【ニューロモデュレーション患者に対する遠隔診療~開始から1年実施報告~】

倉敷ニューロモデュレーションセンターでは2023年10月より対象患者に対して遠隔診療を開始しています。1年実施報告をさせていただきます。
遠隔診療対象患者はアボット社が提供する脳深部刺激装置(DBS)か脊髄刺激装置(SCS)を植込みした患者となります。患者は自宅かインターネット回線(Wi-Fi等)がある場所に待機して頂き、患者コントローラを経由して、当院の医師用プログラマと繋ぎます。遠隔診療用アプリケーション内のビデオ通話機能を通して、医師の診察を受けることができます。

必要であれば刺激部位や電流値調整を行うことができます。体内の刺激装置との通信はBluetoothで行われるため、情報通信端末は必要がありません。セキュリティは公開鍵暗号基盤 (Public Key Infrastructure: PKI)という技術が用いており、銀行等のオンライン決済で用いる方法と同じとなります。診察途中に通信障害発生した際はリカバリープログラム作動し、元の設定に自動で復旧します。

パーキンソン病をはじめニューロモデュレーション患者は通院負担が重く、家族や介護者の支援が必要となります。DBSやSCSが実施できる医療機関は限られており、遠方の方は通院するために多くの時間や交通費といった費用負担が発生します。遠隔診療実施は患者や家族にとって有効となります1)。当院は県外患者も多いですが、施設入所者もいらっしゃいます。事前に連絡をとり、Wi-Fi環境や通信状況の確認を行った後に医師診察を行います。

令和7年2月7日-8日に開催した第64回日本定位・機能神経外科学会において当センターでの実績を発表しました。患者満足度も高く、通院負担軽減に効果が期待できると示唆されました。今後も遠隔診療の検証を継続していきます。興味のある患者さまやご家族は当院までご連絡ください。

参考文献
1) アボット.“パーキンソン病等の運動障害に対する脳深部刺激療法の遠隔診療に対応した日本初のアプリ「NeuroSphere™ Virtual Clinic」提供開始のお知らせ”https://www.abbott.co.jp/media-center/press-releases/17-01-2023.html(参照 2025-03-26).

倉敷平成病院 臨床工学科 主任 臨床工学技士(CE)
髙須賀 功喜
平成19年 広島国際大学保健医療学部臨床工学科卒業
学会・資格等
・ニューロモデュレーションサポートプロバイダー
・パーキンソン病療養指導士
・3学会合同呼吸療法認定士
・日本救急医学会認定ICLSインストラクター
・日本定位・機能神経外科学会
・日本ニューロモデュレーション学会 など



関連記事

  1. 【メディカルチームのためのニューロモデュレーション治療完全ガ…

  2. 【公認心理師の倉敷ニューロモデュレーションセンターにおける役…

  3. 第1回ニューロモデュレーションリハビリ情報交換会開催報告

  4. 【中国地方で初 SCS手術でボストンサイエンティフィック社の…

  5. 【パーキンソン病の新たなデバイス補助療法であるホスレボドパ・…

  6. 医療秘書の業務

最近の記事

PAGE TOP