パーキンソン病の嚥下障害

今回はパーキンソン病の嚥下障害(えんげしょうがい:飲み込みの障害)についてのお話です。パーキンソン病の嚥下障害は、パーキンソン病の方の約半数に見られるといわれています。当院に入院される方の中にも「食事中に咽せることが多くなった」「飲み込んだ後にのどに引っかかる感じがする」など話される方が多いです。また、パーキンソン病の嚥下障害では本人が自覚しにくい不顕性誤嚥(咽せの無い誤嚥)を認める事もあります。

当院では嚥下障害を疑う方に必要に応じて耳鼻科医が嚥下内視鏡検査を行っています。これは、鼻から内視鏡を挿入し飲み込みの様子を見る事ができる検査なので、不顕性誤嚥を見つけることができます。

パーキンソン病の嚥下障害の所見の特徴としては、
・口の中に食物が残る
・口が渇く
・舌が震える
・飲み込む力が低下する
・のどの感覚が低下する
・のどの筋力が低下する
などがあります。
対処法として、姿勢の調整・水分へのとろみ付け・リハビリテーションなどを行います。今回は、姿勢の調整・水分へのとろみ付けについて説明します。
(口・のどの体操については当院youtube動画https://youtu.be/48-eZUt9aTwをご参照ください)

座位姿勢について紹介します。不安定な姿勢は食べにくさを助長します。上手に補正して食べる環境を整えましょう。
×体幹が不安定→○クッションなどで安定させましょう
×顎があがっている→○食事の際は顎を少し引くように意識しましょう
×足が床についてない→○両足底が床につく高さにしましょう
×机が低(高)すぎる→○机の高さは自然に手をおろして肘がつく高さにしましょう

 

続いてとろみ付けについてです

(とろみのつけ方については当院youtube動画 https://youtu.be/WvwH2PZbICY をご参照ください)


飲み込みの「ごっくん」という反射は通常食物がのどに到達してからわずか0.5秒の内に起こり、飲み込んだ食物はのどに残りません。
しかし、飲み込みの筋力や感覚などが低下していると「飲み込みの反射が間に合わない(嚥下反射惹起遅延)」「飲み込んでものどに残る」など問題が起こります。
この状態でサラサラの水分を飲むと、食道に送られるはずの水分が気道に流れ込み、誤嚥となるわけです。水分にとろみをつけるのは、「遅くなった飲み込みの反射とタイミングを合わせる」「のどに残った水分がのどに流れ込むのを防ぐ」ためです。とろみ剤はドラッグストアで手に入ります。必要なとろみは人によって違うので、少量から調整してみてください。

今回は、パーキンソン病の「嚥下障害の症状」「対処法(姿勢・とろみ付け)」について説明しました。嚥下障害はパーキンソン病に限らず、加齢や脳血管疾患後遺症など様々な要因で起こります。飲み込みが気になる方は今回紹介した方法を試してみてはいかがでしょうか。その上で飲み込みについて気になる方は主治医へご相談してみてください。
※画像はこちらのサイトのものを使用しています:https://estychan.com/howto/
※倉敷平成病院YouTubeチャンネルでは様々な動画を紹介しています:社会医療法人全仁会倉敷平成病院 – YouTube

言語聴覚士
Y・H



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