「正常圧水頭症(iNPH)」から「ハキム病」への名称変更

倉敷ニューロモデュレーションセンターでは、脳深部刺激療法や脊髄刺激療法だけでなく、「正常圧水頭症(iNPH)」に対するシャント手術も行っています。
この「正常圧水頭症(せいじょうあつすいとうしょう)」は歩行障害、物忘れ、尿失禁の三つの症状が現れやすいのですが、有病率が65歳以上の1.5~3%といわれており決して稀な病気ではありません。しかし「特発性(原因がはっきりしない)」・「正常圧(頭の中の圧が高くない)」・「水頭症(子供の疾患を想像させる)」という名称は、やや複雑で難解なため専門家以外には浸透しにくいという問題が指摘されていました。

そこで、国際水頭症学会の名称変更に関する専門チームが議論を重ねた結果、新しい病名として「ハキム病(Hakim’s disease)」に変更することが提案されています。「ハキム」という名前は、この病気の特徴を世界で初めて提唱したサロモン・ハキム博士(Salomon Hakim, 1922–2011)にちなんでいます。ハキム博士はコロンビア出身の脳神経外科医であり、水頭症手術に用いるバルブの発明者としても知られています。

特発性正常圧水頭症(iNPH)はパーキンソン病と同等かやや多い有病率の疾患と言われており、高齢化社会において見過ごしてはいけない重要な疾患です。「ハキム病」という新しい名前にすることで、アルツハイマー病やパーキンソン病(どちらも発見者の名前がついた病気ですがとても浸透しています)と同等に多くの方にこの病気を知ってもらい、早期の発見・治療につなげたいという思いが込められています。

もし「歩くときにふらつく」「物忘れが増えた」「お手洗いが近くなった」といった症状が気になる方は、この「ハキム病」の可能性があるかもしれません。
気になる症状がある場合は、お近くの脳神経外科や脳神経内科などにご相談ください。

出典:
・名古屋市立大学 プレスリリース「“特発性正常圧水頭症(iNPH)”の病名を“ハキム病”へ 国際水頭症学会で新名称を提案」(2024年1月)
https://www.nagoya-cu.ac.jp/press-news/202401221400/

・岐阜大学医学部 神経内科コラム「高齢者の認知症を見逃さない 〜iNPHは『ハキム病』と呼ばれるようになります〜」(2024年8月)
https://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/column/pd/20240823.htm

医療秘書
M



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