本態性振戦とはどのような病気?

原因の不明な、あるいは特定の原因によらない(本態性)、規則的な不随意運動(振戦)を生じる疾患のことで、いわゆる「ふるえ」です。
どの年齢層でも起こりますが、高齢の患者さんに多く見られ40歳以上の5%程度で存在し最もよく見られる不随意運動症です。

ふるえ以外の症状はありませんが、重度になるとコップが持てない、字が書きづらいといった日常生活に支障を来すこともあります。
本態性振戦によるふるえは精神的な緊張で強まることが知られており、十分な睡眠をとり、リラックスした状態ではふるえが軽くなる場合があります。

本態性振戦の主な症状

随意運動中、または重力に対抗して姿勢を維持しているときに起こる周期的なふるえです。

このふるえには動作時振戦(コップを口まで持ち上げるなどの随意運動時に生じるふるえ)と、姿勢振戦(手や腕を伸ばすなどをする際に重力に対して姿勢を随意的に保持するときに生じるふるえ)があります。

本態性振戦の病因

小脳、視床、脳幹などの脳の特定エリア間での伝達異常によって生じます。

本態性振戦の原因は不明ですが、家族や親類に複数の患者がいる場合も多く、遺伝が関係すると考えられるケースでは家族性振戦と呼ばれることもあります。

本態性振戦の診断

本態性振戦では、ほかの病気によるものではないことを確認する検査が行われます。

甲状腺機能亢進症によってふるえが生じている場合があるので、甲状腺機能異常がないか血液検査で甲状腺ホルモンを測定し、頭部MRI検査で脳に損傷や異常がないか、また、てんかんの可能性が否定できない場合は脳波検査によって診断します。

さらに似た症状が現れるパーキンソン病と区別するため、各種の核医学検査を実施します。検査で異常がなく、ほかの病気に該当しなければ本態性振戦と診断されます。

本態性振戦の重症度分類

ふるえ以外に症状がなく、軽度であれば経過観察のみで通常問題ありませんが、重度になれば日常生活に支障を来す場合もあります。

本態性振戦の症状が現れたときの対処法

本態性振戦では精神的緊張によりふるえが強くなることが分かっていますので、普段からなるべく精神的安静を保つことが大切です。
十分な睡眠をとる、ストレスを最小限に抑える、カフェインなどの刺激物の摂取を控えることでも症状を緩和することができます。

軽度であれば、物をつかむ際には落とさないように体の近くで持つよう心掛けたり、作業療法士の指導を受けて補助器具を使用することで抑えることができる場合があります。

また、ふるえは人に指摘されるとますますひどくなるものです。必要以上に意識せず、周囲の人の理解を得ることも大切です。症状を隠そうとしないことが、かえってふるえを和らげることもあります。

本態性振戦の治療法

薬物治療

βブロッカーと言う降圧薬の一つが効果を示すことが多いです。一部の抗てんかん薬も効果を示すことがあります。

DBS治療(脳深部刺激療法)

DBS治療(脳深部刺激療法)で脳の深部を電気刺激することで、お薬では効果が得られない本態性振戦のふるえを抑制する効果があります。

DBS治療(脳深部刺激療法)

熱凝固療法(定位的脳手術)

脳深部に2~3mmの凝固巣を作り、振戦を抑制する治療法です。

熱凝固療法(定位的脳手術)

MRガイド下集束超音波治療

経頭蓋的に超音波を脳深部に当て凝固巣を作成します。2019年より保険適用となった新しい治療法です。当院では未導入です。


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