脊髄刺激療法(Spinal Cord Stimulation:SCS)は、脊髄を電気的に刺激することで痛みの緩和を図る治療法です。主な適応疾患は、神経障害性疼痛(神経由来の痛み)や、末梢血管の血流障害によって生じる疼痛などが挙げられます。
従来のSCSでは、一定の周波数で刺激を与え、パレステジア(刺激感)を誘発する方式が主流でした。しかし近年、各メーカーから多様な刺激パターンが登場しており、その多くがパレステジアを伴わない「パレステジアフリー刺激」となっています。
パレステジアがある場合、就寝時や起床時などに刺激強度の調整が必要となるほか、不快感を訴える患者もおり、SCSの効果を十分に享受できないケースがありました。一方、パレステジアフリー刺激では「いつの間にか痛みが軽減されていた」と感じる患者も多く、機器操作が難しい方やパレステジアに不快感を覚える方にも有効とされています。
今回は、新たなパレステジアフリー刺激である「FAST刺激」と「Contour刺激」(図1)をご紹介します。
① FAST刺激
FAST(Fast Acting Sub-perception Therapy)刺激は、脊髄後索をターゲットとし、2か所に逆位相の電気刺激を与えることで除痛効果を得る方式です。その名の通り、刺激開始から数分で痛みの軽減が期待できます。
② Contour刺激
Contour(コントゥア)刺激は、脊髄後角をターゲットとしたパレステジアフリー刺激です。刺激設定時には、電極の種類や刺激部位の登録、キャリブレーションなど、特殊な設定が必要となります。
当院では、SCSを希望される患者様に対してSCSトライアル手術(図2)を実施し、FAST刺激およびContour刺激の効果を検証しています。SCSの本植込み後は、患者様がリモコン操作によりFAST刺激とContour刺激を切り替えて使用することが可能です。
今後は、他社が提供するパレステジアフリー刺激についても順次ご紹介する予定です。ご興味のある方は、ぜひ当センターまでお問い合わせください。
引用・参考文献
1) 一般社団法人日本定位・機能神経外科学会.脊髄刺激療法について.(参照2025.9.28) https://jssfn.org/patient/disease/intractable-pain.html
2) 一般社団法人日本定位・機能神経外科学会ガイドライン作成委員会.定位・機能神経外科学会ガイドライン第4版 2024;71-104
3)林 文昭他 日本ペインクリニック学会誌Vol.32 No.1 2025;15-18
4)Clark S Metzger et all, Expert Rev Med Devices. 2021;299-306.
5) Paz Solis et al, J. Clin. Med. 2020;1-15
・ニューロモデュレーションサポートプロバイダー
・パーキンソン病療養指導士
・3学会合同呼吸療法認定士
・日本救急医学会認定ICLSインストラクター
・日本定位・機能神経外科学会
・日本ニューロモデュレーション学会 など