2022.4.25美容コラム
「たるみ」の原因は脂肪のズレ

お肌1枚のケアでは、たるみ対策としては不十分であることを前回お話ししました。
「ちょっとこれぐらい上がってくれたらいいのにな~」なんて動作は、私を含めた世の○○歳以上の女性の方々なら、一度はご経験していますよね。
その時持ち上げているのは、実は皮膚ではなく脂肪なのです。
パーツに分かれている筋肉と脂肪
お顔の脂肪は、いくつかのパーツ(compartment)に分かれています。人間はその進化の過程で、非常に細やかな表情を作り出しコミュニケーションを図ってきました。
表情を作る筋肉は20種類以上あり、その筋肉の浅層に脂肪が存在するのですが、この脂肪が顔全体で大きなひと塊だと表情の機微がうまく伝わらないですよね。そのために、いくつかのパーツに分かれているのではと私は推測しています。
そして、その間での要所要所にあるリガメント※(retaining ligament)で骨などの深い部分と脂肪と皮膚がくい打ちされたようにつなぎ留められ、脂肪が大きくずれないように工夫されています。思うに、顔の脂肪がおっぱいの脂肪のように、余りに自由に垂れ下がってしまうと(これも困るのですが…)顔立ちが大きく変わってしまいその人であることが判別できなくなるため、リガメントがあるのではとこれも勝手に推測しています。
各パーツの脂肪は、増えるものもあれば減るものもあり、リガメントも、しっかりしたものもあれば緩いものもあり、そのためにくぼんだり膨らんだり、下がったり下がらなかったりの不均衡がお顔の各部分で起こります。
※リガメントとは、皮膚や筋肉、脂肪、骨などをつなぐ支柱の役割を持っている繊維状の束になった接着組織のこと。
参考文献;Retaining Ligaments of the Face: Review of Anatomy and Clinical Applications Mohammed Alghoul, MD; and Mark A. Codner, M Aesthetic Surgery Journal 33(6) 769-782
脂肪のズレによる「たるみ」
ゴルゴ線
ゴルゴ線(私たちはmidcheek grooveと言います)。
ここには比較的強く皮膚とつながっている頬骨リガメント(zygomatic ligament)があり、支えている脂肪がズルズルっと下がろうとするところをしっかり支えてくれているのですが、その重みに耐えきれず皮膚も引っ張られることで、結果、溝、つまりゴルゴ線が皮膚に出てきてしまうのです。
フェイスラインの左右にある段差
フェイスラインの顎近く左右にある段差(jowlと言います)。
これも、年齢と共に増えるタイプの脂肪のパーツが下がってきたところを、下顎リガメント(mandibular ligament)ががんばって支えるために、二段腹のような段差がフェイスラインに作られてしまうわけです。
このような、日々の重力に対する抵抗で生じた脂肪のズレが凹凸をつくり、たるみの印象を強く与える原因となっています。(ほかにも、骨の委縮や、皮膚、軟部組織の弛緩なども関わっているのですが、その点についてはまたの機会に触れますね!)
ずれた脂肪はできるだけ元の位置に戻し、これら凹凸を改善することが『たるみ治療』です。そして、大きくずれたものを大きく戻すことはどんどん困難となり、手術等大きな治療が必要となってきてしまいます。
日々のケアではなかなか改善が得られないからこそ、たるみに対して早めに手を打っておく方が効果的、合理的、ひいてはお得なのです。