DBS治療[脳深部刺激療法]とは

DBSは脳の深部を電気刺激することで、お薬では効果が得られないパーキンソン病、振戦、ジストニアなどの不随意運動症の症状を改善することができます。

手術では正確な手技が要求されており、定位脳手術装置という特殊な装置を用い、目標とする脳深部の神経核に正確に治療用のリード(刺激電極)を留置し、体内に埋没型の刺激発生装置を植込みます。手術は全身麻酔で3~4時間程で終了します。DBSで用いるリードや刺激装置は体内に完全に植込まれるため、体の外に露出することはありません。

手術後は患者さん一人一人の症状に合わせて電気刺激の強さや、刺激位置を調整することで症状を改善することができます。治療効果はDBSを開始して比較的早期からあらわれますが、外来で定期的に刺激の調整が必要です。症状が安定するのは患者さんの病気によりますが、3か月~1年かかります。患者さんは患者用プログラマという体外式のリモコンを用いて刺激のオンオフを行ったり、症状に合わせて刺激強度を上げ下げして調節することが可能です。

DBSは病気そのものを治すことはできません。DBSにより、病気による症状が軽減し、日常生活の動作が改善することで、患者さんが楽に生活を送ることが可能となります。

治療の特徴
  • DBSは脳の深部を可逆的に刺激を行うことでパーキンソン病、本態性振戦、ジストニアなどの症状を改善する治療です。
  • DBSは症状を改善するものであり、病気を完治する治療ではありません。
  • 手術は3~4時間で終了します。
  • 治療効果は手術後すぐにあらわれません。入院中または外来で刺激の調整を行うことで徐々に症状が改善します。
リード(刺激電極)

脳内に留置するリードはシリコン製で直径は1.4mm程度と細くて柔らかく、先端部に刺激を行うための電極が4つまたは8つ付いています。最も治療効果が高く、刺激による副作用がない電極を組み合わせて治療に使用します。

刺激装置(IPG)

刺激装置とはリードを介して脳の深部を刺激する電池のことです。刺激装置は30~40g程度であり、前胸部や側胸部の皮下に埋没して設置します。近年、刺激装置の多くがMRI対応型になっています。刺激装置には充電式と非充電式があり、大きさや使用可能年数が異なります。

患者用プログラマ

患者さん自身または、家族や介護の方が、刺激装置のオンオフや、刺激強度の調整を行う場合に使用します(機器操作に不慣れであったり、不安に思われたりする場合には、医療サイドで調整しますので、患者さんが調整を行う必要はありません)。

DBS治療が適応となる疾患


パーキンソン病

以下の条件を満たす方がDBSの適応となります。

  • パーキンソン病であること
  • 75歳以下(70歳以下が望ましい)※1 解説をご参照ください
  • 薬物調整が困難な薬効時間の短縮(ウエアリングオフ現象)や不随意運動(ジスキネジア)があり、症状の日内変動が激しい ※2 解説をご参照ください
  • パーキンソン病薬に反応がある ※3 解説をご参照ください
  • 薬物治療に抵抗性の振戦がある
  • 重度の脳血管障害など脳に病気がない
  • 出血しやすい薬を内服していない、または出血しやすい病気になっていない
  • 重度の精神症状や認知機能低下がない
解説(クリックで展開)

パーキンソン病は脳内のドパミン神経が減少することで、振戦、筋強剛、無動・寡動、姿勢保持障害といった運動症状が出現します。また、それ以外にも睡眠障害、便秘・頻尿・発汗障害・立ちくらみなどの自律神経障害、腰痛・肩痛などの痛み、抑うつなどの気分障害や意欲低下、衝動制御障害などの行動異常、幻視を中心とする幻覚・妄想などの精神症状、認知機能低下などの非運動症状がみられ、症状は全身に及び、患者さんによって症状の出方は様々です。

レボドパを中心としたパーキンソン病治療薬を内服することで運動症状は改善しますが、長期間にわたり内服を続けると、パーキンソン病治療薬の効果が短くなったり(ウエアリングオフ現象)、内服によって不随意運動(ジスキネジア)が出現したりします。ウエアリングオフ現象が生じるようになると、次の内服までに薬の効果が持続しなくなるため、患者さんは薬が効いて体を動かせる状態(オン時)と薬が切れて動作が大変鈍くなったり、歩きにくくなったり、体をとてもしんどく感じる状態(オフ時)が1日の中で変動します。(図)さらに薬のオン時や薬の切れかける時間帯にジスキネジアが出現するようになります。

これらウエアリングオフ現象による症状の日内変動や、ジスキネジアに対して、ドパミン製剤やドパミンアゴニストを増量したり、細かく分割し内服しても症状のコントロールが困難な場合、DBSの適応となります。

※1 パーキンソン病の方のDBSを受ける年齢制限について
通常、年齢が若い患者さんほどDBSの手術効果は高いと言われています。しかし、当センターの経験では、DBSの適応に関しては、年齢の要素よりも、パーキンソン病症状の進行速度や、術前の生活の自立度(生活年齢)や認知機能の状態の方がDBS手術後の効果に影響があると考えており、年齢制限は設けておりません。手術前の検査によって安全性、有効性を判定し、手術適応を判断させていただいています。

※2 パーキンソン病の方がDBSを受けることになる主な症状について
現在、DBSの最も多い適応になっているのが、進行期パーキンソン病の薬物調整が困難なウエアリングオフ現象、ジスキネジアです。薬が効いていない時間帯は大変しんどく、歩けない、薬が効きだすと動けるようになるが、体がくねくねとしたジスキネジアが出現するため、じっとできない、という状態を1日に何度も繰り返して困っている患者さんがDBSの良い適応となります。DBSにより、パーキンソン病症状の日内変動に対し、オフ時間帯の短縮と、オフ症状の改善が期待できます(「DBS治療の効果」参照ください)。

※3 パーキンソン病薬(特にレボドパ製剤)を内服すると症状改善の反応があることがDBSの適応に大変重要です
DBSの適応を考える上で非常に重要なのが、パーキンソン病薬(特にレボドパ製剤)への反応があることです。薬の効果がなくなったから、外科手術を受けるのではないのかと思われる方もおられるかもしれません。しかし、DBSで改善するのは、オフの状態やジスキネジアを軽減することであり、パーキンソン病薬を内服しても効果が出ない症状にはDBSの効果も乏しいという現実があります。
DBSを受けるとどこまで症状の改善が見込めるかについて、治療効果の上限は基本的にはパーキンソン病薬の効果の上限とほぼ同等です。そのため、DBS後には、オフの状態が改善し(オフの底上げ効果)、パーキンソン病薬の効果がオンオフなく1日持続した効果が続く状態になると考えてもらうと分かりやすいかもしれません。DBSのオフの底上げ効果はどの患者さんにも認められますが、パーキンソン病薬の効果が乏しくなった方には、DBSの効果も乏しくなるため(「DBS治療の効果」参照ください)、どの症状が改善するか、または改善が乏しいかについて、術前に詳細な検査を行い判定いたします。

振戦(本態性振戦)

以下の条件を満たす方がDBSの適応となります。

  • 手のふるえがひどく、コップが持てない、字を書こうとしてもうまく書けないなど日常生活や仕事に支障が出ている
  • 薬物治療で症状の改善がみられない
  • 薬物治療では、副作用(眠気、脈拍低下など)が出現するため治療が行えない
ジストニア

以下の条件を満たす方がDBSの適応となります。

  • 異常な筋収縮が手足、または頭頚部、体幹部に出現し、日常生活や仕事に支障が出ている
  • 薬物治療で症状の改善がみられない、または副作用のために治療が行えない方
  • 全身性のジストニア(遺伝性、非遺伝性)
  • 頭頚部のジストニア
  • 遅発性ジストニア(精神病薬などの長期内服後に生じるジストニア)
  • 痙性斜頸
  • 書痙
  • ある特定の動作を行うと出現するジストニア(例:楽器演奏時や、パソコンのタイピング時など)

DBS治療の流れ

1回目入院:7日間術前検査入院
1回目入院:7日間
評価

症状評価、運動機能、日常生活動作、構音・嚥下機能、認知機能、神経心理学的評価
頭部MRI・CT・レントゲン、脳血流検査(脳血流スペクト)、睡眠検査など

全身麻酔のための術前検査

血液検査、心電図、胸部レントゲン、肺機能検査など

退院

2回目入院:3~4週間手術・リハビリ入院
2回目入院:3~4週間
手術
  • 脳深部刺激電極留置(全身麻酔または局所麻酔)
  • 刺激装置埋め込み(全身麻酔)
刺激の調整・抜糸・リハビリテーション
  • 刺激調整(刺激療法開始)
  • 薬物調整
  • 抜糸(術後7日前後)
  • リハビリテーション(歩行訓練、日常生活動作の訓練、構音・嚥下訓練、高次脳機能訓練など)

退院

3回目入院:2週間術後3ヶ月入院
(定期検査・リハビリ・刺激調整)
4回目入院:1週間術後1年入院
(定期検査・リハビリ・刺激調整)

DBS治療の効果

パーキンソン病本態性振戦ジストニア
パーキンソン病に対するDBSの効果
  • 薬がオフ時の全ての運動症状(振戦、筋強剛、無動・寡動など)や日常生活動作(ADL)が改善します。
  • 薬のオフ時間の短縮、オフ状態の改善が得られるため、運動症状の日内変動が軽減します。
  • 薬物減量が可能であり、結果として薬剤誘発性のジスキネジアが改善します。
    つまり、1日の中での症状のアップダウンが少なくなり、薬が効いた良い状態(オン状態)で1日を安定して過ごせるようになれます。(右図A
  • 薬がオフ時の症状の中でも、振戦、筋強剛、無動・寡動の改善効果は高く、オフ時のすくみ足に対しても有効です。(右図B
  • DBSの効果は長期間持続します(10年以上)
パーキンソン病に対するDBSの限界
  • 適切なパーキンソン病薬の内服時以上の運動症状の改善効果は得られにくいです。※4をご参照ください。
  • レボドパ耐性症状といわれる体幹部の症状(姿勢異常、姿勢反射障害、構音障害、嚥下機能低下)に対しては効果が乏しいです。(右図B
  • パーキンソン病の進行を止めることはできません。

※4 パーキンソン病薬(ドパミン製剤)への反応性とDBSの効果(右図C
DBSの効果の上限は、パーキンソン病薬の症状改善とほぼ同等になります。このことから、薬(特にドパミン製剤)に反応があり、一時的にも日常生活が自立できている患者さん(図CのAさんのケース)では、DBS後に日常生活が自立した状態で1日を過ごせるようになります。一方で、薬(ドパミン製剤)に反応がなく、薬を内服しても日常生活レベルが要介助の患者さん(図CのBさんのケース)では、DBS後オフ状態は改善しているのですが、自立可能な状態までの改善は得られません。
Aさんのような、薬が効くと日常生活が自立しているものの症状のアップダウンが激しく、薬物調整だけではこの症状のアップダウンをコントロールできない患者さんが、DBSを受けられると劇的な改善が得られる場合が多いです。

図A(クリックで拡大)
図B(クリックで拡大)
図C(クリックで拡大)
本態性振戦に対するDBSの効果
  • DBSはふるえを抑制する効果があり(70~80%以上)、書字やコップを持つ動作、着替えなどの日常生活動作(ADL)が改善します。
本態性振戦に対するDBSの限界
  • 手術の効果は手や指のふるえの有効性が高く、頭頚部や体幹、上腕のふるえは効果はやや弱いです。
  • DBSの効果は長期間持続しますが、患者さんの中には徐々にDBSの効果が減弱する方がおられ、刺激調整が必要になる場合があります。(DBSへの慣れ現象)
本態性振戦に対する熱凝固療法
  • 本態性振戦の外科的治療には、熱凝固療法もあり、ふるえの改善率が高く、根治的であると考えられる場合には熱凝固療法をお勧めする場合もあります。
ジストニアに対するDBSの効果
  • DBSはジストニアの筋緊張を和らげる効果があり、日常生活動作(ADL)が改善します。
  • DBSによるジストニアの改善率は、ジストニアの病態によって違いがあります。一般に全身性ジストニア(遺伝性、非遺伝性)、遅発性ジストニアの有効性は高く、局所性ジストニアでは痙性斜頸や動作特異性ジストニア(書痙など)も効果は高いとされます。一方、別の病気が引き金となって生じるジストニア「二次性ジストニア(遅発性ジストニアを除く)」に対するDBSの有効性は低いと言われています。
ジストニアに対する熱凝固療法
  • ジストニアの外科的治療には、熱凝固療法もあります。ジストニアの改善率が高く、根治的であると考えられる場合には熱凝固療法をお勧めする場合もあります。

DBS手術実績

実績数を左右にスクロールしてご覧下さい
 
DBS(新規)
DBS(電池交換)
DBS(トライアル)
DBS(抜去)
熱凝固療法
DBS(新規)+ 熱凝固療法
DBS手術 年間件数
2017年度 2018年度 2019年度※5
46 40 17
43 31 11
0 1 0
6 5 2
7 4 8
1 1 0
103 82 38
※5 2019年度につきましては4~8月現在の実績数です
PAGE TOP