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ジストニアとはどのような病気?
ジストニアとは、筋肉の緊張の異常によって様々な不随意(自分で制御できない)運動や肢位、姿勢の異常が生じる状態をいいます。
症状は筋肉の異常収縮によるものですが、筋緊張を調節している大脳基底核という部分の働きの異常や上部脳幹、小脳など中枢神経が集まる部位において何らかの障害が起こるためと考えられています。
ジストニアの種類と症状
ジストニアは、全身の筋肉が異常に動いてしまう全身性ジストニアと、局所のみの筋緊張の異常による局所性ジストニアに分けられます。
原因が特定できないものを「本態性ジストニア」、脳卒中や脳炎などの後遺症として起こるものを「二次性ジストニア」と呼びます。
また、本態性ジストニアの中には遺伝子の異常による「遺伝性ジストニア」があります。
安静時にも出現するジストニア運動は通常徐々に症状が治まり、眠っているときには症状が軽くなります。
歩行、書字、会話、楽器演奏といった日常活動などにより症状が強くなることもあります。一方、ジストニア姿勢異常は睡眠時にも持続します。
遅発性ジストニア
精神疾患に用いる向精神薬の影響で出現するジストニア症状を遅発性ジストニアと呼びます。
症状が一定で動作特異的であること、発症の初期には朝は調子がよく、午後から夜にかけて悪化すること、ストレスや疲労により症状が悪化する場合があること、体のある特定の部位を触れるなど刺激を与えることで症状が軽快したりすることなどが特徴です。
全身性ジストニア
日本では瀬川病と呼ばれるDYT5ジストニアと捻転ジストニアと呼ばれるDYT1ジストニアが主で、これらは主として小児期に症状が出現します。
局所性ジストニア
局所性ジストニアでは、目のまわりの筋肉が異常収縮により目が開けられなくなる「眼瞼けいれん」や、首の筋肉の異常によって首が曲がってしまう「頚部ジストニア(痙性斜頸)」などがあります。
書字や楽器演奏などきまった動作時だけに症状が出るものを、動作特異性ジストニアと呼び、「書痙(しょけい)」の多くがこれに相当します。
これらはピアニストなど特定の職種に生じる傾向があり「職業性ジストニア」とも言われています。
ジストニアの病因
大脳基底核、視床、小脳、大脳皮質など、脳のいくつかの領域の活動が過剰になるために起こると考えられています。
原因が特定できない場合(本態性ジストニア)、遺伝子の突然変異によって起こる場合(遺伝性ジストニア)と、病気や薬剤によって起こる場合(二次性ジストニア)があります。
ジストニアの診断
本態性ジストニアではCTやMRIでは脳の形に異常は見られません。
筋電図で関節を曲げる筋肉と伸ばす筋肉が同時に動いてしまう所見(共収縮、相反性抑制の障害)が診断の助けになります。
実際の筋緊張の評価(筋電図検査、超音波検査等)を補助的に行い、症状と合わせて診断します。遺伝性ジストニアが疑われる場合には遺伝子検査をする場合もあります。
ジストニアの治療法
薬物療法(アーテン・ランドセン等)・ボツリヌス毒素注射
当センターでは、不随意運動外来(第3火曜日の10時~14時 担当:宮本亮介医師)にて、薬物療法・ボツリヌス毒素注射を実施しています。
DBS治療(脳深部刺激療法)
DBSはジストニアの筋緊張を和らげる効果があり、日常生活動作(ADL)が改善します。
DBSによるジストニアの改善率は、ジストニアの病態によって違いがあります。
一般に全身性ジストニア(遺伝性、非遺伝性)、遅発性ジストニアの有効性は高く、局所性ジストニアでは痙性斜頸や動作特異性ジストニア(書痙など)も効果は高いとされますが個人差が大きい傾向があります。一方、別の病気が引き金となって生じるジストニア「二次性ジストニア(遅発性ジストニアを除く)」に対するDBSの有効性は低いと言われています。
熱凝固療法(定位的脳手術)
ジストニアの外科的治療には、熱凝固療法もあります。
刺激装置の植え込みが適さない場合やジストニアの改善率が高いと考えられる場合には熱凝固療法をお勧めする場合もあります。