思とは関係なく筋肉が緊張しすぎて、手足が突っ張ったり曲がったままになってしまう状態のことです。

手指が握ったままとなり開きにくい、ひじが曲がる、足先が足の裏側のほうに曲がってしまうなどの症状がみられます。

脳卒中の後遺症として、時間の経過とともにまひ(片まひ)と一緒にあらわれることが多い運動障害の一つです。

痙縮の詳細・治療法について


特発性正常圧水頭症

水頭症とは、何らかの原因で脳脊髄液が多くなっている病態のことです。水頭症と聞くと、子供の病気と思っている方も多いと思われますが、特発性正常圧水頭症は高齢者になってから発症する水頭症で、過剰に増えた脳脊髄液の影響で、脳の前頭葉が広範囲にわたって障害されることにより、様々な症状が現れます。

歳だからしょうがない、ということで病院にも行かず、放置されていることも多い病気です。
しかしながら、MRIの画像診断により、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病との鑑別も可能となっています。

治る認知症とも呼ばれる特発性正常圧水頭症(iNPH)。
正しく診断・治療することで症状の改善が期待できます。

特発性正常圧水頭症の詳細・治療法について


顔面けいれん

顔面けいれんとは

顔面けいれん片方の目や頬、口など顔の一部が本人の意思とは関係なくピクピクとけいれんする病気です。まれに両方に認められる方もおられますが、一般的に片方の目の周囲の筋肉がピクピクと収縮することから始まり、次第に頬や口元へと広がっていくことが多いとされています。

疲労、緊張、ストレスなどで誘発されやすく、症状が進行するとけいれんが顎の下の筋肉まで及んだり、徐々に時間が長くなり、1日中続いたり、あるいは寝ている間にもけいれんが起こったりすることもあります。

多くの場合、命に関わることはありませんが、重症化すると顔面神経麻痺などをきたすことがあります。

顔面けいれんの治療法

疲労やストレスなど、症状を悪化させる要因はできるだけ取り除きます。
症状が経度の場合は経過観察ですが、代表的な治療法として、筋肉の働きを弱める注射をするボトックス療法や根治的治療として、神経を圧迫している血管を離して固定する手術などがあります。

三叉神経痛

三叉神経痛とは

三叉神経痛三叉神経は顔の感覚(痛覚、触覚、冷熱感)を脳に伝える神経で、これに異常が起こることで顔に強い痛みを生じる病気です。

血管による三叉神経の圧迫が原因と考えられている特発性三叉神経痛と、脳腫瘍、帯状疱疹など、原因となる他の病気がある二次性三叉神経痛の2種類がありますが、一般的に三叉神経痛と呼ばれる場合の多くは前者を指します。

痛みは長くても数秒の激しく短いものですが、一瞬の痛みが何度も起こることで長時間続く痛みと感じることもあります。

三叉神経痛の治療法

薬物療法、神経ブロック治療、放射線治療、手術などがあり、一般的には薬物療法から開始しますが、改善が困難な場合、その他の治療や手術を検討する場合もあります。

薬物療法は神経痛に効果のある薬剤を使用します。神経ブロック治療は三叉神経に麻酔薬を注射し、痛みの緩和を図ります。放射線治療では、ガンマナイフで痛みのある箇所の三叉神経に放射線を照射し、痛みを取り除きます。血管が神経を圧迫して痛みを生じている場合には、手術でそれを取り除きます。

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