パーキンソン病と嗅覚

においは美味しさと深くつながっています。風邪などで鼻が詰まっている時に食事をしても、本来の美味しさを感じず味気なかったという経験がある方が多いでしょう。好きな食べ物や美味しいイメージのある食べ物のにおいをかぐと、胃腸のはたらきが高まり食欲が出てきます。逆に、嫌な臭いをかぐと胃腸のはたらきが落ち、食欲もなくなってしまいます。においから食べ物をイメージするのがうまい人は食欲旺盛で肥満になりやすいとも言われており、嗅覚は食欲増進と深い関係があります。

実は、パーキンソン病患者さんに嗅覚障害を自覚する方や、自覚症状はないものの検査をしてみると嗅覚が低下している患者さんが多いということがわかってきています。

空気中のにおい物質が鼻と脳の間にある嗅粘膜に付着すると、においの情報は嗅上皮で信号化され、嗅球が信号を処理して脳の各部位へ送ります。その刺激信号が嗅神経を通じて脳の嗅覚中枢に伝達され、においとして感じます。嗅覚障害は、この嗅覚が弱くなる、もしくはにおいを全く感じなくなる状態をいいます。
パーキンソン病では、神経細胞内にあるαシヌクレインというタンパク質が異常化して蓄積するのですが、このαシヌクレインの蓄積が最初に起こるのが嗅球や腸で、大脳辺縁系の偏桃体、そして大脳皮質へと溜まっていくと推測されています。嗅球にαシヌクレインが溜まるのでにおいの情報がうまく伝えられず、嗅覚障害が起こるというわけです。
さらに嗅球から脳へ到達したαシヌクレインが溜まり、神経伝達物質であるドパミンの生成を邪魔するため、脳からの情報の伝達がうまくいかず、動作や運動に障害が生じるというパーキンソン病の症状を発症することになります。また、嗅覚異常はパーキンソン病を発症するずっと前から起きている可能性が高いそうなので、においを感じない、いつもと違うように感じるなどの症状がある方は、一度受診して検査をしてみるといいかもしれません。

食欲の出ない時はにおいや嗅覚との関係についても意識しながら、食事面からニューロモデュレーションセンターのサポートが出来るよう、管理栄養士も頑張っていきます。

管理栄養士
A子



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