【機能的定位脳手術機器精度管理の取り組み~臨床工学技士による滅菌前点検~】

パーキンソン病や振戦、ジストニアといった不随意運動に対する外科手術は機能的定位脳手術と呼ばれており、脳深部刺激療法(DBS)や熱凝固療法があります。機能的定位脳手術装置はレクセルフレームやマイクロレコーディング記録装置、定位脳手術支援装置(ナビゲーションシステム)など多くの装置が必要です。今回はレクセルフレームの精度管理について臨床工学技士の取り組みを踏まえて説明します。
レクセルフレームは機能的定位脳手術にて頭部に装着し、針や刺激電極を挿入する手術機器です。手術前のMRIとCT画像をナビゲーションシステムシステムに取り込み、X軸(左右)、Y軸(前後)、Z軸(頭足)の標的座標を算出します。レクセルフレームもX軸、Y軸、Z軸に目盛りがあり、算出した標的座標を合わせますが、表記は0.1mm単位のため、細かく合わせなければなりません。
0.1mmずれただけで何が違うのかと思うかもしれません。下の写真①は正常。写真②はX軸とY軸を標的からそれぞれ0.1mmずらしています。写真②は標的より左と手前にずれています。機能的定位脳手術においてこのずれは治療に大きく影響を与えます。

レクセルフレームは消毒・滅菌を繰り返し使用します。滅菌は圧力等がかかるため、経年劣化は起こります。滅菌前点検は手術精度管理に重要な役割であり、当院は臨床工学技士が行っています。滅菌前点検は手術と同じ手順で専用機器に装着します。点検内容は目視による破損や汚れの確認、部品の脱落や有無、標的座標の位置合わせ、手術針を用いた標的確認です。標的にあわななければ、再度組み直します。それでも合わない際は0.1mm補正します。補正を行った際は牟礼センター長と確認し、次回の手術は補正した標的座標にて行います。
臨床工学技士は機能的定位脳手術に必ず手術立会を行います。レクセルフレームに関して知識を有しており、手術中のトラブルを未然に防いでいます。当院の機能的定位脳手術精度は高いことで有名です。今後もDBSや熱凝固療法を受ける患者さまに安心してもらえるよう努めていきます。

臨床工学技士
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